ものづくり・製造
MLCC(積層セラミックコンデンサ)とは?作るのが難しい理由
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目次
スマートフォンや自動車の電子回路には、電気の流れをならす小さな電子部品が大量に載っている。その代表が積層セラミックコンデンサ(MLCC)で、セラミックの薄い層と金属の電極を交互に何百枚も重ね、砂粒ほどの大きさに収める。機器が小さく高機能になるほど、この部品は一つあたりを小さくし、使う数を増やす方向へ進んできた。
ところが、作れる会社は限られ、上位の数社が市場の大半を占めている。設計の図面を手に入れても、同じ品質の部品を同じ量だけ作れるとは限らないからだ。セラミックの粉を細かく均一に作る工程と、薄い層を重ねて焼き固める工程の出来が、そのまま品質と良品の割合を左右する。
本稿は、MLCC の世界首位とされる京都の村田製作所を例に取る。
砂粒より小さな部品を作るのは、何が難しいのか。作れる会社が限られるのはなぜか。
MLCC の性能は、薄いセラミック層を何百枚も、一枚も欠陥なく積めるかで決まる。 そのためには、ナノメートル級の粉を作る材料の技術と、何百層を歪みなく焼き上げる工程の技術を擦り合わせる必要があり、村田自身も「材料と製造プロセスの両方を自社で開発できない企業は小型化・大容量化を先導できない」と述べている1。ただし首位の幅は集計元で違い(自社開示40%、調査会社の推計31.8%)、上位5社が約3分の2を占める寡占の中で、同じ寸法・容量の製品を競合も同じ年に発表し、調査会社によれば量産も始めている。
層を薄くして枚数を増やすと、1枚の不良が全体に響く
※ この節の数値は説明のための仮定で、測定値ではありません。
高さ 0.4 mm の部品の中に、セラミックの層を積むとする。電極を含めた1層を 4 マイクロメートルにすれば 100 層、0.5 マイクロメートルにすれば 800 層が入る。電極は左右の端子へ交互につながるので、重なりが多いほど、同じ大きさのまま多くの電気を貯められる。
次に、1枚を積むたびに、割れ・ズレ・短絡が起きない確率を 99.9% とする。完成品は全部の層が無事でなければ使えないので、100 層の部品が良品になる確率は 0.999 の 100 乗でおよそ 90%、800 層では 0.999 の 800 乗でおよそ 45% になる。1枚あたりの不良を 0.01% まで下げると、100 層で約 99%、800 層で約 92% に戻る。
層の厚さと不良率の組を見比べると、次の二点が読み取れる。
- 同じ外寸のまま層を薄くすれば、積める枚数が増え、容量を稼げる(誘電率の高い材料に替えるなど、別の道もある)。
- 枚数が増えるほど、1枚あたりの不良率のわずかな差が、完成品の良品率を大きく動かす。
MLCC は電気の流れをならす部品
最新のハイエンドのスマートフォンには、名前を知られていない部品が約1000個入っている2。ひとつは砂粒より小さい。なのに、それが足りないとスマホもパソコンも車も動かない。その部品が MLCC(積層セラミックコンデンサ)だ。
コンデンサは、少量の電気を一時的に貯められる部品だ。 電気の流れは、実際には細かく変動している。そのままでは繊細な電子回路が誤動作する。 そこでコンデンサが、多いときに少し吸い込み、足りないときに少し吐き出して、流れをなめらかにする。
スマホには電源や信号の経路が無数にあり、そのあちこちに“ならし役”が要る。だから最新のハイエンド機では1台に1000個も入る。レベル2+の自動運転機能を積んだ高級EVでは1万個以上2、自動運転機能を持たないエンジン車でも約3000個だ2。調査会社は電気自動車(BEV)で1万〜1万8000個とする3。現代の電子機器は、この見えない部品を大量に使って動いている。
村田製作所のシェアは、集計元で40%と31.8%
この部品を作る世界首位の会社は、京都の 村田製作所だ。同社は自社サイトで世界シェアを40%としている4。2021年の同社記事は同じ40%に加えて車載で50%としており2、第三者の Mordor Intelligence は2024年の売上ベースで31.8%と推計する4。別の第三者の値もあり、passive-components.eu の記事は、韓国経済新聞の報道を引く段落で、村田が市場全体で40%超を占めると書く5。どちらの値にも集計基準は書かれておらず、村田の40%には時点も無い。差が集計基準の違いか集計元の違いかは、本稿は決めない。
なぜ「世界一」を競うほど難しいのか
MLCCの性能は、ざっくり言えば「薄いセラミック層を、いかに何枚も、欠陥なく積めるか」で決まる。重なりが多いほど、小さなまま容量を稼げるからだ。
この積層には、次の難しさがある。
- 薄さ:村田は2021年、当時の5G向け新製品について、セラミック1層の厚さを「髪の毛(約80µm)の100分の1」と説明していた。換算するとおよそ0.8マイクロメートルである。最先端はさらに薄く、eeNews Europe は主要メーカーが0.3マイクロメートル未満の層の生産を拡大していると報じる。ただしこのくだりは調査会社のレポートの要約で、メーカーの一次発表ではない。レポート本体は村田・サムスン電機・TDK の3社が0.3マイクロメートル未満の層を「立ち上げ中」と書き、現状の層厚は0.5マイクロメートル未満とする1。
- 枚数:それを数百層(村田が2025年7月に投入した0402インチサイズ=1.0mm×0.5mmの品は800層)、一枚もズレず・欠けず・短絡せずに積む6。800層という内訳は調査会社の記述で、村田の一次発表には無い。
- 小ささ:いちばん小さい製品は 0.16mm × 0.08mm × 0.08mm(2024年に村田が発表した世界最小。それまでの最小品0.25mm×0.125mmに比べ、体積でおよそ75%減)7。文字どおり砂粒だ。
- 量:これが世界全体で年に4兆個規模求められる(調査会社 TrendForce は2023年の需要を約4.19兆個と推計する。出荷実績ではなく需要の推計である)8。しかも一個の不良が機器を壊しうるので、歩留まり(良品率)が命になる。
そして核心は材料にある。MLCCの心臓は、チタン酸バリウムという、粒径をナノメートル級まで微細化したセラミックの超微粒子だ。先端品では50ナノメートルを切る粒子が使われる(村田が2025年に投入した0201インチ=0.6mm×0.3mmの0.22µF品。調査会社の記述)3。 この粉をどれだけ細かく・均一に作れるかが、層の薄さと品質を決める。焼き固める(焼結)ときに割れず・縮みすぎず・電極がショートしないよう、粉のレシピと焼成の工程を“擦り合わせる”ノウハウが要る1。このノウハウは、簡単には真似できない強みである。村田は1944年の創業以来、原料・製造プロセス・生産技術への理解を培ってきたと自ら書いている7。
これが「ものづくり」の正体だ。 すごい設計図があれば作れる、のではない。ナノの粉を作る化学と、何百層を歪みなく焼き上げる工程が、不可分に絡み合っている。これは本稿の見立てではない。村田自身が「材料と製造プロセスの両方を自社で開発できない企業は、MLCC の小型化・大容量化を先導できない」と述べている1。村田も自社サイトの「強み」欄に、「原料から完成品までの一貫生産体制にもとづく収益性」を挙げている4。チタン酸バリウムの調達にも、合弁を通じて足がかりを持っている9。材料と工程の擦り合わせが、小型化・大容量化で先頭に立つための条件になる、というのが本稿の解釈である。調査会社 Mordor の低電圧 MLCC のレポートも、独自のセラミック粉末や一貫した電極めっきの体制が新規参入を阻むと書くが、その体制は村田・サムスン電機・TDK の3社がそれぞれ持つとしている1。
AIサーバーと車で増える需要と、寡占の中の競争
MLCCは、現代エレクトロニクスの“隠れた急所”だ。スマホを薄く、EVを賢くするほど、より小さく・より多くのMLCCが要る。だから2021年のコロナ禍でも、いま進行中のAIサーバー需要でも、MLCC不足が世界のものづくりを揺らしてきた。サムスン電機によれば、AIサーバーは一般的なサーバーの10〜15倍のMLCCを使う10。
ただし、増え方が一本調子だと村田が見ているわけではない。車1台あたりの個数を示した同社の記事は、1台1万個という現在の想定を超えて部品数が増えるかは「慎重に見る必要がある」とし、部品数が増えれば故障率も上がるため、できるだけ少ない個数で高機能な回路を組む方向へ技術開発が向かうだろうと述べている。同社はすでに、使用個数を減らす提案を顧客へ始めている2。本稿が上で引いた調査会社の1万8000個という上限は、この1万個という水準をすでに超えている。数え方(対象車種・搭載範囲)が違う可能性があり、本稿はどちらかを採らない。
CPUやGPUといった大型チップを動かすにも、その足元にMLCCが要る。AIサーバーの電源網では、GPUや広帯域メモリのダイから2mm以内にコンデンサを置く必要があるとされ、小さな寸法の品が有利になる3。
MLCC市場は好不況の波が大きい寡占市場で10、村田・サムスン電機・太陽誘電・TDK・京セラAVXの上位5社が売上の約3分の2を占める(2024年のメーカー別集計)5。中国メーカーのシェアも伸びており、2024年下期の売上シェアは1割程度と報じられている5。世界一は、固定された地位ではなく、薄さと歩留まりの絶え間ない競争の上にある。実際、村田が2025年7月に世界初量産を発表した0402インチ・47µF品は、京セラAVXも同年5月に開発を発表し、調査会社によれば12月に量産を始めている6。
出典10件
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村田製作所「MLCC for 5G smartphone」2021年3月5日. https://article.murata.com/en-global/article/mlcc-for-5g-smartphone-2 — 新開発品の層を髪の毛(約80µm)の1/100とし、焼結の収縮・割れ・短絡を挙げ、材料と工程の両方を自社開発できない企業は小型化を先導できないと書く。0.3µm未満は eeNews が要約した Mordor のレポート。 https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/global-low-voltage-mlcc-market ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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村田製作所「Automotive MLCC」2021年6月23日. https://article.murata.com/en-global/article/automotive-mlcc-1 — スマホ最新機に1000個、エンジン車に約3000個、レベル2+の高級BEVに1万個超とし、MLCCシェア約40%・車載50%を記す。部品数がさらに増えるかは慎重に見るべきで、使用個数を減らす提案を始めたとも述べる。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
Mordor Intelligence「MLCC市場レポート」. https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/multi-layer-ceramic-capacitor-mlcc-market — 村田の2025年の0201品(0.6×0.3mm)に粒径50nm未満のチタン酸バリウム、BEV1台に1万〜1万8000個、AIサーバーではダイから2mm以内の配置が要ると記す。いずれも調査会社の記述。 ↩ ↩2 ↩3
-
Mordor Intelligence「MLCC市場レポート」. https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/multi-layer-ceramic-capacitor-mlcc-market — 2024年のメーカー別売上で上位5社(村田・サムスン電機・太陽誘電・TDK・京セラAVX)がほぼ3分の2。中国勢の2024年下期の売上シェア10%は passive-components.eu の報道の二次紹介で、同記事は村田の全体シェアを40%超と書く。 https://passive-components.eu/chinas-mlcc-makers-reach-10-market-share/ ↩ ↩2 ↩3
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村田製作所 ニュースリリース, 2025年7月10日. https://www.murata.com/en-global/news/capacitor/ceramiccapacitor/2025/0710 — 0402インチ・47µFの世界初量産(自社調べ)。800層は Mordor Intelligence の記述。京セラAVXは同年5月に同品の開発を発表し、Mordor は12月の量産開始を記す。数百層は村田の5G向け記事。 https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/multi-layer-ceramic-capacitor-mlcc-market https://global.kyocera.com/newsroom/social/2025/001045.html https://article.murata.com/en-global/article/mlcc-for-5g-smartphone-2 ↩ ↩2
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村田製作所 プレスリリース, 2024年9月19日. https://www.murata.com/news/capacitor/ceramiccapacitor/2024/0919 — 006003インチ(0.16×0.08×0.08mm)を世界最小とし、従来最小の008004(0.25×0.125mm)比で体積約75%減。スマホ最大1000個も再掲し、1944年の創業以来、原料・製造プロセス・生産技術への理解を培ったと書く。 ↩ ↩2
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TrendForce プレスリリース, 2023年11月14日. https://www.trendforce.com/presscenter/news/20231114-11920.html — 2023年の世界MLCC需要を約4.193兆個、2024年を約4.331兆個と推計する(需要の推計で、出荷実績の統計ではない)。Wikipedia は2012年時点で年10¹²個超と記す。 https://en.wikipedia.org/wiki/Ceramic_capacitor ↩
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passive-components.eu, 2023年3月. https://passive-components.eu/murata-establishes-joint-venture-company-to-produce-mlcc-raw-materials/ — チタン酸バリウム生産の合弁 MF material の設立決議。出資は富士チタン工業55%・村田35%・石原産業10%で村田は少数株主。富士チタン工業は村田の仕入先の一社(村田の開示)。 https://corporate.murata.com/-/media/corporate/about/newsroom/news/irnews/irnews/2023/0317/20230317_e.ashx ↩
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eeNews Europe, 2026年5月19日. https://www.eenewseurope.com/en/ai-drives-mlcc-shortage/ — AIサーバー向けへの生産の振り向けで高容量MLCCが逼迫し、2021年のコロナ禍の供給危機を思わせると報じる。10〜15倍はサムスン電機の言。SK証券は最大8倍と推計する(5 の記事)。 ↩ ↩2
この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。