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ものづくり・製造

試作と量産の違い:まれな不良、ばらつきの源、歩留まりの立ち上がり

2026/6/21 (更新: 2026/10/11)

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目次
背景・問い・要点
背景

製造業では、新しい製品を試作の段階で一度動かすことと、それを工場で大量に作り続けることの間に、大きな隔たりがある。試作は、腕のいい人が選んだ材料で少数をじっくり作る。量産は、多数の作業者・機械・供給業者にわたって同じ品質を保ちながら、桁違いの数を作る。多くのスタートアップや新製品が、「動くものは作れたのに、量産できない」という谷で力尽きる。

研究室で試作品が一度動いたことは、ゴールではなく、量産という難所の入口かもしれない。量産では、同じ作り方を長い期間にわたって繰り返しながら、出来上がる品の大半を良品にし続けなければならない。作った品のうち良品になる割合を歩留まりと呼ぶ。歩留まりが低いままだと、作った品の多くが捨てられ、売上が費用に追いつかない。

問い

試作で一度動いた製品を100万個作ろうとすると、何が新たに難しくなるのか。

要点

「1個作れること」と「100万個作れること」は、別の問題である。 量産では、試作では出会わないまれな不良が生産数とともにほぼ確実に起き、ばらつきの源も桁違いに増える。半導体製造のモデル分析は、欠陥をどこまで落とし切るかよりも、歩留まりがどれだけ早く立ち上がるかが採算を最も左右すると見積もる。一方で、累積の生産量には、習熟によって費用が下がる逆向きの効果もある。

モデル・例示

「1万個に1個」の不良は、つくる数で日常になる

※ この節の数値は説明のための仮定で、測定値ではありません。

ある不具合が「1万個に1個」の割合で起きる工程を考える。試作で100個を作っても、不良の期待値は約0.01個である。試作の段階では、この不具合にまず出会わない。そのため、工程は「完璧だ」と見える。1万個を作れば不良は約1個で、たまに出る程度である。100万個を作れば、同じ不良率でも約100個が不良になり、ラインではこの不具合が繰り返し起きる。

⚠ 概念図:実データではない 「1万個に1個」不良が出る工程で、つくる数を増やすと—— 100個 不良 約0.01個(まず出会わない=“完璧”に見える) 1万個 不良 約1個(たまに出る) 100万個 不良 約100個(もはや例外ではなく、繰り返し出る) 同じ信頼性でも、数が変われば「まれ」は「日常」になる。 棒の長さは不良数に比例している。100個の行は細すぎて見えず、1万個の行もごく細い。
不良率が同じ「1万個に1個」でも、100個ならまず不良に出会わないが、100万個なら不良は約100個にのぼる。試作で見えなかった問題が、量産では繰り返し起きる。

まれな不良は、生産数とともにほぼ確実に起きる

なぜ量産は難しいのか。第一の理由は、まれな問題が、数の力で“ほぼ必ず起きる”ことに変わるからだ。不良の個数の期待値は、不良率に生産数を掛けた数になる。試作の数では期待値が1を大きく下回る不具合も、生産数が不良率の逆数に届くと平均して約1個出るようになり、その数倍を作れば、ほぼ必ず現れる。試作では一度も見なかった問題も、量産ラインではほぼ確実に、繰り返し起きる。つまり規模の拡大は、まれな不運を、日常に変える。

半導体製造を対象にしたモデル分析は、欠陥密度と採算の関係を示している。工程が成熟したあとに落ち着く欠陥密度を、終端欠陥密度と呼ぶ(原典の語は電気的フォールトの密度で、本稿では読みやすさのため欠陥密度と書く)。この値が0.5から0.2個/cm²へ下がるかどうかで、事業の採算が変わる1。同じモデルの歩留まり式(ポアソン型、臨界面積1.4cm²)に入れれば良品率は約50%と約76%で、1.5倍の開きになる。規模がまれな不運を日常に変えるのとは別に、工程がどこまで欠陥を落とし切れたかも採算を大きく動かす、ということだ。ただし原典はこれを収穫逓減側の因子に置き、採算を最も左右するのは欠陥密度の到達水準ではなく、歩留まりがどれだけ早く立ち上がるかだとしている1。同じモデルは、立ち上がりの時期の効き目も見積もっている。それによれば、歩留まりの立ち上がりが半年早まれば累積純利益は2倍以上になり、半年遅れれば3分の2が消える1。

量産では、ばらつきの源が桁違いに増える

量産が難しい理由は、もうひとつある。ばらつきの源が、桁違いに増えることだ。

試作は、腕のいい人が、選りすぐりの材料で、じっくり1個作る。 量産では、何百人もの作業者、何台もの機械、複数の供給業者、昼と夜、夏と冬のすべてにわたって、同じ品質を保ち続けなければならない。機械は摩耗し、材料のロットは変わり、人は替わる。放っておけば、品質は必ずずれていく。

だから一流の工場は、「小さなばらつきがあっても、結果が変わらない」頑丈な工程を設計する(ロバスト設計)。これを体系化した代表的な方法論が田口玄一のパラメータ設計で、性能を左右する制御可能なパラメータを選び、現場では制御できないノイズ(ばらつき要因)に対して鈍感になるよう工程そのものを設計する、という考え方だ2。量産では、少々の揺れを吸収できる作り方が強い。ただし、田口が提案した具体的な評価指標(信号対雑音比)については、統計学者が疑問を呈している。目標値に合わせる場合の指標はばらつきが平均に比例するときにしか目的に合わず、値を大きくする場合と小さくする場合の指標は、データの要約として不十分になりえ、位置の尺度としては極めて非効率になりうるという3。「ばらつきに鈍感な工程を設計する」という発想は、1991年の概説によれば、田口の方法として日米の自動車や家電の設計ですでに成功裏に使われていた2。しかし、そのための具体的な手法選びには今も論争の余地がある。

増産は歩留まりの立ち上がりの後に来て、習熟は累積生産で進む

量産で作り続けられる力は、量を積むこと自体ではない。半導体についての先のモデル分析は、歩留まりが上がる前に生産量だけ引き上げても産出の大半が無駄になるだけで上乗せは無いとし、歩留まり学習を成功させるのは工程開発の初期に問題を速く解く能力だと示唆している1。

規模の拡大は、まれな不良を顕在化させるだけの、一方通行の悪材料でもない。累積の生産量が積み上がるほど、作業者が作業に慣れ、数量に見合う治具や工具を入れられるようになり、単位あたりの労務費は系統的に下がっていく。この「学習曲線」は、ライト(T. P. Wright)が1936年に航空機の生産で報告した4。原典の曲線は、同じ機種を異なる数量で作った過去の2〜3点から経験的に起こしたもので、製造中に大きな変更が入らないことを前提にしている4。大きな設計変更が入る場面では、この追い風は前提を外れる。不良の側にも改善の力が働く。ただしその駆動因は生産量そのものではない。工程開発の段階で技術者が系統的な問題を潰していくと欠陥密度は半年で一桁下がる。そして量産の立ち上げはその歩留まり上昇のあとに来る。先のモデル分析はこの二つを、分析の結果としてではなく、業界の技術ロードマップ(ITRS 2001年版)に基づく前提として置いている1。量産の難しさは本物だが、乗り越える過程そのものが学習であり、乗り越えた先には累積生産量による費用低下という追い風も加わる。


不良率×生産数で不良“個数”が増えること(まれな事象が大数で顕在化する)は初等的な確率。量産におけるばらつき源の増大と、試作と量産の間で新製品が力尽きる谷は、生産工学・製品開発の標準的な知見。

出典4件
  1. C. Weber「Yield Learning and the Sources of Profitability in Semiconductor Manufacturing and Process Development」IEEE TSM 17(4), 2004. https://ieeexplore.ieee.org/document/1353315/ https://web.pdx.edu/~webercm/documents/2004%20Weber%20Yield%20Learning.pdf — 歩留まり学習の速度が採算を最も左右するとした。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  2. R. Unal & E. B. Dean「Taguchi Approach to Design Optimization for Quality and Cost: An Overview」ISPA Annual Conference (NASA), 1991. https://web.archive.org/web/20240227080511/https://ntrs.nasa.gov/api/citations/20040121019/downloads/20040121019.pdf — パラメータ設計をノイズに頑健な設定の選択と定義する概説。 ↩ ↩2

  3. G. E. P. Box「Signal-to-Noise Ratios, Performance Criteria, and Transformations」Technometrics 30(1), 1988. https://doi.org/10.1080/00401706.1988.10488313 — 目標値型の信号対雑音比の限界をLeónら(1987)から引き、大小を狙う型は自ら批判し、変換による代替を示した。 ↩

  4. T. P. Wright「Factors Affecting the Cost of Airplanes」Journal of the Aeronautical Sciences 3(4), 1936. https://pdodds.w3.uvm.edu/research/papers/others/1936/wright1936a.pdf — 累積生産数が倍になるごとに平均労務費が一定割合で下がることを示した学習曲線の起源論文。 ↩ ↩2

この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。