AI・信頼性・評価
OpenAIが単位距離予想を反証、数学者はAIの証明をどう検証したか
- 単位距離予想
- 数学
- 組合せ幾何
- OpenAI
- ライデン宣言
- 非ソフィック群
- Lean
- Astra
- 反例
- プレプリント
- 査読
- 先行研究
- 形式化
- 代数的整数論
- 帰属
- 消化版
- 国際数学連合
- 四色定理
- 和積予想
- Thompson群
- Leavitt代数
- 合成の誤謬
目次
数学の結果は、答えらしきものが出た時点では完成しない。それが本当に正しいのか、すでに知られていることの言い換えではないのか、他人が読んで検証し使える形になっているのか。こうした確かめを通り抜けて、はじめて世に流通する。人が出した答えも機械が出した答えも、同じ関門をくぐる。だから見るべきものは、出力そのものの見事さではなく、その後に誰が読み、どこを直し、どれだけの時間で決着したかのほうだ。そこには、機械が担った部分と人が担った部分の境目が残っている。発表の瞬間だけを切り取ると、この境目は見えなくなる。本稿は、2026年5月にOpenAIの社内モデルが出した単位距離予想への反例と、同年8月に同社が発表した10件の解法を例に取る。
機械が出したものは、どの工程を通って数学になるのか。発表の前後で実際に動いた手数を追う。
見るべきは、外から確認できないモデルの性能ではない。工程のほうだ。 人が消化した版が出たか、数学者が先行研究への帰属を特定したか、訂正が入ったか。この工程は二度、同じ形で動いた。5月、OpenAIの社内モデルが単位距離予想を崩す具体例、つまり反例を出した。OpenAIがそれを発表した日に、9人の数学者が「短く消化され、人手で検証された版」を発表し、元の議論がどの先行研究に依拠しているかを特定した。そのなかにはAIの論文が引いていなかったものもある1234。8月、OpenAIが未解決問題への解法をまとめて発表すると、数学者フランチェスコ・フルニエ=ファチオが数日のうちに見出しの結果の別構成を出し、あわせて、「10年間進展がなかった」という発表時の主張が直後に発表文から消えたことを記録した5。その間の6月には、国際数学連合が支持する「ライデン宣言」が、この種の発表をどう扱うべきかの規範を先に文書化していた6。発表は一点だが、数学になる工程はその前後に広がっている。
指数のわずかな差は、点の数が増えるほど開く
※ この節の数値は説明のための仮定で、測定値ではありません。
平面上にn個の点を置き、距離がちょうど1になる点の組がn^(1+ε)組あるとする。1組は2点に数えられるので、1点あたりの平均の相手の数は2n^εになる。ε=0.01とすると、n=10^6では2×10^0.06≈2.3、n=10^12では2×10^0.12≈2.6、n=10^100では2×10^1=20になる。
この計算から、次の二つがわかる。
- εが小さいと、点を100万個置いても1点あたりの相手の数は2をわずかに超えるだけで、εが0のとき(相手はちょうど2)と見分けにくい。
- それでも差はnとともに限りなく開く。どのεについてもnが十分大きければ超えられないのか、ある固定のεについて超え続ける列があるのかは、有限個の配置を数えるだけでは決まらない。
五月に起きたこと
単位距離予想はエルデシュが提起した組合せ幾何の問題だ。この予想は、平面上にn個の点を置いたとき、距離がちょうど1になる点の組の数が、nが十分大きければn^(1+ε)を超えない、とする。ここでεは、どれだけ小さくてもよい任意の正の数である2。数学者ギル・カライはブログに、OpenAIの社内モデルがこの予想への反例を見つけたと書いた。その反例は、ある固定された正の数 ε について、点の数nがいくらでも大きくなる配置の列で、どの配置も単位距離をn^(1+ε)個以上持つものである12。
カライはこの構成が代数的整数論に依拠していると書いた。代数的整数論は、整数を一般化した「代数的整数」の性質を用いて数の構造を調べる数学の一分野である。「これは本当に驚くべきことだ。構成は代数的整数論に依拠している」と述べ、この結果は「1976年のアッペルとハーケンによるコンピュータを使った四色定理の証明と同じく」、「組合せ論を超え、数学そのものを超えた重要性を持つ科学的な画期になりうる」とも書いている1。もっともカライ自身は、自分の記事に付いた質問への返信で、1976年の四色定理からの50年を振り返って「純粋数学におけるコンピュータの役割はいまだかなり限定的だ」とも書いている1。
9人の数学者が2026年5月20日、OpenAIの発表と同じ日にプレプリントを投稿した23。本稿はここを、この反例が数学として流通し始めた地点と見る。もっとも、人間の手が入り始めるのはここからではない。同論文の脚注1は、「AIの証明」と呼ばれるファイルが「OpenAIの社内モデルによってまず一発で数学的に生成され、その後 Codex との人間のやりとりを通じて説明の面で整えられた」ものだと断っている2。このファイルは、公開される前にすでに人の手を経ている。プレプリントとは、専門家が行う事前検証(査読)を経る前に公開される論文原稿を指す。論文の要旨は自らの仕事をこう説明する。「OpenAIが生成した単位距離予想への反例の、短く消化され、人手で検証された版と、それについての一連の考察を提示する」2。カライはこの論文について、証明が「提示され、説明され、論じられている」と書いている1。
発表の前から、人の読みは動いていた。共著者のダニエル・リットは、モデルが解を出したあとOpenAIの研究者から正しさの確認を頼まれたと書いている2。頼まれたのは、使われている代数的整数論に彼がなじんでいるという見込みからで、解が正しいと自分で納得するのに長くはかからなかったという2。発表ページは公開の時点で外部の数学者による確認が済んでいたと書き、9人の論文を付随する論考としてリンクしている3。共著者のティモシー・ガワーズは、AIの論文が人の書いたものとしてAnnals of Mathematicsに投稿され、自分が手短な意見を求められていたなら、迷わず採録を勧めただろうと書いている2。
「消化した版」という仕事
「短く消化され、人手で検証された」という表現は、具体的な作業を指している。他の数学者が読んで使えるところまで、議論を短くし、読める形に書き直す仕事だ。9人自身は自分たちの版を「人間が消化し、いくらか簡略化し、いくらか一般化した版」と呼んでいる。9人は議論を短くしただけでなく、より広く通用する形に直してもいる2。その作業量については、共著者のメラニー・マチェット・ウッドが具体的な見立てを書いている。この論文に集まった水準と種類の専門知が一か月前に反例探しへ動員され、ChatGPTの解を読んで考えるのに掛けたのと同じだけの時間を注いでいれば、数学者たち自身が反例を見つけていただろう、と2。同時に彼女は、ChatGPTの主張がなければ、誰も反例を探そうとはしなかっただろうとも書いている2。ウッドは続けて、この結果は、AIが証明したと主張して誤っていた回数までは見せてくれない、とも指摘する2。そのうえで彼女は、多くの場合AIにとっては正しい数学的議論を組み立てるより人間に証明があると納得させるほうが易しいだろうし、数学者の側はその備えが十分ではない、と書く2。
9人の論文はさらに、この議論がどの先行研究に依拠しているかを特定している。要旨は「この議論は、少なくとも振り返ってみればEllenberg-Venkatesh、Golod-Shafarevich、Hajir-Maire-Ramakrishnaに帰属しうるアイデアに決定的に依拠している」と書く2。ウッドは、なぜ特定が必要だったのかまで書いている。「この展開から直接に生じるもう一つの懸念は、文献に密接に関連するアイデアの歴史があり、その一部は上に挙げられているにもかかわらず、ChatGPTの論文で適切に参照されていないことだ」。ウッドの指摘はこうだ。数学者の職業規範は影響を受けた先行研究を引くよう求めるので、人間が同じ議論を出して先行研究を引かなければ、その研究を知らずに独立に思いついたのだと推定される。だがChatGPTはある意味ですべての先行研究に「馴染んでいる」ので、同じ推定が働かない2。ここで彼女が使う語は「適切に参照されていない」であって、参照が皆無だという意味ではない。AIの論文はGolod-ShafarevichとHajir-Maire-Ramakrishnaを、本文でも参考文献でも引いている4。要旨が挙げた三つのうち引かれていなかったのはEllenberg-Venkateshで、9人は自分たちの補題2.2が、Ellenberg-Venkateshの論文に記録された着想に沿うものだと本文に書いている2。後で見るライデン宣言が脅威として名指しする帰属の失敗は、ウッドの指摘とAIの論文の参考文献を突き合わせると、この一点で実際に起きている24。要旨の「少なくとも振り返ってみれば」という留保は、三つの帰属関係が最初から自明だったわけではないことを示している。
要旨には、証明が正しいと宣言する文はない。だが要旨で止めると読み違える。9人は§1.4で「§2でTheorem 1.1 の完全な証明を与える」と書き、§2で実際に与えている2。共著者のトーマス・ブルームは、より踏み込んで書く。「この証明の一側面は見落とされるべきではない。AIが生み出した元の証明は完全に妥当だったが、OpenAIの人間の研究者と本論文に関わった多数の数学者によって大幅に改善された。人間は依然として、この証明を議論し、消化し、改善し、その帰結を探ることにおいて不可欠な役割を果たしている」2。
ただし同じ9人論文のなかでガワーズは、5月の反例を、少なくとも自分の数学的界隈では有名な未解決問題が「訓練を終えて問題を与えられたあと、人間の介入なしに」AIによって解かれた最初の例だと書いており、工程を強調する本稿の読み方と緊張する2。ガワーズが言うのはモデルが解を出す段階のことで、本稿が見るのはその後に人が確かめ、消化して公開する段階のことだから、両者は事実としては両立する。違うのは、「解いた」をモデルの出力の時点で数えるか、人が消化して流通し始めた時点で数えるかである。
消化の工程が回る条件は、原典自身が名指ししている。ヴィクター・ワンは、完全な議論が数ページに収まったことが検証をなめらかにしたと書く2。そのうえで、消化版がもう少し長ければ、参加者が細部の検証に時間を割く気にならず、工程はより厄介になっただろうと述べる2。5月の9人論文でいう検証は人手による読みであり、形式化については、ワンが「形式化がAIと並んでどう進むかは興味深い」と続ける一文があるにとどまる2。
五月の後も、人と機械の仕事は続いた
5月の結果の後、カライの記事には追記とコメントが重ねられ、そこには人と機械の両方の仕事が続いた跡が残っている。ソーウィンは下界 n^1.014 を証明し、同じ論文でこの手法が届く限界 1.2143 も示した1。その下界を n^1.0318 へ押し上げたのは、ChatGPTを使った最適化だった。エルデシュ問題の議論の場では、その値を載せた投稿にソーウィン本人が返信し、複数の人が同じ着想で近い値を得たことを認め、プロンプト一つでほぼやりとりなしにできたことに驚いたと書いている7。同じ投稿でソーウィンは、自分の論文ではLLMにコードを書かせてパラメータの値を探索させる手を使わなかったと書き、理由の一つに、人がしたこととAIがしたことの境目が濁ることを挙げている7。アンスロピックも、自社のシステムが最も強い形の単位距離予想を自律的に反証したと報告した1。OpenAIの単位距離予想への反例に触発されて、ブルーム、ソーウィン、シルトクラウト、ジェレゾフがエルデシュ=セメレディの和積予想を実数について反証した8。その論文は、GPT-5.5 Proを初期の壁打ちに使ったが、補題一つの提案を除いて最終的な証明と主要なアイデアはほぼ全て人間が生成したと自ら申告している8。一つの結果が公開されたあと、人の仕事も機械の仕事も止まらずに続いている。
八月、同じ工程が二度目に動いた
数学者フランチェスコ・フルニエ=ファチオが8月3日に投稿したプレプリントは、こう記録している。「2026年8月1日、OpenAIは数学の10件の主要な未解決問題への解法を発表した」5。彼は発表の前日に早期版を読み、発表当日の夜に最初の版を自分のページに出している5。
フルニエ=ファチオはこの発表から2日のうちに、見出しの結果の一つについて別の構成を発表した。対象は非ソフィック群の構成だ。ソフィック性とは、群の元同士の掛け算の関係を、有限個の要素からなる対称群の演算で近似できるという性質を指し、この性質を持たない群を非ソフィック群と呼ぶ。ソフィック性を持たない群が存在するかという問いはGromovとWeissに帰属する5。フルニエ=ファチオによれば、OpenAIの証明はProposition 1.2をThompson群Vと二進Leavitt代数上の基本行列群に適用するものだったが、フルニエ=ファチオは自らの目的をこう書く。「解の理解を深め、証明の各部分が果たす役割を理解するために、Leavitt代数を一切使わずに非ソフィック群を構成する方法を、Proposition 1.2を使ったまま示す」5。
彼は自分の構成について慎重な言い方をする。「この証明がより易しい、より優れている、あるいはより初等的だとは主張しない。私にとってより自然だというだけで、7月30日の時点で自分がすでに知っていたことしか使っていない」5。同じ一文の括弧で、Leavitt代数とThompson群の関係のほうは、OpenAIの最初のドラフトを読んで知ったとも書いている5。彼が示したのは、有限表示された捩れのない非ソフィック群だ(定理1.3)。一方で彼は、新規性の所在を具体的に特定してもいる。自らの構成は小消約理論の「かなり標準的な議論」だとしたうえで、だからこそ「Proposition 1.2 が [Ope26] における鍵となる新規性だと私には思われる」と書き、こう続ける。「この種のことではよくあるように、新規性は証明よりもむしろ言明のほうにある(証明のほうも依然として巧妙で技術的だが)。[KT19] を知る専門家ならおそらくProposition 1.2を証明できただろうが、この言明を思いつかなかったかもしれない」5。理由も添えている。[KT19]を強める言明は無数にあり、その多くは偽か、真でも使い道がないという5。そのうえで、AIモデルは時間と資源の制約に煩わされないので、手当たり次第に投げて当たるものを見ることができる、と述べる5。
訂正も工程のうちだ
フルニエ=ファチオの論文は、最初の版の1ページ目に、OpenAIの発表への訂正を三つ並べている。一つ目は進展の有無についてだ。OpenAIは8月1日の発表で、対象とした主結果について「少なくとも10年間、進展がなかった」と主張していた。この主張は8月3日付けで削除された、と論文は書く(原典の語は redacted で、記載から削除されたという意味である。撤回声明が出たわけではない)。「8月1日のOpenAIの発表における『主結果について少なくとも10年間進展がなかった』という主張とは対照的に、この主張は8月3日に削除された」5。彼がこの記述を置いたのは、OpenAIの証明の鍵となる命題がKun (2016) と Kun–Thom (2019) の仕事の上に決定的に立っていると書いた、その一文の脚注としてである。「10年間進展がなかった」を覆したのは、この二つの先行研究だ。発表ページの保存版でも、8月1日の版にあった「少なくとも10年」の句は、8月3日の版では「長年の未解決問題を解くか大きく前進させる」という書き方に替わっている9。残る二つは、問題の呼び方と命題の書き方に向いている。二つ目は、OpenAIがこの問題を「soficity conjecture」と呼んだ点についてで、著者は、すべての群がソフィックだと予想されたことはないと書く5。三つ目は、OpenAIの命題が明示的に置く「有限生成」という仮定は、性質(T)を持つ群であれば自動的に従う、という技術的な訂正である5。
フルニエ=ファチオはこの論文自身も、8月14日に改訂している。最初の版に寄せられた複数のコメントを受けた改訂で、Leavitt代数とThompson群の関係の初出をBirgetとNekrashevychに帰する一文を足した5。同時に、上の二つ目と三つ目の訂正と、その関係を最初のドラフトで読んで知ったという句は、本文から落ちている5。v2 の謝辞で著者は、引用の欠落の指摘を含む複数のコメントが論文を大きく改善したと書き、それを数学をする過程の本質的な部分と呼んでいる5。彼はさらに、それが可能なのは著者が名指され、誰でも連絡できるメールアドレスを載せているときだけだと書き、脚注でOpenAIの発表と比べるよう促している5。訂正を記録した側が、同じ工程を受ける側へも回っている。
六月に、規範は書かれていた
OpenAIの8月の発表に先立つ6月2日、「人工知能と数学に関するライデン宣言」が公表された6。この宣言は国際数学連合(IMU)の支持を受けており、サイトはIMU副会長Ulrike Tillmannの推薦文を掲載している。署名者数は2026年8月7日時点で3,461人だった(トップページは直近の24人を表示し、全署名者の一覧へのリンクを置いている)6。
宣言はこの種の出来事に関わる脅威を名指ししている。一つは、「現在の自動化技術は、もっともらしいが信頼できない、あるいは誤った議論を生成しうるが、それは正しい数学的証明と見分けがつきにくい」という点だ6。宣言は、これが非形式的な議論だけでなく形式化にも当てはまり、難しさは計算機向けの表現と人向けの表現のあいだの翻訳にあると続ける6。もう一つは、査読を経る前に、プレスリリースやブログ記事を通じて結果が発表される点だ6。宣言は、そうした報道が自動化ツールの意義を過大に見せ、それを可能にした先行する人間の貢献を過小に見せると書く6。三つ目は帰属の失敗で、公開された研究で訓練されたモデルが、出典を適切に引用しないまま出力を生成する点だ6。
宣言は数学者に向けて、「議論と結果の正しさおよび妥当性についての責任は、そして関連する先行研究への引用の完全性と正確性についての責任も、もっぱら人間の著者に残る」と勧告し、自動化ツールの使用を透明に開示するよう求める6。後半は、本稿が読み方の柱に挙げた「帰属の特定」そのものだ。数学の組織や非営利の研究資金提供者に向けては、「数学的な結果は、学術誌や会議録、書籍のような査読を経た媒体で発表され続けることを要求せよ」と勧告する6。政策立案者に向けては「誇大宣伝を信じるな」と述べ、企業のプレスリリースに頼るのではなく数学者に相談するよう勧める6。宣言には商用AIに宛てた第四の節もあり、商用AIの能力を宣伝するために数学が使われることを名指ししている6。
8月1日のOpenAIの発表ページは、数学におけるAIの影響を懸念する人々に深い敬意と理解を表し、そこにこの宣言の署名者を名指しで含めている9。同じ節は、帰属は結果がどう生み出されたかを正直に反映すべきだとし、AIが全て生成した証明を人の著作だと称すれば、システムの寄与も人の知的な仕事の性格も偽ることになると書く9。ただしこの帰属はAIと人の寄与の分け方についてのもので、宣言が求める関連する先行研究への引用とは向きが違う96。
外から確かめられないもの
ゲアリー・マーカスは8月2日、自身のブログでこの発表を論じた。彼は、ある種の数学での成功が全ての領域での卓越性を意味すると仮定する評者たちの姿勢を、合成の誤謬だと述べる10。合成の誤謬とは、部分について成り立つことが全体についても成り立つと誤って推論することである。
マーカスが紹介するアーニー・デイヴィスの指摘によれば、10件の問題が選ばれるまでに何件の予想が試みられたかについての透明性がない。その分母がわからなければ、適切な評価はできない10。デイヴィスはまた、OpenAI が自ら掲げる計算コスト2,000ドルという数字(デイヴィスの原文は brags loudly)について、「これはAstraが成功した予想だけを含み、失敗した予想は含んでいないと見るのが安全な賭けだろう」と書く。分母の話のコスト側だ。そのうえで、関わった「高給の数学者やコンピュータ科学者の給与」が算入されていない点を指摘し、見積りをこう置く。「2万ドルを下回れば私は驚く。20万ドルを上回っても驚かない」10。この2,000ドルは第三者が報じた値ではなく、OpenAIのグレッグ・ブロックマンが8月1日の投稿で「Sol API価格でおよそ2,000ドル」と掲げた概算であり、本稿はこれを独自に検証していない10。
マーカス自身は、「249ページの論文」に、モデルがどう動くか、証明がどう検証されたか、人間がどんな役割を果たしたか、提案された証明に誤りがあったかどうかについて「1ページも書かれていない」と書く10。最後の項目は、本稿の「訂正」と同じではない。本稿が追えた訂正は発表文の主張、問題の呼び方と命題の書き方、引用に入ったもので、証明そのものに誤りが見つかった記録ではない。マーカスは、論文だけでなく前日の発表のツイートとブログ記事も、どう達成されたかについて何の情報も与えていないと書く10。だが8月1日の発表ページ自体は、解法の議論を人が同じモデルとともに原稿にまとめ、その後モデルが各議論をLeanで形式化した(証明を機械が検査できる形に書き直した)と書き、原稿と証明の正しさに責任を負うと述べている9。この発表が対象とするのは社内版のモデルで、一般には公開されていない10。マーカスは、Astraの証明の書きぶりが証明の中身に見合っていないようだ、とも指摘する10。彼が引くヘンリー・ユエンは、同じ発表の別の結果について、この証明の書き方には失望したと述べている10。この二つは公開された文章についての評価であり、外から原文に当たって確かめられる。マーカスはこうも書く。「非常に印象的だ。だが Astra が、ASI はおろか AGI だと考える理由すら何一つ見当たらない」10。数学、少なくともある種の数学については卓越しているように見えるが、それは他の領域での信頼性を意味しない、というのが彼の論旨だ10。なおOpenAIの発表ページ2本は本稿の取得では403を返したが、Internet Archiveの保存版で本文を確かめた39。5月の技術論文はcdn.openai.comから取得できるPDFを参照している4。
出典10件
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Gil Kalai「Amazing: Erdős’ Unit Distance Problem was Disproved! It was achieved by AI!」Combinatorics and more, 2026. https://gilkalai.wordpress.com/2026/05/21/amazing-erdos-unit-distance-problem-was-disproved-it-was-achieved-by-ai/ — 数学者の個人ブログ。反例を紹介し、追記とコメント欄に後続の結果が続く。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
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Noga Alon ほか9名「Remarks on the disproof of the unit distance conjecture」arXiv:2605.20695, 2026. https://arxiv.org/abs/2605.20695 — 査読前のプレプリント。AIの反例を短く消化し人手で検証した版と、共著者それぞれの考察を載せる。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20 ↩21 ↩22 ↩23 ↩24
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OpenAI「An OpenAI model has disproved a central conjecture in discrete geometry」発表ページ, 2026. https://web.archive.org/web/20260520193524id_/https://openai.com/index/model-disproves-discrete-geometry-conjecture/ — 5月20日の発表の保存版。外部の数学者が証明を確認し、付随する論考を書いたと述べる。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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OpenAI「Planar Point Sets with Many Unit Distances」技術論文, 2026. https://cdn.openai.com/pdf/74c24085-19b0-4534-9c90-465b8e29ad73/unit-distance-proof.pdf — AIが出した証明で査読前。Golod-ShafarevichとHajir-Maire-Ramakrishnaを引き、Ellenberg-Venkateshは引かない。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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Francesco Fournier-Facio「A torsion-free non-sofic group」arXiv:2608.02025, 2026. https://arxiv.org/abs/2608.02025 — 査読前のプレプリント(v1は8月3日、v2は8月14日)。Leavitt代数を使わない別構成と、OpenAIの発表への訂正を載せる。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17
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「Leiden Declaration on Artificial Intelligence and Mathematics」2026. https://leidendeclaration.ai/ — 6月2日公表の宣言文で、国際数学連合が支持する。脅威を名指し、数学者・組織・政策立案者・商用AIへの勧告を並べる。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13
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Erdős Problems「90 Discussion Thread」2026. https://www.erdosproblems.com/forum/thread/90 — 単位距離問題の議論の場。5月21日にWill Sawinが、ChatGPTで得た下界の値の投稿に返信している。 ↩ ↩2
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Thomas F. Bloom ほか「The sum-product conjecture is false for real numbers」arXiv:2605.28781, 2026. https://arxiv.org/abs/2605.28781 — 査読前のプレプリント。OpenAIの反例に触発されたと書き、AIの使い方を自ら申告する。 ↩ ↩2
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OpenAI「Ten advances in mathematics and theoretical computer science」発表ページ, 2026. https://web.archive.org/web/20260801090839id_/https://openai.com/index/ten-advances-in-mathematics/ https://web.archive.org/web/20260803065650id_/https://openai.com/index/ten-advances-in-mathematics/ — 8月1日と8月3日の保存版。工程の自己記述があり、「少なくとも10年」の句は3日の版で消えている。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
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Gary Marcus「OpenAI’s amazing — but vastly oversold — new model Astra」本人のブログ, 2026. https://garymarcus.substack.com/p/openais-amazing-but-vastly-oversold — 8月2日の意見記事。Ernie Davisの指摘と、Greg Brockman・Henry Yuenの埋め込み投稿を含む。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11
この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。