In Silico

Physical AI

VLAとは:ロボット基盤モデルの汎化はどこまで本物か

2026/7/16 (更新: 2026/10/12)

  • VLA
  • Physical AI
  • ロボット
  • LIBERO
  • LIBERO-PRO
  • LIBERO-Plus
  • π0.5
  • OpenVLA
  • Physical Intelligence
  • Feature Token Modulation
  • MuJoCo
  • 汎化
  • ベンチマーク
  • 丸暗記
  • 摂動
  • 視点
  • 空間モデリング
  • 頑健性
  • 模倣学習
  • 進捗率
  • シミュレーション
  • robosuite
  • LIBERO-Long
  • CALVIN
  • SimplerEnv
  • 遠隔操作
目次
背景・問い・要点
背景

「タオルをたたんで」と言えばたたむ。そういう何でもこなすロボットを、いまは作業ごとの専用プログラムではなく、一つのモデルで作ろうとしている。カメラの映像と言葉の指示から、ロボットの体をどう動かすかまでを一続きに出す型で、Vision-Language-Action(VLA)と呼ぶ。売りは、学習のときに見ていない場所や物でも、条件が少し変わっても通用することで、これを汎化という。実際、初めて入る家の片づけをこなしたという報告が出た。ところが同じ時期、モデルを比べる試験(ベンチマーク)の側から厳しい監査が相次いだ。この分野で標準になった試験は、シミュレータの上に並べた課題をモデルに解かせて採点する。その数字が、条件を少し変えるだけで崩れる、というのが監査の中身だ。同じ技術の話なのに、評価が正反対になっている。本稿は、未訪の家で家事をこなした π0.5 と、標準ベンチ LIBERO を監査した LIBERO-PRO・LIBERO-Plus、崩れを軽い適応で戻した Li らの研究を例に取る。

問い

VLAの汎化はどこまで本物なのか。そして、標準ベンチのスコアは、その汎化をどこまで映しているのか。この二つを、両側の一次研究から確かめる。

要点

汎化は、初めて入る家で長時間の家事をこなしたという報告がある程度には実在する。だが、それがどこまでなのかを、標準ベンチのスコアは映していない。 その家事をこなした π0.5 自身、監査側が組み直した汎化設定では、総合平均がほぼ満点から半分前後まで落ちる1。別の頑健性分析では、π0 や OpenVLA-OFT など10モデルが、視点や初期状態をわずかにずらすだけで崩れた。指示の対象物を別の物に替えても新しい指示に従わず、元の対象への動作を続ける傾向も報告されている2。逆に、崩れの主因は「空間のとらえ方」のズレで、視点の変化にだけ大きく崩れる π0.5 も、その視点のデータでごく小さな変換を一度学ばせるだけで大半が戻る3。ベンチの数字は実力を過大に見せる一方、軽い手当てでどこまで戻るかは映さない。ただし、初めて入る家の報告は開発元自身のもので、独立の再現はまだない4。

モデル・例示

練習と同じ置き場所で採点すると、軌道を覚えただけのモデルも高い点を取る

※ この節の数値は説明のための仮定で、測定値ではありません。

机の上の皿を籠に入れる課題を、決まった10か所の置き場所で練習した二つのモデルを考える。一つは、カメラの映像から皿の位置を読み取って腕を動かす。もう一つは、置き場所ごとに練習した腕の軌道を覚えて、そのままなぞる。

練習と同じ10か所で100回ずつ試すと、どちらも95回ほど成功する。採点の数字だけでは、二つを区別できない。皿を練習に無い場所へ10センチずらして試すと、映像を読むモデルは90回ほど成功を保つ。軌道をなぞるモデルは皿の無い場所で手を閉じ、成功はほぼ0回になる。

成功の回数を並べると、二つのことが言える。

  1. 試験の条件が練習の条件と同じなら、高い成功率は、映像を読む力からも、軌道を覚える力からも出る。
  2. 二つを分けるには、練習に無い条件で試し、成功率がどれだけ残るかを見る必要がある。

VLAとは何を約束したのか

VLA(Vision-Language-Action)は、カメラ画像と言語指示を受け取り、ロボットの動作(各関節をどう動かすか)を直接出力するモデルだ。膨大な操作デモで学ぶことで、道具ごとに専用の制御を書く代わりに、一つのモデルが多くの身体・多くの作業を担う。これが、LLMに続く「基盤モデル」の身体版である。

約束は二つ。新しい環境への汎化(訓練で見ていない部屋・物でも動く)と、別の身体への転移(腕型で学んだことが移動ロボットや人型でも効く)。本稿が扱うのは前者で、2025年、その前進を示す報告が出た。

見たことのない家で、家事はこなせる

前進の象徴が π0.5 だ4。Physical Intelligence は、エンドツーエンドで学習したロボットシステムが、まったく新しい家で、キッチンや寝室の掃除のような長時間・器用な操作をこなせることを初めて示した、と報告する。このシステムはラボの決め打ち環境ではなく、未訪の実世界で動く。この成果は「汎化」という言葉に値する。

その報告には留保が二つ付く。開発元(Physical Intelligence)自身の報告で、独立の再現は無い。指標は部分点つきの進捗率で、二値の成功率として読まないための留保が要る4。一方で、同論文が置いた対照はこの主張を強くする。著者らはテスト環境のデータで直接訓練した対照モデルを用意し、104地点で共訓練したモデルがそれと同等の性能に達したと報告する。この比較は実家庭ではなく模擬の部屋で、計算量を抑えるため移動操作のデータを除いて事前学習した版で行われた。著者らは、模擬の部屋での成績が実家庭での成績を代表すると書く4。

反証を探す側の研究も、汎化そのものを否定してはいない。むしろ後述のように、脆さは思ったより浅く、直せるという主張さえ出ている3。だから出発点は「VLAは汎化しない」ではない。問いは、どこまで・どの条件で汎化するのか、そしてその汎化を、いま我々は正しく測れているのか、である。

標準ベンチ「LIBERO」は何を測り、なぜ標準になり、どこに穴があるか

何を、どう測るのか。 LIBERO は、ロボット操作をシミュレーション上で採点するベンチマークだ5。物理エンジン MuJoCo と robosuite の上に、言語で指示された130の操作課題を用意し、各課題に人間の遠隔操作による50件のデモ(映像と、ロボットの関節・グリッパの情報)を添える。モデルはそれを模倣学習し、シミュレータ内での成功率で評価される。課題は空間配置(Spatial)・物体(Object)・ゴール(Goal)の各10課題と、多様な物体操作を集めた LIBERO-100 の100課題の4部分集合に分かれ、変える要素を軸ごとに切り分ける設計で、元は「新しい課題を覚えても前を忘れない」生涯学習の研究のために作られた。VLA 論文が Spatial・Object・Goal と並べて報告する「Long」は、この LIBERO-100 から切り出した長手順10課題(LIBERO-Long)である。

なぜ標準になったのか。 実力より利便性による。実機評価は高価で、同じロボット・同じ部屋を他者が再現できないから論文間で数字を比べられない。対して LIBERO はシミュレーションゆえ誰でも同条件を再現でき、デモ付きで、課題が標準化されている。だから「VLAを出したらまず LIBERO の成功率を載せる」が定着し、比較の共通言語になった(ネットワーク効果)。監査する側もそう見ている。LIBERO-PRO は「事実上すべての近年の VLA 研究が LIBERO で結果を報告する」とし、この分野の評価における「共通通貨」と呼んだうえで、それが研究の方向そのものに強い影響を及ぼしているとまで書く1。強みは、この再現性・比較可能性・軸ごとの切り分けにある。

どこが穴か。 同じ設計が弱みに直結する。

ほかのベンチではだめなのか。 代替はある。CALVIN(長い言語条件つき手順)、Meta-World や RLBench(多課題の操作、いずれもシミュレーション)、実機での成績との相関を確かめたシミュレーション環境の SimplerEnv6、そして実ロボット試験である。ただし選択にはトレードオフがつく。シミュレーション系(LIBERO 含む)は再現性・比較可能性を取る代わりに丸暗記と sim-to-real のリスクを負う。SimplerEnv は後者を縮めようとするが、前者は残る。実機評価は現実性を取る代わりに再現性・比較可能性を失う(π0.5 の家事デモが「本物だが独立再現待ち」なのは、この理由による)。LIBERO が勝ったのはこの利便性ゆえで、だからこそ「暗記に無防備な数字」が分野の比較基準になってしまった。その基準の飽和と脆さを突いたのが、次の監査群である。

ベンチの90%は、丸暗記だった

その「測れているのか」に、はっきり否を示したのが LIBERO-PRO だ1。広く使われるロボット操作ベンチ LIBERO で、既存モデルは90%前後から90%超の正解率を出す。ところが Zhou らが汎化設定を作ると、正解率は0.0%まで落ちた。ここは数の読み方に注意が要る。0.0% は最も弱い軸の値であって、ベンチ全体の平均ではない。6モデルの総合平均で見ると、標準 LIBERO の 86.8〜98.0 に対し LIBERO-PRO では 40.0〜53.0(OpenVLA 93.0→52.0、π0 94.1→44.0、π0.5 96.9→53.0、MolmoAct 86.8→41.0、NORA 87.9→40.0、X-VLA 98.0→46.0)1。半分前後まで落ちるのが全体像で、0.0% はその内側にある最悪の軸だ。 落ちるのはとくに物体の置き位置を変えたときと、課題の構成を変えたときである。著者らは fail sharply under controlled perturbations, particularly position and task shifts と書く。ただし課題の組み替えについては、後続の監査が、公開実装は方策に元の課題の指示文を渡したまま新しい目標で採点していた(「コンロをつけろ」と指示して、消したかを判定する)と報告している。直すと、監査が測り直した組み替えの3区分のうち1つで π0.5 は 0.4% から 53.2% に上がったが、残る2区分は 10.6% と 20.0% にとどまった7。

物体を無関係なものに差し替えたり、指示を言い換えたりしたときは、見かけの安定が残る。言い換えのほうは、後続の監査が公開実装の不具合を直して測り直しても崩れず、π0.5 は言い換えの2区分で 96.4% と 98.8% を保った7。LIBERO-PRO の著者らは、この安定を見せかけの頑健さと呼ぶ。逐語は Apparent stability against object and instruction perturbations is largely due to overfitting rather than genuine task understanding である。著者らは、対象を無関係な物に替えても同じ掴み動作を続け、意味のない文字列(「xxx」など)を指示に入れても元の課題とほぼ同じ軌道で動いた場面を示す。ただし、これは数で測った結果ではなく定性の観察で、どのモデルか、何回試したか、指示をどう渡したかは書かれていない1。そのうえで、モデルが課題を理解していたのではなく、訓練データの動作とレイアウトを丸暗記していたと結論する。

同じ方向を、Fei らの LIBERO-Plus が体系的に裏づける2。カメラ視点・ロボット初期状態・言語指示・照明・背景・センサノイズ・物体配置の7要素を一つずつ揺らすと、視点や状態のわずかな変化で95%から30%未満へ崩れた。そして最も示唆的なのは、モデルが言語指示をほぼ無視していた点だ。VLA は言語で作業を指示できることを売りにしているので、その前提が崩れる。ただし、同じ論文の測定では、指示が成績にまったく効いていないわけではない。指示文を言い換えて複雑にする摂動で成功率はモデルによって16.6〜53.5ポイント落ち、指示を空にしても成績がほぼ変わらなかったと著者らが書くのは、OpenVLA-OFT の Object の課題群だけだ。はっきり示されたのは、指示の対象物を同じ場面の別の物に替えても、モデルが新しい指示に従わず、元の対象への動作を続けたことである2。視覚のフィードバックにも頼らず、覚えた軌道をそのままなぞって動くモデルもあったと、著者らは書く。高いベンチスコアは、真の能力を意味しない。なお、後続の監査は、公開実装ではファイル名から作る指示文にカメラ視点や初期状態の番号などの設定情報が混じると報告し、直すと π0.5 の成功率がある区分で 84.34% から 92.42% に上がったとしている7。

π0.5 も、LIBERO-PRO が評価したモデルの一つ(v2 の本文は3モデルと書き、図7は6モデルを並べる)で、96.9 から 53.0 へ落ちる。ただし落ち方が違う。位置を変える摂動下の libero-goal で、OpenVLA と π0 がともに0なのに対し、π0.5 だけが 0.38 を残した。著者らはこれを「標準ベンチのスコアが覆い隠していた差」と呼ぶ1。これらは特定のベンチの穴を突く監査で、「LIBEROで0%」は「実世界で無能」と同義ではない12。

脆さの正体は「空間のとらえ方」のズレなので、直せる

では脆さは、モデルの根っこにある宿命なのか。Li らの反証は「否」と言う3。彼らは、性能劣化の主因が、言語と空間の情報から推論して動作を出す部分(原典の言う Physical Modeling)ではなく、空間モデリング(視覚表現の位置合わせ)のズレにあると切り分けた。切り分けの効きは、彼らの表が一行で見せている。未適応の π0.5 は、照明96.2・テクスチャ96.0・ノイズ93.5と天井近くを保ったまま、視点だけが48.5まで落ちる3。壊れているのは空間の取り方であって、推論と動作生成でも見た目の頑健性でもない。そしてわずか4千パラメータの変換(Feature Token Modulation)を新しい視点のデータで一度だけ適応させると、その視点の正解率は48.5%→87.1%へ戻り、470万パラメータの特徴線形適応(FLA)では90.8%に達する3。「足すだけ」ではない。適応には、新しい視点で集めた人間のデモが課題ごとに1本と、2000ステップの学習が要る(逐語 it requires only a single human demonstration per task to adapt to the new visual domain)。だが要るものがそれだけだという点が、この反証の主張である。

つまり、事前学習済みVLAには「使われていない汎化能力」が眠っており、丸ごと再訓練せずとも、狙った軽い手当てで引き出せる。ベンチ上の崩壊は、能力の不在ではなく引き出し方の失敗でもある、という読みだ。

ただし、この「直せる」の対象は主に視点ズレで、あらゆる汎化を回復したわけではない3。示されたのは、新しい視点のデータで追加学習すれば、その視点での成績を取り戻せることまでだ。著者らはこれを、事前学習済みモデルに眠る頑健性の表れと読む3。


出典7件
  1. Xueyang Zhou ほか「LIBERO-PRO: Towards Robust and Fair Evaluation of Vision-Language-Action Models Beyond Memorization」arXiv, 2026. https://arxiv.org/abs/2510.03827 — 位置や課題を変えると崩れると報告(査読前)。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7

  2. Senyu Fei ほか「LIBERO-Plus: A Progressive Robustness Benchmark for Visual-Language-Action Models」CVPR 2026. https://openaccess.thecvf.com/content/CVPR2026/html/Fei_LIBERO-Plus_A_Progressive_Robustness_Benchmark_for_Visual-Language-Action_Models_CVPR_2026_paper.html — 7要素の摂動で成功率が95%から30%未満へ落ち、言語指示はほぼ無視されると報告。 https://arxiv.org/abs/2510.13626 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  3. Weiqi Li ほか「VLA Models Are More Generalizable Than You Think: Revisiting Physical and Spatial Modeling」CVPR 2026. https://openaccess.thecvf.com/content/CVPR2026/html/Li_VLA_Models_Are_More_Generalizable_Than_You_Think_Revisiting_Physical_CVPR_2026_paper.html — 視点での崩れは視覚表現のずれによるとし、軽い適応で大半が戻ると報告。 https://arxiv.org/abs/2512.02902 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7

  4. Physical Intelligence ほか「π0.5: a Vision-Language-Action Model with Open-World Generalization」CoRL 2025. https://proceedings.mlr.press/v305/black25a.html — 学習に使っていない家で、台所や寝室の掃除をこなせたと開発元が報告。指標は進捗率。 https://arxiv.org/abs/2504.16054 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  5. Bo Liu ほか「LIBERO: Benchmarking Knowledge Transfer for Lifelong Robot Learning」NeurIPS 2023. https://proceedings.neurips.cc/paper_files/paper/2023/hash/8c3c666820ea055a77726d66fc7d447f-Abstract-Datasets_and_Benchmarks.html — MuJoCo 上の言語つき130課題を4部分集合に分け、各課題に50デモを付けたベンチマーク。 ↩

  6. Xuanlin Li ほか「Evaluating Real-World Robot Manipulation Policies in Simulation」arXiv, 2024. https://arxiv.org/abs/2405.05941 — 実機の代表的な構成を模したシミュレーション環境群で、実機との成績の相関が強いと報告。 ↩

  7. Qiwei Chen ほか「Faster and Better? Benchmark Bugs and Design Limitations Distort the Evaluation of Vision-Language-Action Acceleration」arXiv, 2026. https://arxiv.org/abs/2609.37771 — 不具合22件を報告(査読前)。 ↩ ↩2 ↩3

この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。