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第一原理計算の主力DFTは密度で解く——正確だが遅い理由

2026/7/25 (更新: 2026/8/15) シリーズ「原子をどう計算するか」 第1回 / 全3回

目次
※ 概念図 【課題】 全電子の波動関数は、厳密には解けない N個の電子で3N次元——表すのに要する値の数が爆発する 【手段】 解く対象を「電子の密度」に置き換える 密度は3次元の関数——Hohenberg-Kohnが根拠を保証 【結論】 密度で解けても、計算はなお重い 標準的な解き方では原子数の3乗で増え、数百原子・ピコ秒級が目安
※ 概念図(図解)・作図:AI。記事の要点を図式化したもの。

新しい材料が「使えるか」を、作る前にコンピュータで見積もりたい。この願いをかなえる土台が、実験データに合わせ込まず量子力学の原理から解く第一原理計算だ。そのやり方はいくつかあり、Hartree-Fockを出発点とする波動関数ベースの手法や量子モンテカルロもそこに含まれる。そのうち材料の分野で実際に主力となっているのが DFT(密度汎関数理論, Density Functional Theory)で、この記事が辿るのもこの手法である。材料の記事を読んでいると、この名前は当たり前のように出てくる。だが、それが実際に何を計算していて、なぜ「速いモデルが欲しい」という話にいつも行き着くのかは、あまり説明されない。この記事は、そこを最初から辿る。

なぜ、原子はそのままでは計算できないのか

材料の性質——硬いか、電気を通すか、熱で溶けるか——は、突きつめれば原子どうしがどう引き合い、どう反発するかで決まる。そしてその引力・斥力を本当に決めているのは、原子核のまわりを動く電子だ。だから材料を第一原理から予測するとは、煎じつめれば「電子がどう振る舞うか」を解くことにほかならない。

電子の振る舞いを支配するのは、量子力学のシュレーディンガー方程式だ。原理はわかっている。ならば解けばいい——と言いたいところだが、ここに壁がある。

電子が NN 個あると、その状態を表す波動関数3N3N 個の座標をもつ関数になる。電子1個で3次元、10個で30次元、100個なら300次元——座標の数は電子数に比例して増える。壁になるのは、その先だ。関数を計算機で扱うには各座標を刻んで値を並べる必要があり、必要な値の数は「1座標あたりの刻み数」の 3N3N 乗——座標が1本増えるたびに掛け算で効いてくる。仮に1座標を10点で刻む粗い近似でも、電子100個なら 1030010^{300} 個の値が要る(Kohn自身は1変数あたりの変分パラメータを3個とした 33003^{300} で見積もり、講演では 1015010^{150} と記している)。この膨れ上がり方を、Kohnはノーベル賞講演で「指数の壁」と呼んだ1。数個の電子ならともかく、材料をなす何十・何百という電子の波動関数を厳密に解くのは、事実上不可能なのだ。

波動関数の指数の壁——数式と具体例で追う(クリックで展開)

なぜ「3N3N乗」が壁になるのか、実際に数を当てはめて確かめてみよう。

波動関数 Ψ(r1,r2,,rN)\Psi(\mathbf{r}_1, \mathbf{r}_2, \ldots, \mathbf{r}_N) は、NN個の電子それぞれの位置 ri\mathbf{r}_i(3次元空間の座標)をすべて詰め込んだ、たった1つの関数だ。電子がNN個なら、引数は3N3N個の実数——つまりこの関数は3N3N次元空間の上で定義されている。

これをコンピュータで扱うには、関数の値を有限個の点でしか持てない。各座標軸をkk点で刻む(粗い近似でもk=10k=10程度)とすると、3N3N次元空間には格子点が

k3Nk^{3N}

個できる。波動関数の値を保持するには、この格子点の数だけの実数が要る。次元が1つ増えるごとに、必要な値の数は掛け算でkk倍になる——足し算では済まない。

具体的に当てはめてみる(k=10k=10として)。

  • 電子1個(33次元):103=1,00010^{3} = 1{,}000個。ノートパソコンでも余裕。
  • 電子2個(66次元):106=10010^{6} = 100万個。まだ問題ない。
  • 電子10個(3030次元):103010^{30}個。地球上のすべてのストレージを束ねても遠く及ばない桁だ。
  • 電子100個(300300次元):1030010^{300}個。観測可能な宇宙に存在する原子の総数(概算でおよそ108010^{80}個程度と見積もられている)と比べても、比較にならないほど巨大な数だ。

この「次元が1つ増えるたびに、必要な資源が掛け算で膨れ上がる」現象は、高次元のデータを格子で表現しようとする際に分野を問わず現れる一般的な壁だ。Kohnがノーベル賞講演で「指数の壁」と呼んだのは、この一般的な壁が波動関数という具体的な対象に現れた姿である1

DFTの発想——「密度」で解き直す

DFTの核心は、この壁を問題の立て方を変えて回避したことにある。

1964年、HohenbergとKohnは驚くべき定理を証明した。系の基底状態(最も安定な状態)のエネルギーは、3N3N 次元の波動関数をすべて知らなくても、電子の密度——空間の各点に電子が平均どれだけいるか——だけで一意に決まる、というものだ2。電子密度は、電子が何個あろうと、たった3次元の関数である。解くべき対象が 3N3N 次元から3次元に落ちる。指数の壁が、消える。

翌1965年、KohnとShamはこれを実際に計算できる形にした。相互作用する多数の電子を、「ある有効な場の中を動く、互いに独立な電子」の問題に置き換える方程式——Kohn-Sham方程式3。この功績によりWalter Kohnは1998年のノーベル化学賞を受けている(量子化学の計算手法を築いたJohn Popleとの同時受賞)4。今日「第一原理計算」と言えば、多くはこのKohn-Sham DFTを指す。

DFTが3次元に落ちる仕組み——数式で追う(クリックで展開)

Hohenberg-Kohnの定理は、系の基底状態エネルギー EE が、3N3N次元の波動関数 Ψ\Psi ではなく、電子密度 n(r)n(\mathbf{r})——空間の1点 r\mathbf{r}(3次元のベクトル)における電子の平均密度——だけの汎関数として書けることを保証する2

E[n]=T[n]+vext(r)n(r)d3r+Vee[n]E[n] = T[n] + \int v_{\text{ext}}(\mathbf{r})\, n(\mathbf{r})\, d^3r + V_{ee}[n]

右辺の各項は、すべてn(r)n(\mathbf{r})という3次元関数だけの汎関数だ(TTは運動エネルギー、vextv_{\text{ext}}は原子核などが作る外部ポテンシャル、VeeV_{ee}は電子どうしの相互作用エネルギー)。3N3N次元の波動関数を経由しなくても、原理的には3次元の密度だけからエネルギーが決まる——これが「指数の壁が消える」ことの数式上の中身だ。

とはいえ、E[n]E[n]の中の運動エネルギー項 T[n]T[n] を密度だけから正確に書き下す式は分かっていない。そこでKohn-Shamは、本物の相互作用する電子系と同じ密度を再現する、架空の「互いに独立な電子」の系を考えた3。この架空の系では、電子1個ずつが次の1電子方程式(Kohn-Sham方程式)に従う。

[22m2+veff(r)]ϕi(r)=εiϕi(r)\left[-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2 + v_{\text{eff}}(\mathbf{r})\right]\phi_i(\mathbf{r}) = \varepsilon_i\, \phi_i(\mathbf{r}) veff(r)=vext(r)+e2n(r)rrd3r+vxc(r)v_{\text{eff}}(\mathbf{r}) = v_{\text{ext}}(\mathbf{r}) + e^2 \int \frac{n(\mathbf{r}')}{|\mathbf{r}-\mathbf{r}'|}\, d^3r' + v_{xc}(\mathbf{r})

密度n(r)n(\mathbf{r})は、占有されている軌道から次のように組み立てる。

n(r)=i占有軌道ϕi(r)2n(\mathbf{r}) = \sum_{i}^{\text{占有軌道}} |\phi_i(\mathbf{r})|^2

ここでϕi(r)\phi_i(\mathbf{r})(Kohn-Sham軌道)は、それぞれがたった3次元の関数だ。NN個の電子に対して、3次元の方程式をNN個解けばよい——3N3N次元の波動関数を1個扱うのではなく、3次元の関数をNN個扱う。有効ポテンシャルveffv_{\text{eff}}は密度n(r)n(\mathbf{r})から決まり、その密度は軌道ϕi\phi_iから決まるので、両者が釣り合うまで繰り返し解き直す(自己無撞着計算、後述)。vxcv_{xc}(交換相関ポテンシャル)だけは正確な形が分からず近似が必要になる——この点は後の節で扱う。

3N3N次元の関数1個」から「3次元の関数NN個」への置き換えによって、必要な格子点の数は k3Nk^{3N} から、せいぜい N×k3N \times k^{3}(各軌道を3次元格子で表す手間のNN倍)程度まで落ちる。N=100N=100k=10k=10なら、1030010^{300}個から100×103=105100 \times 10^{3} = 10^{5}個へ——桁違いどころではない縮小だ。もちろん実際の計算コストは、軌道どうしを直交させる処理などが効いてO(N3N^3)で増える(次の節で扱う)が、それでもk3Nk^{3N}という指数的な壁からは完全に抜け出している。

DFTが「第一原理(ab initio)」の計算に数えられるのは、目当ての材料の実験値に合わせ込むのではなく、量子力学の原理そのものから出発して計算するからだ。特定の材料の実測データを覚えさせて当てているわけではない——だからこそ、まだ作っていない材料にも使える。ただし交換相関汎関数の側には、パラメータを物理定数だけから定める流儀(PBE5)と、実験値へのフィットを含む流儀の両方があり、後者は「実験に合わせない」とは言い切れない。

それでも、なぜ遅いのか

密度で解けるようになった。では速いのかというと、そうはいかない。DFTが「重い」と言われる理由は、一つの増え方に集約される。

その増え方とは、計算量のスケーリングだ。 Kohn-Sham方程式は一度で解けない。有効な場は電子密度から決まり、その密度は方程式を解いて初めて分かる——つまり「仮の密度で解く→新しい密度が出る→それでまた解く」を、答えが動かなくなるまで繰り返す(自己無撞着計算)。しかも各回で、多数の電子軌道を互いに直交させる処理が要る。この直交化のために、平面波のような系統的な基底を使う標準的な実装では、計算量はおよそ原子数の3乗O(N3)O(N^3))で増える。ガウス関数や原子軌道を使う実装でも、素直に組めば行列の対角化が要るため、やはり3乗で増える6。ただしこの3乗則は、軌道を空間的に局在させて解く線形スケーリング法では破れる——DFTという理論に固有の壁ではなく、標準的な解き方に固有の壁である。もっとも線形スケーリング法は比例係数が大きく、分子動力学で届く時間スケールは短いままだ7。ここでの NN は原子数だが、電子数は原子数にほぼ比例するため、電子数で数えても3乗則は変わらない。原子を2倍にすると手間は約8倍、10倍にすれば約1000倍だ。この「3乗の壁」が、DFTの規模をきつく縛る。

その帰結が、扱える大きさと時間だ。 3乗で効いてくるため、扱える規模は限られる。デスクトップ規模の計算機なら、原子を動かしながら追う計算(第一原理分子動力学)でおよそ100原子・10ピコ秒(1兆分の1秒)程度が目安とされ、スーパーコンピュータを使った記録でも1万原子規模である7。桁の話であって固い上限ではないが、「もっと大きな系を、もっと長く」見たい実務からすると、この制約は重い。

正確さにも、但し書きがある

もう一つ、正直に触れておくべき点がある。DFTは原理から出発する計算だが、完全に厳密ではない

Kohn-Shamの枠組みには、電子どうしの複雑な効果をまとめて押し込めた「交換相関エネルギー」という項がある。この項の正確な形は、誰も知らない。だから実際の計算では近似式を使う——単純なLDAから、より精密なGGA(代表格がPBE5)、さらに高価な混成汎関数へと、精度と計算コストを引き換えにする階段がある。どの近似を選ぶかで答えは変わりうる。DFTは「原理から出発する」が「常に正解を出す」わけではない、という但し書きは、この先の話でも効いてくる。だから計算の確からしさは、計算の内側だけでは決まらない——最後は実験との突き合わせという外部の物差しに照らすことになる。

DFTの近似が具体的にどこでズレるか(クリックで展開)

「交換相関エネルギーが近似である」という一文だけでは、実務でどこが危ういのかが見えてこない。よく知られていて、複数の一次資料で裏づけられている代表的なズレ方を3つ挙げる。

① バンドギャップを系統的に低く見積もる。 交換相関エネルギーは、電子数が整数を跨ぐところで、その汎関数微分である交換相関ポテンシャルが不連続に飛ぶ(導関数の不連続性)。LDAやGGAのような、密度そのもの(や密度の勾配まで)から交換相関を決める近似は、この不連続性を持たない。ただし、話はそれだけではない。厳密なKohn-Shamポテンシャルを使ったとしても、この導関数の不連続性ゆえに半導体・絶縁体のバンドギャップの幅は過小に出ると予想されており、LDAでの過小評価は目安としておよそ40%程度と見積もられている8。ギャップの中心の位置は、厳密なKohn-Shamバンド構造なら正確に予測されるが、ギャップの幅そのものは狭く出る、という限定的なズレだ。

② 分散力(ファンデルワールス力)を取りこぼす。 LDAやGGAのような局所的・準局所的な交換相関汎関数は、原子・分子間にはたらく長距離の分散力(ファンデルワールス力、本来は距離の6乗に反比例して弱まる引力)を正しく再現できない9。層状物質や分子結晶、吸着現象など分散力が効く系では、これを経験的な補正項(DFT-Dなど)で後から足し込む必要があると報告されている10

③ 強く相関した電子系で定性的に間違える。 後期3d遷移金属の一酸化物は、実験ではいずれも大きなギャップを持つ絶縁体だが、標準的なLDA/GGAはこれらを「金属(FeO・CoO)か、小さなギャップの半導体(MnO・NiO)」として予測する11——FeOとCoOでは、絶縁体か金属かという定性的な結論そのものを外している。NiOのように絶縁体として出る場合でも、ギャップの大きさは桁で外れる。LSDAが与えるギャップは約0.1 eVで、実験値の3.0〜4.0 eVに対して40倍近い過小評価だ11。なおNiOのギャップは「電荷移動型」に分類される。ニッケル3d同士のクーロン反発だけで決まっているのではなく、酸素2pからの電荷移動が効くという意味だ。実測した原典は「バンド理論の予測に反してギャップは大きいが、さらに大きいd–dクーロン相互作用だけで決まっているわけではない」と述べ、NiOは単純な意味でのMott-Hubbard絶縁体ではないと結論している12。同じ軌道に2個の電子を置くことの大きなエネルギー損(クーロン反発)をLDA/GGAが十分に表現できていないことが原因とされ、この反発を明示的に加えるLDA+U(DFT+U)法で補正できると報告されている13

3つに共通するのは、いずれも「近似の選び方によって結論が変わりうる」という同じ構造だ。DFTは原理から出発するが、交換相関という1つの未知の項を経由する以上、その近似の質が答えの信頼性を直接左右する。

だから、「速くて正確な代わり」が欲しくなる

まとめよう。DFTは、解けないはずの量子力学の問題を「密度で解く」ことで実用にした、材料計算の土台だ。だが、標準的な実装では原子数の3乗で計算量が増えるため、よく使われる規模は数百原子・ピコ秒級にとどまる(局在性を使う線形スケーリング法はこの壁を破るが、比例係数が大きく、分子動力学で届く時間スケールは短いままだ7)。精度も交換相関の近似に左右される。

ここから、一つの願いが自然に出てくる——DFT並みの正確さを保ったまま、桁違いに速く原子の力を求められないか。その答えとして近年台頭したのが、DFTの計算結果を学習し、それを高速に再現する「機械学習ポテンシャル(MLIP)」だ。ただし「古典力場並みのコスト」という言い方には条件が付く——同レビューが要旨で述べるのは、GPUで加速すれば、加速していない古典力場と同等かそれ以上の時間スケールに届くということであって、同じCPUの上で並ぶという意味ではない14。その条件つきの道具が、何を可能にし、どこでつまずくのか。このシリーズは、そこへ入っていく。

出典14件
  1. W. Kohn, “Nobel Lecture: Electronic structure of matter—wave functions and density functionals,” Reviews of Modern Physics 71, 1253–1266 (1999). 多電子の波動関数が電子数とともに指数的に扱いにくくなる「指数の壁(exponential wall)」と、その代わりに密度を用いる発想を、受賞者自身が解説している。 https://link.aps.org/doi/10.1103/RevModPhys.71.1253 2

  2. P. Hohenberg & W. Kohn, “Inhomogeneous Electron Gas,” Physical Review 136, B864–B871 (1964). 基底状態の性質が電子密度の汎関数として一意に決まることを示した、DFTの土台となる定理。(誌名は分割前の Physical Review。B864 の “B” はページ区分の記号で、現在の Physical Review B ではない。) https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRev.136.B864 2

  3. W. Kohn & L. J. Sham, “Self-Consistent Equations Including Exchange and Correlation Effects,” Physical Review 140, A1133–A1138 (1965). 相互作用する多電子系を、有効ポテンシャル中の独立な1電子問題へ写し替え、自己無撞着に解く方程式を与えた。 https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRev.140.A1133 2

  4. The Nobel Prize in Chemistry 1998. Walter Kohn「密度汎関数理論の発展」とJohn A. Pople「量子化学における計算手法の発展」への同時授与(等分)。DFTが計算材料科学の標準的土台として認知されていることを示す。 https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/1998/summary/

  5. J. P. Perdew, K. Burke & M. Ernzerhof, “Generalized Gradient Approximation Made Simple,” Physical Review Letters 77, 3865–3868 (1996); 正誤表 Phys. Rev. Lett. 78, 1396 (1997). GGA交換相関汎関数PBE。交換相関の厳密な形は未知で近似に頼らざるを得ないこと(DFTが原理から出発しても厳密ではない根拠)を示す。そのパラメータは実験値への当てはめでなく物理的な定数から定めた、とも述べている。 https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevLett.77.3865 2

  6. 標準的なKohn-Sham DFTが、Kohn-Sham軌道に課される直交規格化に由来して系のサイズのおよそ3乗(O(N³))で計算量が増えることは、線形スケーリング法の文献が出発点として明示している。例: S. Mohr ら, “Accurate and efficient linear scaling DFT calculations with universal applicability,” arXiv:1501.05884(Phys. Chem. Chem. Phys. 2015)。同論文の序論は3乗則の由来を基底ごとに書き分けており、系統的な基底(be it plane waves, finite elements or wavelets)では直交規格化に、そうでない基底(in the case of Gaussians or atomic orbitals)では the matrix diagonalization which is required in a straightforward implementation に帰している。O(N³) は広く引かれる漸近的スケーリングで、これを破る線形スケーリング法も存在する。 https://arxiv.org/abs/1501.05884

  7. 従来の第一原理分子動力学(AIMD)が計算コストゆえに扱えるのは、デスクトップ計算機でおよそ100原子・10ピコ秒程度、スーパーコンピュータを使った記録で1万原子規模(同論文が挙げる11K原子のMg系)とされることは、大規模化を目指す研究が前提として述べている。例: W. Jia ら, “Pushing the limit of molecular dynamics with ab initio accuracy to 100 million atoms with machine learning,” arXiv:2005.00223(2020, Gordon Bell賞)。同論文はこの直後で、線形スケーリング法についても the pre-factor in the complexity is still large, and the time scales attainable in MD simulations remain rather short と述べている。「数百原子・ピコ秒級」は桁の目安であり、汎関数・基底・計算機に依存する。 https://arxiv.org/abs/2005.00223 2 3

  8. J. P. Perdew & M. Levy, “Physical Content of the Exact Kohn-Sham Orbital Energies: Band Gaps and Derivative Discontinuities,” Physical Review Letters 51, 1884–1887 (1983)。半導体・絶縁体のバンドギャップがLDAでおよそ40%程度過小評価されることと、厳密な交換相関ポテンシャルが持つ「導関数の不連続性」がLDA/GGAには欠けていることが、この過小評価の理論的な理由になりうると論じる。ギャップの中心位置は厳密なKohn-Shamバンド構造なら正確に予測される、とも述べる。 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.51.1884

  9. J. Klimeš & A. Michaelides, “Perspective: Advances and challenges in treating van der Waals dispersion forces in density functional theory,” The Journal of Chemical Physics 137, 120901 (2012); arXiv:1301.6960(オープンアクセス)。準局所汎関数が長距離で −1/r⁶ の引力を与えないという、本文が前提にしている機構そのものを図2のキャプションが明示する。GrimmeらのD3論文は購読制で、その要旨はこの機構までは述べていない。 https://arxiv.org/abs/1301.6960

  10. S. Grimme, J. Antony, S. Ehrlich & H. Krieg, “A Consistent and Accurate ab Initio Parametrization of Density Functional Dispersion Correction (DFT-D) for the 94 Elements H-Pu,” The Journal of Chemical Physics 132, 154104 (2010)。局所的・準局所的な交換相関汎関数だけでは長距離のファンデルワールス分散力を再現できず、経験的な補正項(DFT-D)を後から加える必要があると報告——標準的なDFTが分散力の効く系を苦手とすることの裏づけ。 https://doi.org/10.1063/1.3382344

  11. O. Bengone, M. Alouani, P. Blöchl & J. Hugel, “Implementation of the Projector Augmented Wave LDA+U Method: Application to the Electronic Structure of NiO,” Physical Review B 62, 16392 (2000); arXiv:cond-mat/0003182. 序論は most transition-metal oxides are wide-gap antiferromagnetic insulators, and the DFT-LSDA predicts them to be either metals (FeO and CoO) or small-gap semiconductors (MnO and NiO) と書く。NiO については LSDA が反強磁性の絶縁体基底状態を与えたうえで、ギャップは about 0.1 eV で実験値 3.0–4.0 eV に対し大きく過小評価されると報告している。 https://arxiv.org/abs/cond-mat/0003182 2

  12. G. A. Sawatzky & J. W. Allen, “Magnitude and Origin of the Band Gap in NiO,” Physical Review Letters 53, 2339 (1984). 光電子分光と逆光電子分光の実測から、In contrast to band-theory predictions the band gap is found to be large but not determined solely by the even larger d-d Coulomb interactions so that NiO is not a Mott-Hubbard insulator in the simplest sense と結論する。 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.53.2339

  13. V. I. Anisimov, J. Zaanen & O. K. Andersen, “Band Theory and Mott Insulators: Hubbard U instead of Stoner I,” Physical Review B 44, 943–954 (1991)。NiOなどの遷移金属酸化物は実験では絶縁体だが、標準的なLDA/GGAでは金属や小さなギャップの半導体として誤って予測されることがあり、同一軌道に電子2個を置く際の大きなクーロン反発(U)を明示的に加えるLDA+U法で補正できると報告。強く相関した電子系でDFTが定性的に間違いうることの裏づけ。 https://doi.org/10.1103/PhysRevB.44.943

  14. 機械学習ポテンシャル(MLIP)が古典力場に近い計算コストで動くことは、実務比較のレビューが報告している。例: “Machine-learning interatomic potentials from a user’s perspective: a comparison of accuracy, speed and data efficiency,” Modelling Simul. Mater. Sci. Eng.(2025, DOI 10.1088/1361-651X/adf56d)。DFTの速度が実務では律速になりうること(=代替が求められる根拠)を示す。ただし「古典力場に近いコスト」は同レビューの序論が概念を紹介する際の言い方で、測定結果ではない。要旨の結論は条件つきで、逐語では GPUs can massively accelerate the MLIPs, bringing them on par with and even ahead of non-accelerated classical interatomic potentials (IPs) with regards to accessible timescales——加速していない古典力場と並ぶ、という限定が付く。同レビューは図2でMLIPと古典力場を同一CPU1コア上で直接比較しており(キャプション逐語 the speed of the widely used Cu-Zr embedded atom method (EAM) potential by Mendelev is additionally indicated by the gray line、Intel Xeon Platinum 8368 の1コア)、そこではMLIPはEAMより明確に遅い。なお同レビューはMLIPとDFTを直接計時していないので、DFTに対する速度比はここでは主張しない。 https://arxiv.org/abs/2505.02503

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