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AI半導体

OpenAIとBroadcomの推論チップJalapeño:公式発表の中身と時期

2026/7/3 (更新: 2026/10/13)

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目次
背景・問い・要点
背景

生成 AI のサービスが利用者の問いを受け取って答えを返す処理を推論(inference)という。モデルを訓練する「学習」と対になる仕事で、利用者がサービスを使うたびに走るのはこちらのほうだ。その計算の多くは、汎用の GPU が引き受けてきた。ところが近年、大手の IT 企業は GPU を買うだけでなく、自社の用途に合わせたチップを自分たちで設計し始めている。推論がどのチップの上で回るかはサービスの値段や供給に響きうるので、チップの話は AI を使う側にとっても遠い設備投資の話ではない。

本稿が例に取るのは、OpenAI が2026年6月に発表した初の自前チップ Jalapeño である。OpenAI は NVIDIA の GPU の大口の買い手だったが、2025年10月には Broadcom と組み、自社設計のチップを開発・展開する計画を公表していた1。その提携から出た最初のチップが Jalapeño で、自前チップの顔ぶれに OpenAI まで加わったこの発表は、「NVIDIA の GPU に頼る時代が終わる」という話として読まれやすい。

問い

この発表が確かめたのはどこまでか。そして、自前設計のチップの顔ぶれが揃ってきたことは、推論が NVIDIA の GPU からそちらへ移ることを意味するのか。公開済みの材料で言えるところまでを見る。

要点

どちらも、いま言えるところは狭い。公式が発表時に示した性能は、早期テストでの電力あたり性能の優位と、実効利用率を理論ピークに近づける設計だという説明までで、比較の数値は無かった。2か月後に OpenAI が公表した比較値は、自社ラボでの測定である。公開済みの材料から確実に言えるのは、推論を回せるチップの選択肢が NVIDIA 一社の GPU 以外にも増えたことだけである。 OpenAI が6月24日に公開した Jalapeño は、LLM(大規模言語モデル)の推論に特化した設計だ。ただし実物はまだラボで動くサンプルの段階で、公式が書く初期展開の時期は2026年末である2。コストが約5割下がるという数字も公式発表ではない。同日の報道が、Broadcom の CEO の発言として伝えたものだ3。Google・Amazon・Microsoft・Meta も自前チップを持つか開発を公表しているが、そのどれも NVIDIA に取って代わってはいない4。「推論が2026年に AI 計算の約3分の2を占める」と予測した Deloitte 自身も、推論特化チップの市場は伸びると認めている。そのうえで、それが「エッジへ計算が移り、データセンターの計算が減る」ことを意味するという読みは、リード文で否定している5。

モデル・例示

電力あたりで勝つチップと、費用あたりで並ぶチップ

※ この節の数値は説明のための仮定で、測定値ではありません。

電力の上限が 1 メガワットのデータセンターを考える。チップ X を並べると毎秒 100 万トークンを出し、チップ Y を並べると同じ電力で毎秒 200 万トークンを出す。電力あたりの性能は Y が 2 倍である。

だが 1 トークンあたりの費用は、電気代だけでは決まらない。チップと設備を買って据え付ける費用も入る。電気代を含めた年間の総費用が、Y では X の 2 倍かかるとしよう。すると 1 年に出せるトークン数も総費用も Y が 2 倍なので、費用あたりの処理量は両者で同じになる。

電力あたりで勝つことは、安く回せることをそのまま意味しない。性能の比を読むときは、何あたりで比べた値なのかを先に確かめる必要がある。

何が発表されたか

Jalapeño は OpenAI にとって初の独自シリコンである。重要なのは、OpenAI が過去の AI ワークロード向けの設計を転用せずに LLM(大規模言語モデル)推論のためにゼロから設計した点である。OpenAI によれば、同社はカーネル、メモリの動き、ネットワーク、モデルの配信パターンといった推論で効く部分に最適化した。狭い専用機という意味ではない。公式は「業界全体の現在・将来の LLM に対応する柔軟性」を掲げており2、ハードウェア責任者の Richard Ho も「非常に汎用的なデバイス」だと述べている3。8月に OpenAI のラボでベンチマークを回した SemiAnalysis も、OpenAI のモデル専用という見方を誤りとし、さまざまなモデルを動かせる汎用の推論チップだと書いている6。ただし OpenAI 自身も、新しいモデル系統ごとにカーネルとモデル別の最適化が要ると書いており、当初の生産計画に無かった公開モデル3種は、AI の助けを借りて2か月以内に高い性能まで持っていったとしている2。OpenAI は、初期設計から製造テープアウトまで約9か月で、その過程で自社の AI モデルの助けを借りたとしている。OpenAI 自身はこの期間について「高性能先端半導体で史上最速の ASIC 開発サイクルだと我々は考えている」と書き添えている(第三者検証ではなく自己申告)2。SemiAnalysis は起点をチームの採用開始に置いて約16か月と数え、テープアウトを2025年11月としている6。

数字は早期段階の主張として読むべきものだ。発表時点の現物は、ラボで動くエンジニアリングサンプルである(production target の周波数・電力で ML ワークロードを実行、GPT‑5.3‑Codex‑Spark を含む)2。発表時点で公式が挙げた性能に、他社チップとの比較値は無かった。公式ページは、「主要な AI アクセラレータ並みの電力と処理量に、専用の推論システムに近い遅延を」というくだりも、達成ではなく目標として書いている。

8月25日に OpenAI は最初の測定を公開した。SemiAnalysis の公開ベンチマーク InferenceX 上で NVIDIA の GB200/GB300 系に対し、各チップの公表定格電力あたりのピーク処理量が1.5〜1.9倍、エンドツーエンドの遅延が1.7〜3.6分の1だという2。ただし OpenAI はこの測定を自社のラボで行っており(SemiAnalysis は招かれて同社の技術者と共にベンチマークを回したと書いている)、比較相手は Blackwell 世代である。SemiAnalysis 自身は、HBM4 を積む Rubin 世代はすでに顧客へ出荷され始めている一方で Jalapeño はまだエンジニアリングサンプルの段階だとして、この比較を「不完全で不公平」と書き、比べるべき相手は Rubin だとしている。そのうえで同社は、NVIDIA と CoreWeave が7月に公表した Rubin の値と比べても、データセンターの電力1メガワットあたりの出力トークン数で Jalapeño が上回り、コストあたりではほぼ互角だと書く6。Jalapeño 側の値は投機的デコード(下書き用のモデルが候補のトークンを出し、本体のモデルがそれを検証する方式)を使っておらず、Rubin 側は使った値である。SemiAnalysis は、この方式が1トークンあたりの費用を3〜5分の1に下げるので、Jalapeño でも使えばさらに安く回せるとしている6。ただし SemiAnalysis によれば、数値は OpenAI が提供したもので、同社自身はラボで走行に立ち会って確かめたにとどまる。測ったのは単一ターンの 8k1k という設定だけで、長いコンテキスト・多ターンの AgentX の結果は見ておらず、対象のモデルも公開モデルの最前線のものではない(同社は、それでも小さなモデルではないと書き添えている)6。

約5割のコスト削減については、報道が伝える比較対象は「一般的な AI GPU」というだけで、測定指標もワークロードも示されていない。値そのものも、Broadcom の CEO が「初期サンプルで出ている」と述べたもので、確定値ではない。なお、この数字を語った Broadcom の Hock Tan は Reuters に対し、Jalapeño を NVIDIA の Blackwell と Google の TPU に並ぶものと位置づけているが、これも数値の無い当事者の発言である3。

初期展開と、本格的な立ち上がりの時期は別である。 初期展開が2026年末というのは公式の表現で、公式ページ上の Hock Tan(Broadcom CEO)自身も、Microsoft らとのギガワット級データセンターの展開を「2026年に開始する」と述べている2。だが同じ Tan が発表当日 CNBC には、2026年後半にあるのは「小規模な試作開発」で、本格的な立ち上がりは2027年、フル稼働は2028年前半だと語っている1。SemiAnalysis も、量産は2027年を通じて徐々に立ち上がり、出荷の大半は2027年末になる予定だと書いている6。2026年末に実機が広く回るという話ではない。

顔ぶれはすでに揃っている

自前チップは Jalapeño だけの動きではない。Google は2026年4月、第8世代の TPU で学習用と推論用をチップごと分離し、推論専用の TPU 8i を発表した(CNBC が報じた時点では両チップとも提供は年内予定で、出荷済みではない)。Microsoft は2026年1月に第2世代の AI チップを、Meta は Broadcom と複数版の AI プロセッサを開発中だと公表している。採用も広がっている。Citadel Securities が TPU を使う定量リサーチ用ソフトを作り、米エネルギー省の全17国立研究所が TPU 上の AI コサイエンティストを使っている。ここまでは Google の申告である。複数ギガワット分の TPU 利用を約束した Anthropic のほうは、Google の申告としてではなく CNBC が書いている4。Amazon は2025年末の re:Invent で Trainium3 UltraServers の提供を発表し、Amazon Bedrock の本番ワークロードがすでに Trainium3 上で動いていると書いている7。推論向けと学習向けを別のチップにする構成も Google が初めてではなく、Amazon は推論向けの Inferentia を2018年、学習向けの Trainium を2020年に発表している4。自前設計のアクセラレータで本番の推論を回すことは、もう構想ではない。

そのうえで、NVIDIA を置き換えた企業はまだ無い。第8世代 TPU を報じた記事は、Google が新チップを NVIDIA 製品と比較すらせず自社の前世代を基準に語っている(学習用は第7世代 Ironwood の2.8倍・同価格、推論用は80%向上という言い方である)ことを指摘し、巨大テック各社のいずれも NVIDIA を置き換えてはいない、と書いている4。これは Google に限らない。Amazon も Trainium3 UltraServers を前世代 Trainium2 比(演算4.4倍・電力効率4倍)で語り7、OpenAI は発表時、電力あたり性能が「現行の最先端より大幅に良い」と述べたが、比較の数値は出していなかった2。本稿が引いた3社のうち Google と Amazon は自社チップの性能を NVIDIA 製品との比較値では語っておらず(Amazon が GPU 比を出したのは顧客1社の事例だけである)、OpenAI が8月に出した比較値は自社ラボでの測定である。 SemiAnalysis は、複数の主要な公開モデルで、同社が試した NVIDIA・AMD・Google のどのチップも Jalapeño が上回ったと書くが、Jalapeño 側の数値は OpenAI が提供したものである6。Jalapeño を含む3社のチップを、第三者が自分で測って横並びで比べた材料は公開されていない。

しかも「推論特化チップ」は内製 ASIC の専売ではない。第8世代 TPU を報じた同じ CNBC 記事は、NVIDIA が新興の Groq との取引(CNBC の報道で200億ドル)で得た技術をもとに、モデルがユーザーの問いへ素早く応答できるシリコンを準備していると書いている。NVIDIA によれば、その Groq 3 LPU は SRAM を大量に積む4。ただしこの取引は会社ごとの買収ではない。NVIDIA の Jensen Huang は社内メールで「Groq の IP をライセンスし人材を迎えるが、会社としての Groq を買収するわけではない」と書いており、Groq 側も非独占のライセンス契約だと説明している(CNBC は資産の取得と報じており、呼び方は当事者側と一致していない)8。NVIDIA 自身も2026年2月提出の年次報告書で、非独占ライセンス契約と一部従業員の雇用であって顧客契約・既存製品・持分は取得していないこと、対価はクロージング時の130億ドルと1年以内に支払う40億ドル(帰属利息込み)であることを開示している8。その Groq 3 の LPX ラックについて、NVIDIA は8月24日にフル生産中だと発表し、同社の Dion Harris は「GPU を置き換える話ではなく、ワークロードの部分ごとに適した価格と処理装置を使う話だ」と述べている9。

自前チップを持つ側も、他社のアクセラレータを使い続けている。Jalapeño を発表した OpenAI は AWS の Trainium、AMD、Cerebras とも契約しており、CNBC はその理由を「需要の爆発で先端シリコンの供給元が他にも要る」からだと書いている1。OpenAI 自身も8月の測定結果の中で、学習・推論とも NVIDIA ほかのアクセラレータを引き続き広く展開すると書いている2。Amazon も2025年末の re:Invent で、Trainium3 と並べて NVIDIA GB300 を載せた新インスタンスを発表している7。推論への傾斜は、NVIDIA から離れる動きと同義ではない。

「推論が2/3」は「GPUの置き換え」を意味しない

この流れの背景としてよく引かれるのが、AI 計算に占める推論の割合が2023年の約3分の1、2025年の約半分から2026年に約3分の2へ達するという Deloitte の予測だ5。Deloitte がこの推移に付けている出典は、推論チップを手がける SambaNova の CEO の寄稿で、2023年と2025年の比までは書くが、2026年の割合を数値では示していない。約3分の2は Deloitte 自身の数値化である5。だが、この数字を出した記事そのものの主題は「AI の次の局面は、より少ない計算力ではなく、より多くの計算力を要するだろう」である5。

同記事はまず、推論への移行は「推論だけに最適化した(おそらくずっと安い)チップ」を要し、それが巨大データセンターの外のエッジ機器に載るので、データセンターは小さく少なくて済み支出も減るのではないか、という読みを紹介する。記事のリード文は、このうち「より多くのエッジ計算」と「より少ないデータセンター計算」の二つに対して「2026年にはどちらも起こりそうにない」と断じている。ただし同記事は結びの節で、推論向けチップとエッジ処理はどちらも伸びそうだと書く一方で、大規模データセンターへの投資も引き続き要るとしている5。推論特化チップの市場は2026年に500億ドル超へ伸び、各社の推論向け ASIC の設計・製造・展開はすでに起きている、と同記事は認める。そのうえで、計算の大半は依然として、2000億ドル超の高価で電力を食う最先端 AI チップの上で実行されるとする。同記事によれば、そのチップが載るのは主に大規模データセンターと企業のオンプレ機材で、エッジ機器のチップの上ではない。市場は「どちらか」ではなく「両方」になりそうだ、というのが結論だ。「推論向けに最適化」が低消費電力を意味するとも限らず、推論のうちプリフィル(プロンプトを処理する段)向けに最適化し、HBM の代わりに GDDR7 を使う製品がラック1本あたり370 kW(同じ供給元の学習向け版の約3倍の電力密度)を要する例も挙げている5。

つまり、内製 ASIC の顔ぶれが増えることと、最先端 GPU の需要が減ることは、同じ話ではない。本稿が引ける範囲で確かなのは、推論の載る先が単一ベンダーの GPU だけではなくなったということまでだ。


出典9件
  1. CNBC「OpenAI unveils first chip as part of Broadcom deal in effort to ‘build the full stack’」2026. https://www.cnbc.com/2026/06/24/openai-and-broadcom-reveal-jalapeno-first-ai-chip-in-partnership.html — 6/24。2025年10月の計画公表、Tan の語る2027年の本格化、AWS・AMD・Cerebras との契約。 ↩ ↩2 ↩3

  2. OpenAI「OpenAI and Broadcom unveil LLM-optimized inference chip」OpenAI Blog, 2026. https://openai.com/index/openai-broadcom-jalapeno-inference-chip/ — LLM 推論向けの設計、9か月のテープアウト(自己申告)、2026年末の初期展開。8/25 の続報は自社ラボで測った GB200/GB300 比。 https://openai.com/index/jalapeno-first-results/ ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9

  3. Cris Tolomia「OpenAI unveils first custom-built AI chip designed with Broadcom」Quartz, 2026. https://tech.yahoo.com/ai/articles/openai-broadcom-jalape-o-custom-134833690.html — 約5割のコスト削減は Broadcom CEO の発言。比較対象は一般的な AI GPU とだけあり、指標は無い。 ↩ ↩2 ↩3

  4. CNBC「Google unveils chips for AI training and inference in latest shot at Nvidia」2026. https://www.cnbc.com/2026/04/22/google-launches-training-and-inference-tpus-in-latest-shot-at-nvidia.html — 4/22。TPU 8i(年内提供)と各社の自前チップ。どの社も NVIDIA を置き換えていないと書く。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  5. Deloitte「Why AI’s next phase will likely demand more computational power, not less」Deloitte Insights, 2025. https://www.deloitte.com/us/en/insights/industry/technology/technology-media-and-telecom-predictions/2026/compute-power-ai.html — 推論が2026年に計算の約3分の2という予測と、データセンター縮小の否定。後段は推移の出典の寄稿。 https://www.weforum.org/stories/2025/01/scaling-ai-without-breaking-the-grid/ ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6

  6. SemiAnalysis「OpenAI Jalapeño: Better Than Nvidia Blackwell」2026. https://newsletter.semianalysis.com/p/openai-jalapeno-better-than-nvidia — 8/25。OpenAI のラボで InferenceX を回した記事。Rubin とも比べ、数値は OpenAI 提供・8k1k のみ・AgentX なしと留保する。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7

  7. Amazon「Frontier agents, Trainium chips, and Amazon Nova: key announcements from AWS re:Invent 2025」2025. https://www.aboutamazon.com/news/aws/aws-re-invent-2025-ai-news-updates — Trainium3 の前世代比、Bedrock の本番稼働、GB300 との併存。 ↩ ↩2 ↩3

  8. David Faber「Nvidia buying AI chip startup Groq’s assets for about $20 billion in its largest deal on record」CNBC, 2025. https://www.cnbc.com/2025/12/24/nvidia-buying-ai-chip-startup-groq-for-about-20-billion-biggest-deal.html — 200億ドルは投資家の発言で、当事者は非独占ライセンスと説明。後段は 10-K。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1045810/000104581026000021/nvda-20260125.htm ↩ ↩2

  9. Kif Leswing「Nvidia says Groq racks will be online this year following $20 billion purchase」CNBC, 2026. https://www.cnbc.com/2026/08/24/nvidia-says-groq-racks-will-be-online-this-year-after-20-billion-deal.html — Groq 3 LPX ラックのフル生産と、Dion Harris の「GPU の置き換えではない」。 ↩

この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。