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反応拡散とは?Gray-Scottモデルで模様ができる仕組みとデモ

2026/6/29 (更新: 2026/10/11)

  • 反応拡散
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  • 種
目次
背景・問い・要点
背景

物質どうしが反応し、同時に周りへ拡散する系を、反応拡散系と呼ぶ1。ここでは二つの仮想化学物質が拡散し、反応する。ルールは一つだ。なのに、feed と kill の2つの数字と撒いた種で、斑点・迷路・サンゴ・指紋へと模様が分岐する。反応と拡散から模様が立ち上がるこうしたパターン形成は、触って確かめるのがいちばん早い。

本稿は、Gray-Scott 反応拡散の対話デモと、その (F,k) 平面を体系化した Pearson(Science, 1993)を例に取る2。

問い

規則が一つしかない系で、斑点になるか迷路になるかを決めているのは何か。

要点

模様を決めるのは F と k の値の組((F,k) 平面上の点)と、そこに撒かれた種の両方である。素の一様な土台はどの (F,k) でも安定で、模様は有限の大きさの種を撒いたときにしか立たない。だからこれは、一様な状態が揺らぎで自発的に崩れる Turing の機構とは別物だ。更新の式に乱数は入らないので、描き直した種とパラメータを決めれば、そこから先の模様はその選択だけで決まる。

モデル・例示

feed と kill を切り替え、種を描く

下のキャンバスで走っているのが、Gray-Scott 反応拡散だ。各点が二つの濃度をもち、近傍と混ざり合い(拡散)、決まった式で反応する。デモはそれを繰り返しているだけである(表示1コマにつき、この更新を8回まとめて回している)。

プリセットで (feed, kill) を切り替え、キャンバスをクリック/ドラッグして種を描いてみてほしい。選ぶのは、あなただ。

feed=0.029, kill=0.057(迷路)— キャンバスをドラッグして種を描く

画面の色は、片方の物質 V の濃さだ。 暗い(ほぼ黒)所は V がほぼ無く、もう一方の物質 U で満たされた「素の土台」。そこに V が増えるほど色が暖かくなる。色は紫 → 赤 → 橙 → 淡い黄の順に明るくなり、明るいほど V が濃い。だから模様の縁で起きているのは、V が土台の U を食べて広がっていく境界の動きである。

同じ (feed, kill) でも、結果は画面の状態で変わる。二つの場合を並べてみる。

  • まっさらな土台に小さく描く: 「消去」してから「斑点」で種を一つ描くと、斑点が育ち、割れて増え、画面が埋まるまで広がる。
  • 育った模様の上で切り替える: 模様が十分に育ったあとで「斑点」「サンゴ」「指紋」に切り替えると、V が消えて真っ黒になることがある。切り替えは数字だけを変え、画面はそのまま引き継ぐからだ。そのときは「消去」してから描き直せばよい。

画面の模様が従う規則は一つだけだ。二つの物質が違う速さで広がり(拡散)、出会った場所で一方がもう一方を増やす反応が起き、同時に外から一方が供給(feed)され、もう一方が除去(kill)される。この供給と除去の釣り合いが、斑点・虫・迷路・サンゴ・穴・指紋のどれになるかを選ぶ。直感的には、毎フレームこの三段を順に回しているだけだ:

反応拡散(Gray-Scott)の更新三段(概念図)各マスは二つの濃度 U と V をもち、毎フレーム三段で更新する。①拡散:U も V も近傍ににじみ広がるが、U の拡散係数は V のちょうど2倍(0.16 対 0.08)で、同じ時間に届く距離では約 1.4 倍になる。この差が模様の骨格を決める。②反応:U と V が居合わせると U+2V→3V が起き、V が U を食べて自分を増やす(自己触媒)。③供給と除去:外から新しい U が流れ込む一方、同じ流れが U も V も割合 F で押し流すので、U の正味は F(1−U) になる。V にはさらに k による除去が加わり、失われる割合は合計 F+k(kill の k を主とする)。F と k の釣り合いが、斑点・迷路・指紋のどれになるかを選ぶ。画面の色は V の濃さ(暗い=V無し、明るい暖色=V濃い)。※ 概念図(フロー)U(基質・速く広がる)V(増える側・遅く広がる/画面の色=Vの濃さ)① 拡散:にじみ広がるU の拡散係数は V のちょうど2倍。届く距離では約 1.4 倍。この差が骨格。② 反応:U+2V → 3VU+VVVVVV がある所で U を食べ、V が自分を増やす(自己触媒)。③ 供給と除去U を補充V を除去+F(1−U)−(F+k)U も V も同じ流れで F ぶん流出。プリセットが変えるのはこの F と k の二つだけ。この三段を毎フレーム繰り返すだけ。F と k の釣り合いが、斑点・迷路・サンゴ・指紋のどれになるかを選ぶ。絵を描く誰かはいない——模様を選んでいるのは、二つの数字と、そこに撒かれた種だ。その二つを選ぶのが、あなたである。画面の色 = V の濃さ:暗い=V無し(基質のまま)→ 紫 → 赤 → 橙 → 淡黄=V濃い。
図は三段を、近傍ににじませ(①拡散)、出会えば V が U を食べて増え(②反応 U+2V→3V)、外から U を足し V を抜く(③供給と除去)流れとして描く。これを毎フレーム繰り返すだけで、F と k の組が模様を選ぶ。
※ 概念図(フロー)(作図:AI)

一つの規則は、拡散・反応・供給と除去の三段からなる

舞台は格子状のマス目で、各マスは二つの濃度 U と V をもつ。この一つの規則は、次の三段からなる。

  1. 拡散では、どちらの物質も周囲ににじみ広がる。ただし U の拡散係数は V のちょうど二倍だ(DU/DV=0.16/0.08D_U/D_V = 0.16/0.08)。これは係数の比であって、距離の比ではない。拡散では二乗変位が時間に比例するので、係数が二倍でも同じ時間に届く距離は 2\sqrt{2} 倍、およそ 1.4 倍にとどまる。この差が要る。Pearson は二次元の数値実験で、二つの拡散係数を等しくすると模様は立たず、同心円状の波が出ただけだったと書いている3。
  2. 反応では、U と V が同じ場所に居合わせると、U + 2V → 3V という反応が起きる。V が一つでもあると、そこの U を食べて V が自分を増やす。だから V は「自己触媒的」に伸びる。
  3. 供給と除去では、外から新しい U が流れ込み、同じ流れが U も V も割合 F(feed) で押し流す。U の正味は F(1−U)F(1-U) で、だから素の土台は U=1U=1 で頭打ちになる。V にはさらに k(kill)による除去が重なるので、失われる割合は F+kF+k になる(主に効くのは k のほうだ)。プリセットで切り替えているのは、この F と k の二つの数字だけである。

数式で書けば、各点の時間変化は次の二本で与えられる(∇2\nabla^2 は近傍との混ざり合い=拡散を表すラプラシアン、DU, DVD_U,\ D_V はそれぞれ U と V の拡散の速さ)。

∂U∂t=DU∇2U−UV2+F(1−U)\frac{\partial U}{\partial t} = D_U \nabla^2 U - UV^2 + F(1 - U) ∂V∂t=DV∇2V+UV2−(F+k)V\frac{\partial V}{\partial t} = D_V \nabla^2 V + UV^2 - (F + k)V

各項は上の三つの規則にそのまま対応する。∇2\nabla^2 が拡散、UV2UV^2 が反応(V による U の消費・V の増殖)、F(1−U)F(1-U) が U の供給と流出の差し引き、−(F+k)V-(F+k)V が V の除去である。デモでは DU=0.16, DV=0.08D_U=0.16,\ D_V=0.08 と固定し、FF と kk だけを動かしている。

模様は (F,k) の点と、撒いた種の両方で決まる

k が大きすぎると、V は除去に追いつけずに消え、格子は素の土台に戻る。F がおよそ 0.02 以上の範囲では、k が小さすぎても V は消えず、全面に広がって一様に V の残る状態で落ち着く2。その中間の (F,k) の狭い領域で、斑点・虫・迷路・サンゴ・穴・指紋といった模様が現れる。模様の種類を選んでいるのは、絵を描く誰かではなく、F と k の二つの値の組((F,k) 平面上のどこにいるか)と、そこに置かれた種である。(F,k) は比ではなく点そのものが効くが、点だけでは決まらない。同じ点でも、まっさらな土台に小さく撒けば斑点が育ち、すでに模様で埋まった状態から切り替えると V が消えてしまうことがある。一様な土台はどの (F,k) でも安定で、模様は有限の種を撒いたときにしか立たない。この履歴依存が、この系の性質だ。

なお Pearson が「双安定」と呼ぶのは (F,k) 平面の一部の領域を指す。原典の相図では、実線で囲まれた内側に一様な定常状態が三つあり、そのうち点線の上・実線の下で線形安定なものが二つになる。非自明なほうが安定性を失うのは、実線を上へ/点線を下へ横切るところであり、その分岐は鞍点分岐と Hopf 分岐である。どの (F,k) でも安定なのは、素の土台のほうだけである。

支えきれなくなった V が一様な背景へ一斉に崩れること自体は、Pearson が要旨に挙げている現象でもある。ただしそちらは数字を変えず、過密になった斑点が領域ごとまとめて崩れる。その穴は数千ステップのうちに周りの斑点が埋め戻す2。

更新ルール自体は決定論的だ。更新の式に乱数はどこにも入らない。ただし最初の種は自動でランダムに撒かれるので、読み込むたび模様は変わる。画面を消去して(全マスを U=1, V=0U=1,\ V=0 に戻して)自分で種を描き直せば、そこから先に現れる模様は種とパラメータ、つまりあなたの選択だけで決まる。

斑点は臨界の大きさで二つに割れ、系を埋めるまで増える

(F,k) 平面のどこにどの模様が出るかを体系化したのが Pearson(Science, 1993)だ2。Pearson は要旨で、模様の一部が薄いゲル反応器の実験で観測された定常な不規則模様に似るとも述べている。arXiv 版の要旨では、この不規則模様は同じ号の Science で Lee らが論じたものとされている。

その論文で最も目を引く挙動は、斑点が臨界の大きさまで育つと中心が支えきれずに崩れ、二つに分かれるというものだ(arXiv 版の要旨の文言では spots which grow until they reach a critical size at which time they divide in two)。デモの「斑点」に種を一つ撒くと、この分裂がそのまま起きる。割れた先がまた割れて、画面が埋まるまで増え続ける。この「埋まるまで」も原典どおりだ。Pearson は斑点型の模様について、最初の摂動のあと斑点は系を埋めるまで数を増やすと書いている(the spots increase in number until they fill the system)。しかもデモが種として置く値(U=0.5, V=0.25U=0.5,\ V=0.25)は、Pearson が数値実験で格子中央の正方形の領域に与えた摂動と同じ値である。Pearson は格子全体を素の土台に置いたうえでこの摂動を与え、その初期条件に ±1% の乱数を足して正方形の対称性を破った。乱数が入るのは最初の一度だけだった。デモの乱数も種を置く位置にだけ入る4。

Turing の機構とは別物である

反応と拡散が模様を生むという発想は Turing(1952, 形態形成の化学的基礎)に遡るが1、機構は別物である。Turing が扱ったのは一様な状態が微小な揺らぎで自発的に崩れる場合で、こちらは素の一様な土台(U=1, V=0U=1,\ V=0)がどの (F,k) でも安定なまま、有限の大きさの種にだけ応じる5。Pearson 自身、ここで使う拡散係数比 2 では安定な Turing パターンは出ないと明記している(要るのはおよそ 2.8 以上)6。ただしその比の話は、非自明な定常状態(Pearson の言う「blue 状態」)から分岐する Turing パターンについてのものだ。全マスを U=1, V=0U=1,\ V=0 に戻した格子で何も起きない理由は、そこにはない。その格子はこの素の土台であり、Pearson が「どの F と k でも線形安定」と書いた自明状態そのものだ。拡散係数比をどれだけ上げても、この状態は安定なままである。加えてデモの更新式には乱数が入らないから、V が全て 0 の格子は厳密な不動点に居座る。種を撒くまで画面が黒いのは、そのためだ。

しかも Pearson は比 2 を欠損として扱っていない。「水溶液中の小分子でも物理的に妥当な」比でありながら広い (F,k) 範囲で対称性の破れが起きる、というのが論文の主張の一部である(Such a ratio is physically reasonable even for small molecules in aqueous solution.)3。ただし原典は、こうした模様が既存の解析手法で押さえられるかどうかについては保留している7。∴ 「規則は単純、結果は多様」は観察であって、機構が理論的に押さえられているという意味ではない。


出典7件
  1. A. M. Turing「The Chemical Basis of Morphogenesis」Phil. Trans. R. Soc. Lond. B 237(641), 1952. https://doi.org/10.1098/rstb.1952.0012 — 反応し拡散する系を reaction-diffusion systems と呼び、一様平衡が揺らぎで崩れ模様が育ちうるとする。 ↩ ↩2

  2. J. E. Pearson「Complex Patterns in a Simple System」Science 261(5118), 1993. https://doi.org/10.1126/science.261.5118.189 — Gray-Scott 系の (F,k) 平面に十二種の模様を配置した基準論文。斑点の分裂、過密な斑点の一斉崩壊と穴の埋め戻し、ゲル反応器の実験模様との類似を述べる。 https://arxiv.org/abs/patt-sol/9304003 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  3. J. E. Pearson「Complex Patterns in a Simple System」arXiv:patt-sol/9304003, 1993. https://arxiv.org/abs/patt-sol/9304003 — 比 2 は水溶液中の小分子でも物理的に妥当だとし、拡散係数が等しいと標的模様は出ても模様形成は起きなかったと書く。 ↩ ↩2

  4. J. E. Pearson「Complex Patterns in a Simple System」arXiv:patt-sol/9304003, 1993. https://arxiv.org/abs/patt-sol/9304003 — 全体を (U=1, V=0) に置き、中央 20×20 点を (U=1/2, V=1/4) へ摂動、±1% の雑音で対称性を破った。斑点は系を埋めるまで増える。 ↩

  5. J. E. Pearson「Complex Patterns in a Simple System」arXiv:patt-sol/9304003, 1993. https://arxiv.org/abs/patt-sol/9304003 — 自明な定常状態 U=1, V=0 はすべての F と k で線形安定で、示した模様はすべて有限振幅の摂動への応答として立ったと書く。 ↩

  6. J. E. Pearson「Complex Patterns in a Simple System」arXiv:patt-sol/9304003, 1993. https://arxiv.org/abs/patt-sol/9304003 — 使った拡散係数比では安定な Turing パターンは出ず、それを出す最小の比はおよそ Du/Dv = 2.8 だと書く。 ↩

  7. J. E. Pearson「Complex Patterns in a Simple System」arXiv:patt-sol/9304003, 1993. https://arxiv.org/abs/patt-sol/9304003 — 一様状態が線形不安定になる境界の近傍を扱う標準的な解析手法で、示した模様が解けるかは不明だと書く。 ↩

この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。