AI・信頼性・評価
手続き型生成と生成AIの共通点:難しいのは狙い通りに作る制御
- 手続き型生成
- 生成AI
- ゲーム開発
- No Man's Sky
- WaveFunctionCollapse
- PCGML
- ControlNet
- Stable Audio 3
- 制御
- 制約解法
- キュレーション
- 来歴
- 決定論
- 再現性
- パイプライン
- 知覚的ユニークさ
- 知覚的差異
- 条件付け
- 大域制約
- 後戻り
- 拡散モデル
- シード
- 大域リスタート
- 組織基盤
- ワークフロー設計
- オートミール
- 惑星
- Kate Compton
目次
手続き型生成(PCG)でも、画像・音楽・動画の生成AIでも、たくさん作ることはもう難しくない。規則とシードを与えれば、ゲームの地形や惑星は事実上いくらでも出てくる。プロンプトを一つ書けば、画像も曲も数秒で返ってくる。生成の能力は年ごとに上がり、出力の見た目の品質も上がり続けている。
それでも、出てきたものがそのまま使えるとは限らない。どれも少しずつ違うのに、並べると同じに見えることがある。作者が頭に描いた構図や条件に合わないこともある。制作の現場に持ち込むと、形式や版の管理が噛み合わず、人の手直しが要ることもある。
量が問題でなくなったのなら、作り手の時間と手間はどこに吸われているのか。生成の速さや量を上げる工夫と、狙いに合うものを得る工夫は、同じものではない。
大量に作ることが易しくなったとき、創作のボトルネックはどこにあるのか。
ボトルネックは生成ではなく制御にあり、価値もそこへ移った。 狙った制約に合い、作者の意図に沿い、現実のパイプラインに収まる出力を出すこと。「作る」ではなく「狙ったものを作る」ことだ。
1万個のマップから、使える100個を得る
※ この節の数値は説明のための仮定で、測定値ではありません。
ある生成器が、ゲームのマップを1日に1万個出せるとする。作者が欲しいのは「入口から出口まで歩いて通れて、前に見たものと同じ印象にならない」マップだけで、条件を付けずに出した1万個のうち、それを満たすのは100個だとする。
一つ目の場合は、生成量を10倍の10万個に増やす。条件を満たすマップは1000個に増えるが、満たす割合は1%のままなので、使える100個を得るには結局1万個前後を見て選ぶことになる。量を増やしても、選ぶ手間は減らない。
二つ目の場合は、生成量を1万個のまま、条件を生成の段階で課す。出てくるものが条件を満たしていれば、選ぶ手間は消える。代わりに、条件を一つ足すたびに、それを満たす出力を探す仕組みが要る。
使えるマップを得る手間を決めたのは、生成量ではなく、条件を満たす出力を出せるかどうかだった。
1800京個の惑星と、空っぽの意味
No Man’s Sky(2016年の宇宙探索ゲーム)は「規模は解けたが制御は解けなかった」物語の典型だ。手続き型生成でほぼ無限の惑星宇宙を作ったことで知られ、発売時は広さの割に空虚だと評された。その後の継続的な無償更新で内容は大きく変わっている。1.8×10¹⁹(約1800京)個の惑星を64bitシードから決定論的に生成する1。だが New York 誌の Jake Swearingen は、同じ 2⁶⁴ を三桁で丸めて、「1840京個のユニークな惑星は手続き的に生成できても、1840京個のユニークな”やること”は手続き的に生成できない」と刺した1。同じ記事は、人が舵を取らない以上、作られるものを制御する手段は生成規則の微調整しかなく、1840京個の惑星にはせいぜい途中の抜き取り検査しかできなかった、とも書いている1。一方で Swearingen は、当時のゲーム制作の本当のボトルネックは技術ではなく、価値あるものを作るのに大人数のチームが要ることだとし、16人で宇宙を作った本作を挙げたうえで、同じ数学を使って、交易所や戦利品箱よりも面白いもので満たした宇宙を作れるかを次の問いに置いている1。
最も深い枠組みが Kate Compton の「10,000杯のオートミール問題」だ。Compton は「私は1万杯の素のオートミールを簡単に生成でき、一粒一粒の位置も向きも違い、数学的には全て完全にユニークだ。だがユーザーにはおそらく、ただの大量のオートミールに見えるだけだ」と書く2。彼女は二つを区別する。一つは知覚的差異で、「前と同じには見えない」程度の違いであり、これは易しい。もう一つは知覚的ユニークさで、本当に記憶に残る違いであり、こちらははるかに難しい。数学的に新しいことと、人が新しいと感じることは別なのだ。彼女自身の言葉では、知覚的ユニークさこそが「本当の指標」であり、そしてそれは厄介なほど難しい2。ボトルネックは数ではなく、意味のある違いを生み出せるよう制御することにある。
(公正のため: 2016年の反発が純粋なPCGの限界か、期待値・宣伝の失敗かは論争含みだ。Wikipedia の項目は、批判の一部は手続き型生成の限界から来たとする。エンジンは多様な惑星を作れても有限個の既成アセットの上に組まれており、それはすぐに見尽くされるという。同じ項目は、宣伝と販促のやり方も論争の的になったと記している1。なお Swearingen 自身は先の New York 誌の記事でこのゲームを強く薦めており、数年後には画期として振り返られるだろうと結んでいる1。刺さっているのは規模の空虚さであって、作品そのものではない。)
分野の答えは「制御可能な生成」
学術のPCG研究も、同じ道を「もっと作る」から「狙ったものを作る」へと進んだ。象徴的なのが、ゲームのマップ生成で人気の手法 WaveFunctionCollapse(周囲と矛盾しないタイルを一つずつ確定させ、全体を破綻なく埋めていく)だ。生成の手法だが、整理するとその正体は制約解法、つまり「与えた条件を満たす答えを探す」仕組みそのものだった3。設計者が制約を置き、ツール側はそれを満たす解を探す。ここで作られているのは、制約で出力を制御できる生成器だ。ただし元の WFC は矛盾に行き当たると後戻りせず、最初からやり直すだけだ3。そのため「解が存在しない」と判定できるわけではない。実際、著者らが「入力の全パターンを1回以上使う」という大域制約を1本足しただけで Skyline のシナリオは数百回の衝突を起こし、WFC を模して衝突のたびに大域リスタートさせた場合は1分の制限時間内に解が見つからなかった3。後戻りを許せば同じ制約は即座に解ける。
別系統として、既存作品から機械学習で学ぶやり方(PCGML)でも、ただ作るだけでなく、それを直す・良し悪しを判定する・分析する(=キュレーションの原始的な部品)へと射程が広がっている4。修復には実作があり、良し悪しの判定は原典自身が今後の課題として挙げる段階にある4。
生成AIでも、価値は制御へ移った
テキスト→画像/音楽/動画は事実上無限に生成できる。だからこそ生成そのものはありふれ、難しいのは条件付け(狙いどおりに方向づけること)になった。その代表が ControlNet5である。ControlNet は「大規模な事前学習済み拡散モデルに空間的な条件制御を加える」もので、エッジ・深度・セグメンテーション・人物姿勢・スケッチで出力を操る。プロンプトだけの試行錯誤では限界があり、空間的な制御がそれを突破する鍵になった。
決定論・再現性は、その制御を支える工学的な土台だ。シードを固定すれば同じ手順は再現できるが、ビット単位まで同じ結果になるとは限らない。非決定的なカーネル選択や、既定では非決定的な実装で走る一部の演算、RNG 状態の違いがエントロピーを紛れ込ませるからだ6。だから本番環境では、環境の凍結・プロンプトのバージョン管理・来歴・統合ゲートをその上に積み重ねる。
ボトルネックは、モデルでなくパイプライン
2025年のゲーム開発における生成AIの総説は、ツールが「パッケージ化・バージョン管理された成果物、追跡可能な来歴、エンジン準拠フォーマットを要するゲーム制作のパイプラインと噛み合わない」と指摘する。そして、生成AIが人手の修正なしに統合可能な成果物を生み出せるという証拠は、レビューした文献の範囲では見当たらない、と述べる7。同じ総説は、統合を一級の設計問題として扱い、エンジン内での検査・追跡・決定論的な再現と、受け渡し時点での来歴の記録を推奨している。そして組織設計は、日常的な利用の前提条件であって後付けの改善ではない、とも述べている7。さらに総説は、対象の研究を通して、生成AIから実際に得られる価値を左右するのは汎用のモデル能力ではなく、明示的なワークフロー設計・評価基準・組織基盤だとまとめる。価値が生まれるのは、成果物の制約を顧みずに生成だけを最適化したときではなく、統合の作業をパイプラインの中で見えるようにし、改善できるようにしたときだという7。「ボトルネック」は総説の語ではないが、この二点を合わせると、ボトルネックはモデルそのものではなく、その周りの工学と組織にあると読める。
総説は手続き型生成についても、数十年の研究と実演を経ながら主流の開発環境での利用はいまも不均一でしばしば非効率だと述べ、生成AIの統合に時間がかかることの例として挙げている7。
生の能力は跳ねても、ボトルネックは制御にある
「生成は解けた」と言い過ぎない。2025–26年に生の能力は跳ねた(動画生成は音声を同時に出すようになり8、音楽生成は Stable Audio 3 で最長380秒=6分超まで伸びた9。ただし380秒は開発元が公開するモデル表の仕様値で、モデル同士の優劣を測ったものではない)。公平に言えば、生の品質は上がり続け、試作や着想のような初期の段階では価値を持ちうる。先のゲーム開発の総説も、効率の利得が出やすいのは使い捨てと素早い反復が重んじられる初期の作業だとまとめている。下流のアセットの組み込みと準備の段階では利得が出にくく、手直しと統合の作業が上流で浮いたように見えた時間の多くを吸い戻すという7。生の能力が上がっても、それだけではボトルネックは解けず、制御とキュレーションにあり続ける。
出典9件
-
Wikipedia「No Man’s Sky」. https://en.wikipedia.org/wiki/No_Man’s_Sky — 64bitシードから約1800京個の惑星を決定論的に生成する。引用元は J. Swearingen「Why Everyone Should Play No Man’s Sky」New York, 2016年8月で、原典は1840京、転記は1860京。 https://nymag.com/intelligencer/2016/08/why-you-should-play-no-mans-sky.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
Kate Compton「So you want to build a generator…」galaxykate. https://galaxykate0.tumblr.com/post/139774965871/so-you-want-to-build-a-generator — 「10,000杯のオートミール問題」として、知覚的差異と知覚的ユニークさを区別する。 ↩ ↩2
-
Karth & Smith「WaveFunctionCollapse is Constraint Solving in the Wild」FDG, 2017. https://dl.acm.org/doi/10.1145/3102071.3110566 — WFCを制約解法と捉え、Skylineでは大域制約1本で大域リスタートは1分以内に解けず、後戻りなら速く解けると示す。元の画像生成には大域リスタートで妥当とする。 https://adamsmith.as/papers/wfc_is_constraint_solving_in_the_wild.pdf ↩ ↩2 ↩3
-
Summerville ほか「Procedural Content Generation via Machine Learning (PCGML)」IEEE Transactions on Games, 2018. https://arxiv.org/abs/1702.00539 — 既存コンテンツをモデル化するので、生成に加えて修復・批評・分析に使えるとし、自動評価は今後の課題とする。 ↩ ↩2
-
Zhang, Rao & Agrawala「Adding Conditional Control to Text-to-Image Diffusion Models」ICCV, 2023. https://arxiv.org/abs/2302.05543 — 事前学習済み拡散モデルに、エッジ・深度・セグメンテーション・姿勢・スケッチによる空間的な条件制御を加える。 ↩
-
PyTorch「Reproducibility」公式ドキュメント 2.14, 閲覧2026-09-10. https://docs.pytorch.org/docs/2.14/notes/randomness.html — 完全な再現はリリースや環境をまたいで保証されないとし、cuDNNのアルゴリズム自動選択、FLASH_ATTENTIONの逆伝播、多プロセスのデータ読み込みを非決定性の源に挙げる。 ↩
-
「Generative AI in Game Development: A Qualitative Research Synthesis」CHI 2026(arXiv, 2025). https://arxiv.org/pdf/2509.11898 — 10本の研究を統合し、人手の修正なしで統合できる成果物の証拠は無く、価値を左右するのはワークフロー設計・評価基準・組織基盤だとする。 https://doi.org/10.1145/3772318.3791206 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
Google「Fuel your creativity with new generative media models and tools」2025年5月20日. https://blog.google/technology/ai/generative-media-models-io-2025/ — Veo 3 が初めて音声つきの動画を生成できるとする。開発元の発表で、第三者の比較評価ではない。 ↩
-
Stability AI「Stability-AI/stable-audio-3」GitHub, 閲覧2026-08-05. https://github.com/Stability-AI/stable-audio-3 — モデル表で Medium・Large の Max length を380秒とする。前世代の Stable Audio 2.0 は最長3分で、公開は2024年4月。 ↩
この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。