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Physical AI

人型ロボットは工場でどこまで使える?BMWの実績とテスラの現状

2026/7/28 (更新: 2026/10/10)

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目次
背景・問い・要点
背景

人型ロボットは、人間と同じ形をした機械だ。人間向けの通路や設備をそのまま使えることを狙っている。この人型ロボットが工場に入った、という発表が2025年から2026年にかけて何度も出た。こうした発表にはたいてい「デプロイ(配備)済み」という語が付く。読む側はそれを「もう現場で仕事をしている」と受け取る。ところがこの語に、業界で共通の定義は無い。ある会社は自社の機体が生産ラインで千時間以上を回ったと細かい数字を並べた。別の大手のCEOは同じ時期に、自社工場の機体は研究開発の域を出ていないと自ら述べた。どちらの報道も同じ「デプロイ」の語を使っている。当事者ではない調査機関が、同じころ公開された証拠を作業ごとに横断して評価した報告も出した。発表の語だけでは何が起きたのか分からない。だから、当事者の開示と第三者の調査を並べて読むしかない。

問い

企業が「デプロイ済み」と発表した人型ロボットは、実際に何を、どこまで自分でやっているのか。企業の自己申告と第三者の横断調査を突き合わせて確かめる。

要点

人型ロボットの実配備は、仕様で狭く固定した一つの作業から入っており、そこでは生産ラインで半年ぶん稼働した実績がある。しかし、作業を自分で選ぶことは、本稿が取り上げたどの事例も示していない。人間並みの速さは、電池メーカーのCATLが配備した人型ロボットについて主張しているが、第三者の調査はそれを同社の主張として引くにとどまる。人間の介入なしで続けた例はナプキンのような単純で均一な品目に限られ、Figureの生産ラインでは介入回数の達成値が開示されていない。配備が広がるかどうかを主に左右するのは、速さよりも別の作業や環境への転移であり、転移は単純な品目で兆しが出ている。外部が出した新しい課題も出題者の想定より速く解かれたが、それは課題ごとに集めたデータで微調整した結果で、同じ調査はそのうち鍵の実演を特定の錠前向けの学習と見ている。 FigureのF.02はBMWのサウスカロライナ工場で1250時間超を稼働し、3万台を超えるX3の生産に加わった。この台数はBMW自身の発表でも確認できる12。ただし担当したのは金属部品を溶接治具へ置く一つの作業だ。所要時間も配置精度も介入回数も、Figureが開示したのは要求値と目標値であって、達成値ではない1。テスラのイーロン・マスクCEOのほうは決算会見で、自社工場ではOptimusを実働と呼べる形で使っていないと認めている3。Epoch AIの横断調査によれば、ロボットが人間の3倍から10倍の時間をかけるのは典型で、成功率はタスクの複雑さに強く依存する4。ただし同調査は、遅さは稼働時間で埋まるので配備の主因ではないとし、デモと配備を分ける障壁は転移だとしている4。外部の出題者が組んだ家事まわりの課題では、Physical Intelligenceの成功率が、信頼性を最優先しない条件での測定で平均52%だった5。その出題者は、課題が3カ月でほぼ制覇されたのは想定より速いと書いている6。

モデル・例示

遅さは稼働時間で埋まるが、介入の回数は稼働時間に出ない

※ この節の数値は説明のための仮定で、測定値ではありません。

人が1時間に40個の部品を治具へ置く作業を考える。人が1日8時間働けば、置ける部品は320個になる。ロボットがこの作業に人の3倍の時間をかけるなら、1時間に置けるのは約13個だ。それでも24時間止まらずに回れば、1日の数は約320個で人と並ぶ。この条件では、人の3倍までの遅さなら、稼働時間を延ばせば数の上で埋まる。3倍を超えると、24時間回しても1日の数は人に届かない。

次に、同じ10時間シフトを回った二台の機体を並べる。一台はシフトのあいだ人が一度も手を出さなかった。もう一台は1時間に1回、人がずれた部品を置き直した。どちらも「10時間稼働し、部品を置いた」と同じ言葉で報告できる。だが後者は、シフトのあいだ人がそばに付いていなければ回らない。稼働時間と処理した数だけでは二台の違いは見えず、介入の回数を数えて初めて、人の手がどれだけ外れたかが分かる。

FigureがBMWで残した数字は具体的だが、裏が取れるのは一部だ

Figure AIは2025年11月、自社の人型ロボットF.02がBMWグループのサウスカロライナ州スパータンバーグ工場で担った作業の実績を公表した1。内容は、車体工程で板金部品をラックや箱から取り出し、溶接治具に配置するというピック・アンド・プレース作業だ。Figureはこの取り組み全体を「11カ月の配備」と表現している。機体の立ち上げから6カ月で工場へ納入して試験を開始し、10カ月で実稼働ラインへの本格投入に至った。日々の稼働では10時間シフトを月曜から金曜までこなし、累計1250時間超、9万個超の部品投入、推定120万ステップ・200マイル超の移動を記録し、3万台超のBMW X3の生産に寄与したという。ハードウェアの故障は「最小限」で、Figureは前腕部を最も故障しやすい箇所に挙げた。これはデモ映像ではなく、実際の生産ラインでの稼働記録であり、数字も細かい。ただし「11カ月」は配備全体の期間で、日々の稼働は6カ月分である。Figure 自身が Within 10 months, we launched full deployment on an active assembly line Six months of daily runtime と書き分けている。1250時間を10時間シフトで割れば125営業日≒6カ月で、この数字とも合う。BMWグループ自身も2026年6月の発表で、F.02が10カ月にわたり3万台超のX3生産を支えたことを公表した上で、後継機Figure 03を同じ工場の物流工程に投入すると発表している2。ただしこれは独立の計測ではない。当該リリースはBMW広報の名義で出たものだが、Figure社CEOの談話を引いており、台数もFigure公表値と同一である。ただしBMW自身の語は一定しない。BMW生産管理担当バイスプレジデントの談話は、完了した仕事を「ボディショップでのpilot(試行)」と呼び、同じ一文でFigure 03について「deploying」と言う。地の文はF.02の件を「a successful deployment」と書き、冒頭の要約行は「demonstrates」「Robot development」と書く2。「デプロイ済みとは何か」は、発注元の側でも一語に定まっていない。ただしBMW側の発表に稼働時間・部品数・サイクルタイム・精度といった詳細数値はなく、それらはFigure側の開示にのみ依拠している。

だが作業は一つに絞られ、介入の実績値は非開示だ

その実績の中身を見ると、対象は極めて狭く定義された単一タスクだった。Figureが開示した条件は、総サイクルタイム84秒(うちローディング37秒)という要求、シフトあたり99%超の配置精度という目標、シフトあたりの人間介入ゼロという目標、2秒以内に5mmの精度で位置合わせするという要求である。これらはすべて厳格に規定された条件であり、開示された範囲では作業は仕様で固定されている。判断範囲を自律的に広げた形跡は示されていない1。Figure が適応の必要を述べているのは足の置き方と手と目の協調で(precise yet adaptive locomotion advanced hand-eye coordination algorithms)、作業そのものの選び方には及んでいない1。しかもこの3つのKPIは、いずれも要求値・目標値として示されたものだ(原文は The requirement was 84 seconds total, 37 seconds load time / Our target was > 99% success per shift / The goal was zero per shift)。Figureはどの達成値も公表していない。 サイクルタイムも配置精度も、シフトあたり実際に何回の介入が発生したかも開示がなく、人手を借りずに1250時間を稼働したのかどうかは、開示された範囲では確認できない。BMWの発表もこの位置づけを明確にしている。人型ロボットは「既存の自動化を価値ある形で補完するもの」(a value-adding complement to existing automation)だとする。その可能性は「単調、人間工学的に負担が大きい、あるいは安全上重要な作業」に特にある(Its potential lies particularly in)という。仕分けたトロリーは定められた集荷点へ運ばれ、自動牽引車か Smart Transport Robot が組立位置まで運ぶ。組立作業者へは、そこから「順序通りに」(just in sequence)供給されるとしている2。自律的なエンドツーエンドの生産プロセスは、どちらの発表にも登場しない。Figure 03が担う仕分けに近いタスクに、コンベア上の荷物の仕分けがある。後述するEpoch AIの調査は、このタスクを別途評価している。Figureの1時間ノーカット実演について、95%の精度という同社の主張を認めたうえで、平均的な作業者より約4倍遅く、他の荷物の種別や大きさへ転移する実演は示されていないと書く。実世界で配備された例を把握していないという理由で、分類は「ラボで検証済み」にとどまる。ただし同調査は、示された能力と信頼性なら、範囲を限れば実際の配備にも足りるだろうと付け加えている4。

同じ時期、テスラのCEOはOptimusの現状を説明した

Figureの発表とほぼ同じ時期に、対照的な出来事があった。2026年1月28日のテスラ決算会見で、質問は、稼働台数と担当している具体的な工程、そして効率や生産量への影響の3点を尋ねていた。マスクCEOの回答に数字は無い3。回答はこうだ。「まだ研究開発段階です。工場でOptimusに基本的な作業をさせたことはあります。ただ新しいバージョンへ更新するたびに旧バージョンを廃止しています。自社工場で実質的な意味では使われていません」3。さらに「それよりも、ロボットに学習させるという意味合いが強い」とも述べ、「有意と言える規模のOptimusの製造は、おそらく今年(2026年)末までは見込んでいない」と続けた3。自社の決算会見という公式の場で、CEO自身が「実質的な稼働ではない」と述べたことになる。Figureが具体的な数字を並べたのと同じ期間に、もう一方の大手は自社工場での実質的な稼働が無いことを説明していた。これはOptimusとテスラ社の事情であり、人型ロボット全般の到達点を示すものではない3。Epoch AIの調査は、Optimusの公開デモの側も分解している。ゴミ出しの実演でOptimusが示したのは、ゴミ袋を持ち上げ、屋外のごみ箱の蓋を開け、袋を落とすところまでだ。屋内のごみ箱から袋を取り出してもおらず、袋を閉じてもおらず、作業中に移動もしていない。実演は統制された訓練用の倉庫で行われており、実環境へ転移する証拠は無いとしている4。

Epoch AIの調査が示す、デモと配備の落差

この落差は個別企業の話にとどまらない。Epoch AIが2026年2月に公表した調査「Where Autonomy Works」は、産業・家庭・移動の各領域(原典は industrial, household, and navigation)を対象にしている。タスクを5段階(初期研究段階から商用デプロイまで)に分類し(同調査は form-factor agnostic で、ロボットを格付けしてはいない)、信頼性・速度・コスト・新しい環境や物体への転移を横断的に評価した4。同調査の要約は、移動のタスクは商用配備に届いた一方、産業と家庭のタスクの多くは届いていないとまとめる。物を扱う作業で商用配備に届いたのは、倉庫のピッキングのように、環境を機械に合わせて設計できる単純な作業だという。同調査は前置きで、デモで解決済みに見えるタスクも、配備の環境では脆いことがあると書いている4。多くの公開デモは特定のタスク・特定の環境向けに調整されたものだ。同調査は、転移が明示的に示されない限り前提とすべきではないとする4。

速度面では、ロボットは人間より3〜10倍遅いのが典型だという。ただし同調査は、速度を配備の主因とは見ていない。見出しは Speed is not solved, but is not the main bottleneck to deployment で、稼働時間の長さが遅さを埋め合わせるとする。真の障壁は Transfer is the bottleneck that separates demos from deployment と別に挙げている。産業領域のまとめでは、環境をロボットに合わせて設計できる一部の倉庫や工場では転移が無くてもよいとしつつ、転移が無ければ単一作業だけを学習したロボットは専用の非自律の自動化に負けると書く。産業用途では人型という形態が最適であることはめったにない(the humanoid form factor is rarely the best suited for the job)とまで述べている4。洗濯物畳みでは、Physical Intelligence(PI)とFigureの場合、タオルのような単純な品目で約5倍遅く、ジーンズはPIで10倍以上、裏返しのTシャツに至っては約20倍かかるという。ただし同調査は、洗濯物畳みや片づけのような単純な課題では転移の兆しが既にあるとも書く。同調査によれば、PIのπ0.6は新しい家で50点の未知の品目を畳んでいる4。速度の一般化を止める記述も、同じ一文にある。ナプキンなら、DYNA Roboticsのロボットは人間の約60%の速度で畳むという。同社のDYNA-1はナプキン850枚超を24時間連続で、成功率99.4%・人間の介入ゼロで畳み、商用先10社では3カ月に20万枚超のタオルを品質受入率99%で処理したという。もっともEpochは、この商用配備が「単純で均一な品目」(limited to simple, uniform items)に限られており、家庭のロボットが扱うような多様な衣類ではないと、直後の段落で釘を刺している。裏返しのTシャツについては、出題者本人がオリンピック提出分を人間の10倍と記録している(Squeaking in at 10x slower than me)6。ゴミの除去(後述のLokiの車輪型ロボット)は10倍遅く、鍵の挿入は5倍遅い4。人間並みの速さを主張する配備もある。電池メーカーのCATLは、人型ロボットを電池パックのコネクタ挿入に配備し、信頼性99%と人間並みの速さを主張している。Epochはこれを同社の主張として引くにとどまる4。

信頼性面でも同じことが言える。Physical Intelligenceが取り組んだ外部課題「ロボット・オリンピック」は、鍵を挿して回す、ピーナッツバターを塗る、油汚れのフライパンを洗うといった家庭内の高精度作業を集めたものだ(課題の内訳はEpochではなく出題側の記述による)。ここでは同社自身が、信頼性を最適化しない条件での成功率が平均52%(task progress は72%)と報告しており5、Epoch も52%を引いている4。Epochはこの鍵の実演について、ロボットが鍵穴を見ずに向きを合わせている点を挙げ、その錠前に特化した学習だと見ている(suggesting it was trained specifically on these locks)4。PI自身も under 9 hours for most tasks と書いており、大半の課題で集めたデータは9時間未満だった5。出題側の評価はむしろ逆で、3カ月で残る課題がほぼ制覇されたのは想定外に速く、課題が易しすぎたと書いている6。出題者は、力覚が要ると考えた作業も多指ハンドが要ると考えた作業も、想定がすべて外れたと書いている。PIはそれらを視覚と2本指のグリッパだけで解いた(PI solved all of them with pure vision and pincer grippers)6。一方で、鳩目に靴紐を通す作業(ByteDance GR-RL、83%。ただし人間の約5倍遅く、新しい対象や文脈への転移は示されていない)や、Tシャツ・短パンの畳み(PI、95%。ジーンズなど難しい品目では75%に低下する)では高い成功率が報告されている。同じ「畳む」でも品目が難しくなれば数字は落ちるように、結果はタスクの中身で大きく変わる4。

さらに同調査は、長期の実運用を掲げる事例でも遠隔操作への依存が残ることを指摘する。例に挙げられたLoki Roboticsのゴミ除去ロボットは人型ではなく片腕の車輪型で、ゴミ袋を自分で閉じることはできない。同社はキャンパスやオフィスで8時間シフトを6カ月超にわたり回したと主張する一方、多くのエッジケースで遠隔操作が必要だったと自ら注記している4。稼働期間の長さは、その間ロボットが自律していたことを意味しない。

出典6件
  1. Figure AI「F.02 Contributed to the Production of 30,000 Cars at BMW」公式プレスリリース, 2025. https://www.figure.ai/news/production-at-bmw — 11カ月の配備のうち日々の稼働は6カ月で、1250時間超・部品9万個超・X3 3万台超を報告し、KPIは要求値と目標値だけを示す。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  2. BMW Group「BMW Group Advances the Use of Physical AI in Production with Figure 03 Project in Spartanburg」プレスリリース, 2026. https://www.press.bmwgroup.com/global/article/detail/T0458778EN/bmw-group-advances-the-use-of-physical-ai-in-production-with-figure-03-project-in-spartanburg?language=en — F.02の実績と、Figure 03の物流工程への投入を発表。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  3. The Motley Fool「Tesla (TSLA) Q4 2025 Earnings Call Transcript」2026. https://www.fool.com/earnings/call-transcripts/2026/01/28/tesla-tsla-q4-2025-earnings-call-transcript/ — 2026年1月28日のテスラ決算会見の書き起こし。Optimusの稼働を問う質問に、マスクCEOが研究開発段階で自社工場では実質的に使われていないと答えた記録。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  4. Yann Rivière, Jean-Stanislas Denain「Where Autonomy Works: Evaluating Robot Capabilities in 2026」Epoch AI, 2026. https://epoch.ai/publications/where-autonomy-works-evaluating-robot-capabilities-in-2026 — 産業・家庭・移動のタスクを5段階で分類し、速度・信頼性・転移を横断評価した。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15

  5. [context] Physical Intelligence「Moravec’s Paradox and the Robot Olympics」公式ブログ, 2025. https://www.pi.website/blog/olympics — 外部の課題を課題ごとの微調整で解き、成功率を最優先しない条件で平均52%・task progress 72%と報告。 ↩ ↩2 ↩3

  6. [context] Benjie Holson「Physical Intelligence Wins the Olympics: Deep Dive」General Robots(Substack), 2026. https://generalrobots.substack.com/p/physical-intelligence-wins-the-olympics — 課題の出題者本人が、3カ月での制覇は想定より速く課題が易しすぎたと書いた講評。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。