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AI・信頼性・評価

ヤコビ予想が3次元で崩れた、AIが強いのは反例の発見

2026/7/31 (更新: 2026/8/11)

目次
【課題】87年の予想が3次元で崩れたAIが数学を解いたのか【手段】反例は一つでよく確認も容易だ普遍命題の証明は同じではない
※概念図(課題→手段):反例の発見と証明は別の作業だ
要点

2026年7月20日、1939年から開いていたヤコビ予想が3次元で偽だと公表された。Taoの整理によれば、反例は複素3次元空間から複素3次元空間への7次の多項式写像で、ヤコビ行列式は定数 −2、それでも3つの相異なる点が同じ像を持つ1。3次元が崩れたので2より大きいすべての次元が崩れ、2次元は未解決のまま残る1。ただし、この結果の要点は数学の中身ではなく探索の難しさにある。Leeが書くように、反例そのものはX投稿1つに収まる短さで、難しさは複雑な構成でも長い証明でもなく、巨大な探索空間の歩き方を見つけることにあった「ようだ」2。示すべき対象は1つだけで、正しさは厳密かつ安価に確かめられる——この非対称を骨格に据えるのは本稿の整理だが、Buzzard自身も同記事のコメント欄で、予想は「すべての」命題、その反証は「存在する」命題だと述べている3。ただし検証が安いことは、当たりを引きやすいことを意味しない。Taoは、この反例が総当たりで見つかるとは考えにくいと見積もっている1。Buzzardは非形式なAI生成証明を読むことを拒み、Leanでの形式検証を求めてもいる3

何が崩れたのか

ヤコビ予想は1939年に立てられた。複素数を係数とする多項式だけで書かれた、n次元からn次元への写像 F を考える。この写像のヤコビ行列とは、各成分を各変数で偏微分した値を n×n に並べた行列で、その行列式をヤコビ行列式と呼ぶ。予想の主張は短い。ヤコビ行列式が至るところ同じゼロでない定数になるなら、F は大域的に可逆だろう、というものだ。可逆とは、相異なる点が必ず相異なる像に写り、逆向きの写像も多項式で書けることを指す。

2026年7月20日、この予想が3次元で偽だと公表された。Taoは翌21日のブログで反例を整理している。それは複素3次元空間から複素3次元空間への7次の多項式写像で、ヤコビ行列式は定数 −2 である1。それでも大域的には可逆でない。Taoが挙げる衝突は3点だ。F(0,0,−1/4) = F(1,−3/2,13/2) = F(−1,3/2,13/2) = (−1/4,0,0) となり、相異なる3点が同じ1点に写る1。可逆性が破れていることは、この等式に代入すれば確かめられる。Speyerも同じ写像を「generically three to one, not bijective」——一般の点の上には3つの点が乗り、全単射ではない——と説明している4

次元ごとに状況は分かれる。1次元では容易に示せ、2次元は未解決のまま残るとTaoは書く1。3次元の反例には恒等的な座標を付け足せるので、2より大きいすべての次元でも予想は偽になる。崩れたのは予想の大半だが、2次元には手が付いていない。

難しかったのは証明ではなく探索

Monash大学のLeeがThe Conversationに書いた解説記事——研究論文ではなく、専門家による報道記事である——が、この件の性格を伝えている。反例を見つけたのは、AI企業 Anthropic に所属する数学者 Levent Alpöge で、同社の Claude Fable 5 を使った。発見者はモデルの提供元の従業員である。見つかった反例は「X投稿1つに収まる短さ」だった2

Leeは、最近の他の多くのAI支援の成果と違って、この反例そのものは際立って単純だと述べる。困難は入り組んだ構成にも長い証明にもなく、正しい性質を持つ1つを取り出すために、可能な多項式写像からなる巨大な探索空間をどう歩くかにあった「ようだ」と書く2これは彼女の見立てである。同じ記事は、7月22日の執筆時点で Alpöge がどうプロンプトを与えたかは公表されていないと明記しており、過程が分からない以上、難しさの所在は推測にとどまる2

もっとも、難しさが探索にあること自体は、反例が出る前から予想の性格として認識されていた。Leeは、ヤコビ予想が興味深い理由の一つは「理論上は反例を見つけるのが容易なはずだ」という点にあるとし、点を重ねる写像の例を作るのも、ヤコビ行列式が定数になる多項式写像の例を作るのも容易だが、両方を同時に満たすものを見つけるのが難所だと書く。2017年のMath Stack Exchangeの投稿から「知る限り、賢い学部生が式をひとつ書くだけで、この予想の反例になりうる」を引いてもいる2。探索の難しさについては、Taoが反例の形を数え上げたうえで、こうした多項式が総当たりで見つかるとは考えにくいと見積もっている1

反例は一つ挙げれば済む

反例を出す行為は、存在命題の主張だ。「そのような対象が少なくとも1つある」と言えばよく、示すべきはその1つが条件を満たすことだけである。今回は多項式の偏微分と代入で済む。これに対して普遍命題は「すべての対象について成り立つ」と言う。ヤコビ予想そのものが普遍命題で、1例を見せても終わらない。

同じ予想の歴史が、この非対称を実演している。Leeによれば、ヤコビ予想には Beniamino Segre や Wolfgang Gröbner ら20世紀の著名な数学者による証明の主張が繰り返し出されたが、そのいずれにも後から微妙な誤りが見つかって議論は無効になった2。一方で今回の反例のほうは、短いがゆえに他の数学者がすぐ検証できた2

この非対称は機械に向いている——ただし向いているのは検証の側である。候補を厳密な検査にかけ、通らなければ捨てる。検査が厳密で安いなら、生成側がどれだけ外しても最終的な結論の正しさは揺るがない。逆に、検査が安いことは、当たりを引きやすいことを何も意味しない。Taoはこの反例について、7次の写像ならヤコビ行列式は本来18次までの多項式になりうるので、非定数項がすべて消えるのは1329本の方程式が同時に成り立つことに等しく、これは3次元の7次多項式写像がもつ360の自由度よりはるかに多い、と見積もる。ゆえに、このような多項式が総当たりで見つかるとは考えにくい1。安い検証は必要条件であって、十分条件ではない。

Buzzardは2026年7月20日のブログで、AIが短期間に長年の予想を次々と反例で覆した経過を並べている3。登場するのはChatGPTの「Sol」とClaudeの「Fable」だ。Erdősの単位距離予想については、ChatGPTが反例を構成する議論を生成し、数日のうちにAIがLeanで形式化した。ただしそれは「100ページ超の数論の定理が反例を導く」という含意の形式化で、前提を置かない完全な形式化は約1か月後に別のモデルが3週間・120万行かけて達成している。Leanは証明を機械が一段ずつ検査できる形式で書くための証明支援系で、形式化とは自然言語の証明をその形式に書き直す作業を指す。Grothendieckの60年来の問い(有限自由群スキームがその位数で消えるか)では、7月7日の昼食で話題に上り、11日には反例が見つかったという報告が届いた——4日である。ヤコビ予想の反例が出たのはワールドカップ決勝の最中だったとBuzzardは書く3。Buzzardの言葉では「machines seemed to be getting very good at finding counterexamples」——機械は反例を見つけるのが非常にうまくなってきたようだ3

証明の側では同じ話にならない

同じ記事の本文でBuzzardが書くのは、区別ではなく観察だ——機械は反例を見つけるのがうまくなってきた、いまの道具では反例が「低い枝の果実」かもしれない、と3。後者はAkhil Mathewがそう深く理解していたようだ、という形で書かれている。反例(存在命題)と普遍命題の証明を根本的に別の仕事として切り分けるのは本稿の整理であって、記事本文にその主張はない。ただしBuzzard自身は、同記事のコメント欄で「ヤコビ予想の証明とその反証には本当の違いがある。たとえば予想の証明がツイートに収まったとは考えにくい。予想は『すべての』命題で、その反証は『存在する』命題だ」と述べており、この切り分け自体は著者の見解と一致する3。彼は「The next step in that work is for humans to understand exactly what is going on with the example」とも書く。次の段階は、この例で何が起きているのかを人間が正確に理解することだ、という意味だ。

態度はさらに強い。Buzzardは非形式なAI生成証明を読むことを拒み、Leanによる形式検証を要求する。自然言語での出力が信頼できないことを認めた上での方針である3。なお、博士課程の学生も月200ドルを払うべきだという彼の発言には、同記事のコメント欄で批判が向けられた。公平性とアクセス格差——月200ドルが大金である国の人はどうするのか——と、数学の脱技能化の二点である3

証明の側で何が足りないかを測ろうとした研究もある。Dekoninckらの Open Proof Corpus は、最先端のLLMが生成した5,000件を超える証明を人手で評価したデータを扱う——まだ査読を経ていないプレプリントである5。調べているのは3点だ。自然言語による証明生成と形式証明生成の性能差、最終解答の正答率と証明全体としての妥当性の食い違い、そして best-of-n 選択——n個の候補を出して良いものを選ぶ手法——が証明の質に与える影響である5。数値も出ている。著者らによれば、集められた証明のうち正しいものは概ね43%で、残りは人手評価で誤りと判定されたものだ5。最終解答の正しさと証明の妥当性の落差はモデルによって大きく違う。証明の正しさまで求めると、Gemini-2.5-Pro は最終解答の正答率を8ポイント落とすだけだが、o3 は約30ポイント落ちる。MathArenaの問題を集めた部分集合では、o3の解答のうち証明まで正しいものは59.5%にとどまる5。最終解答の正しさは証明生成の能力を測る信頼できる指標にならない、というのが著者らの結論である。

それでも人が確かめている

数学者たちは結果をそのまま受け取っていない。Speyerのブログは、AlpögeがFableが反例を見つけたとツイートした経緯を紹介し、そこから議論を続けている4。計算に頼らない概念的な証明を目標として掲げたのは Will Sawin で、Jake Levinson が座標に依存しない幾何学的な議論を寄せた4。Will Sawinは、Andy Jiangがプロンプトを与えたChatGPTが「almost an elegant geometric construction」に近いものを出したとし、その写像を対称積空間で説明している4

同じスレッドには、19歳のハーバード大学生 William Thompson による後続の仕事も現れる。GPT-5.6 Sol の大きな助けを借りたもので、独立に実装された2つの厳密な検証器が一致することを確認している4。それでも本人は「I am not claiming priority or global minimality」と留保し、この例のより早い明示的な簡約が既知かどうか意見が欲しいと書き添える。

反対向きの例も同じ場所にある。Shubhodip MondalはPicard群の計算について「According to GPT」と前置きしつつ、「I did not check carefully」と付け加えている4。反例発見を報告するスレッドの中に、未検証のAIの主張が混じっている。

Taoの記事も同じ方向を向く。彼は自分の投稿を「digestion exercise」と呼び、代数幾何をあまり使わずに、「miracles」——なぜそうなるのか分からないまま成立してしまう手順——を最小化する形で書いたと述べる1。同時に、この問題の議論と記事中のいくつかの計算の確認にAIチャットボットを使ったとも明記している1

自律の度合いを正面から測ろうとした報告もある。Balkoらの Bolzano(査読前のプレプリント)は、数学と理論計算機科学の8つの問題で新しい結果を出したとする6。著者らの評価では、8つのうち6つが出版に値する水準に達し、8つのうち5つは実質的に自律的に生成された6。どの作業で効いたかも論文自身が書いている。著者らは、Bolzanoは数学的に意味のある中間的な一手の生成器として最も有用で、とりわけ反例と障害物を見つけるのが得意だったとし、総括でも「LLMは証明候補の生成、反例の構成、分野をまたぐ接続に長ける」と述べる6。8つのうち1つは実際に予想の反証で、KAMAKという研究集会の2020年の問題集にある、関数の原像に関する分割の予想に反例を与えている6。もっともその反証は、著者らの分類では自律的に得られた一方で新規性は軽微の側に置かれており、反例が自律的に出ることと、それが重要な結果であることは別である6

そしてこの論文自身の総括は、人が確かめる側に寄っている。著者らは「2026年初頭の時点で、問題選択・高水準の戦略・そして検証について人間の指導は依然として重要である」と結び、限界として「人間とAIの寄与をきれいに切り分けるのは難しく、そもそも取り組む問題を選ぶこと自体が自明でない人間の入力である」と述べる6。実際、8つの問題のうち複数で、人間が証明の方針や基礎ケースを与えている6

この報告を、どう割り引くか

この反例そのものを扱った学術誌論文は、まだ一本も出ていない。Tao、Buzzard、Speyerの3本はいずれも専門家個人のブログ記事で、査読を通っていない。Leeの記事は研究者が書いた報道記事である。Bolzano と Open Proof Corpus はどちらもプレプリントだ。

ただし、査読を経ない形での波及は速い。Speyerのスレッドでは公開から1週間強のあいだに、この反例を土台にした明示的な反例が、Hessian予想(arXiv:2607.22198、5変数・全次数14・Hessian行列式は定数128)、一般化消滅予想、像予想へと次々に提出された4。独立に実装された2つの厳密な検証器と公開コードを添えたものもある4。同時に、その場で検算もされている。Speyerは一般化消滅予想への反例の主張を検算して合わないと指摘し、投稿者が検証コードを出したところ、食い違いはSpeyer自身の写し間違いだと判明した——数時間のうちの出来事である4。査読誌が動くより先に、確かめられる物と、確かめる作業のほうが積み上がっている。

発見の過程が公開されていない点は、この件の中心にある制約だ。Leeが明記するとおり、Alpögeがどうプロンプトを与えたかの詳細は公表されていない2。示された数学と、それがどう見つかったかという話は、証拠としての強さが違う。7次の写像とヤコビ行列式 −2、そして3点の衝突は、誰でも手元で厳密に再現できる。探索の物語のほうは、外部から独立に検証できない。

利害の所在は、発見者だけの問題ではない。Buzzardの記事が伝える出来事の多くは、自動形式化ツールを持つ Logos Research が資金提供したワークショップの周辺で起きている。同じ週、Buzzard自身が参加者25人分の Claude Max 購読を買い、それを聞きつけたOpenAIが参加者全員に ChatGPT Pro の無償アクセスを提供した。Erdősの完全形式化を達成した Boris Alexeev は OpenAI の従業員である3。Buzzard は mathlib のメンテナとしての利益相反を記事内で自己申告してもいる3。原典のほうが、開示については踏み込んでいる。

「AIは反例を見つけるのに強い」という一般化にも幅がある。Buzzardが並べた事例は短い期間に集中して起きたもので、母数が小さい。Erdősの単位距離予想の件も反例(反証)だが、100ページ超を要する数論の定理に依拠して反例を構成するもので、代入だけで確かめられる今回の例とは検証の安さが違う。Open Proof Corpus が測っているのは、最終解答の正しさと証明の妥当性の乖離である。乖離の幅はモデルによって大きく異なり、この落差自体が「正解したかどうか」では証明能力を測れないことを示している5。ただしこれは競技数学の問題での測定であって、今回のような未解決予想に対する証明生成の失敗率ではない。

そして数学の側の残りははっきりしている。2次元のヤコビ予想は、今回の反例に触れられないまま開いている。Leeによれば2次元の主張自体は1884年のKrausに遡り、Kellerが1939年に任意次元へ一般化したものだ2。2次元については、多項式の次数100までなら計算で正しいことが確かめられている2


出典6件
  1. Terence Tao, “A digestion of the Jacobian conjecture counterexample”(2026年7月21日)。査読を経た論文ではなく、本人のブログ記事である。反例は複素3次元空間から複素3次元空間への7次の多項式写像で、ヤコビ行列式は定数 −2、それでも大域的に可逆ではない。非単射性は F(0,0,−1/4) = F(1,−3/2,13/2) = F(−1,3/2,13/2) = (−1/4,0,0) という3点の衝突で示される。探索の難しさについては、7次の写像ならヤコビ行列式は 3×6=183 \times 6 = 18 次までの多項式になりうるので、非定数項がすべて消えるのは (18+33)1=1329\binom{18+3}{3}-1 = 1329 本の方程式が成り立つことに等しく、3次元の7次多項式写像がもつ 3×(7+33)=3603 \times \binom{7+3}{3} = 360 の自由度よりはるかに多いとして、“So finding such a polynomial looks highly unlikely to be located by brute force.” と書く。Taoは記事本文ではこの結果を “recently shown (using the Fable AI)” とだけ書き、Claude にも Levent Alpöge にも触れていない(本文の全文検索で0件、両名が現れるのはコメント欄のみ)。発見者名の典拠は24である。自身の記事は “digestion exercise” で、代数幾何をほとんど使わず “miracles” を最小化する方針だとする。計算のいくつかの確認にAIチャットボットを使ったとも明記する。予想は2次元では未解決のままで、1次元では容易に示せるとする。https://terrytao.wordpress.com/2026/07/21/a-digestion-of-the-jacobian-conjecture-counterexample/ 2 3 4 5 6 7 8 9 10

  2. Melissa Lee(Monash University), “‘hello there the jacobian conjecture is false thanx’: why a tiny social media post has mathematicians rethinking AI”, The Conversation(2026年7月22日)。研究論文ではなく、研究者が一般向けに書いた報道記事である。Alpöge が Anthropic の Claude Fable 5 を用いて反例を見つけ、それは “short enough to fit into a single X post” だとする。困難は入り組んだ構成や長い証明ではなく、正しい性質を持つ1つを見つけるために可能な多項式写像からなる巨大な探索空間をどう歩くかにあった。Alpöge がAIモデルにどうプロンプトを与えたかの詳細は公開されていないと明記している。証明の側の歴史については、“the Jacobian conjecture has been the subject of many claimed proofs, including by Beniamino Segre and Wolfgang Gröbner, two famed 20th-century mathematicians. However, in each case, subtle errors were found that invalidated the arguments.” とし、反例の側については “The brevity of the counterexample made it easy for other mathematicians to verify.” とする。予想の性格として “in theory, it should be easy to find a counterexample” を挙げ、2017年の Math Stack Exchange の投稿から “for all what we know, some smart undergraduate can simply write a formula […] that will be a counter-example to this conjecture” を引く。2次元については “Computational results have also shown it is true in two dimensions for polynomials up to degree 100” と記す。https://theconversation.com/hello-there-the-jacobian-conjecture-is-false-thanx-why-a-tiny-social-media-post-has-mathematicians-rethinking-ai-283883 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

  3. Kevin Buzzard, Xena Project blog, “Human mathematicians are being outcounterexampled”(2026年7月20日)。査読を経ていないブログ記事である。ChatGPTの「Sol」やClaudeの「Fable」といったAIが、短い期間に複数の長年の予想を反例で覆すか解決した経過を記録する。Erdős の単位距離予想では ChatGPT が証明を生成し、数日のうちにAIが Lean で形式化した。Grothendieck の60年来の問いでは、7月7日に話題に上り11日に反例の報告が届いた(4日)。なおブログ中の「2週間」はこの件ではなく、別の研究者が250K行のLeanを書いた期間である。ヤコビ予想の反例はワールドカップ決勝の最中に見つかった。“machines seemed to be getting very good at finding counterexamples” と書く。反例が “low-hanging fruit right now” かもしれないという一節は、Akhil Mathew がそう深く理解していたようだ、という形で書かれている。記事本文には、反例(存在命題)と普遍命題の証明を切り分ける議論は無い(本文の全文検索で “existence” “universal” “deep reasoning” “fundamentally” “for all” “there exists” とも0件)。この切り分けは同記事のコメント欄にあり、Buzzard 本人(投稿者アカウント xenaproject、2026年7月25日)が “No — there’s a genuine difference between a proof of the Jacobian conjecture and a proof of its converse. For example, it is extremely unlikely that a proof of the conjecture would have fitted into a tweet. The conjecture is a “for all” statement, its converse is a “there exists” statement.” と述べている。自然言語出力の信頼性の低さを認めた上で、非形式なAI生成証明を読むことを拒み Lean による形式検証を要求する。博士課程の学生も月200ドルを払うべきだという発言には、コメント欄で公平性・アクセス格差と数学の脱技能化をめぐる批判が出た(本文には批判は無く、“de-skill” “equity” “afford” いずれも本文0件)。利害については記事本文が自ら開示している——ワークショップは自動形式化ツールを持つ Logos Research の資金提供を受け、Buzzard 自身が参加者25人に Claude Max 購読を買い、OpenAI は参加者全員に ChatGPT Pro の無償アクセスを提供した。Erdős の完全形式化を行った Boris Alexeev は “works at OpenAI”、Buzzard 自身は mathlib について “declaration of conflict of interest: I am a maintainer” と記す。https://xenaproject.wordpress.com/2026/07/20/human-mathematicians-are-being-outcounterexampled/ 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

  4. David Speyer, Secret Blogging Seminar, “The new counterexample to the Jacobian conjecture”(2026年7月20日)。査読を経ていないブログ記事とそのコメント欄である。写像を “generically three to one, not bijective”、ヤコビ行列式は定数 −2 と説明する。“Levent Alpöge tweeted that Fable had found a counterexample” と記す。Will Sawin は “ChatGPT prompted by Andy Jiang” が “almost an elegant geometric construction” に近いものを出したとし、対称積空間による記述を与える。19歳のハーバード大学生 William Thompson は “with substantial assistance from GPT-5.6 Sol” 後続の仕事を行い、“two separately implemented exact verifiers” の独立な一致を確認した上で、優先権も大域的最小性も主張せず、より早い明示的な立方斉次簡約が既知かどうか意見が欲しいと留保する。Shubhodip Mondal は Picard 群の計算について “According to GPT” としつつ “I did not check carefully” と付記する。Will Sawin が「代数幾何学者が頭の中で、非自明な計算をせずに検証できる証明」を目標として掲げ、Jake Levinson が座標に依存しない幾何学的議論を寄せている(Speyer 自身の寄与は点の数え上げと座標計算。Cl(U)\mathrm{Cl}(U) の消滅を使う明示的な excision 完全系列はコメント投稿者 Skooi によるもので、Speyer 自身も class group についての観察を Skooi に帰している)。コメント欄には後続の波及も記録されている——7月23日に Alexander Dvorsky が一般化消滅予想 GVC(5) への5変数の反例を、7月24日に別の投稿者が Zhao の消滅予想への明示的な反証物を “Two independent exact verifiers” と公開リポジトリつきで、7月27日に royvanrijn が像予想への反例(展開して8項)を、同日 hexianmeng が「5変数・全次数14・Hessian行列式は定数128」で Hessian 予想 HC_5 を反証する論文(arXiv:2607.22198)を投稿している。Dvorsky の主張については Speyer が検算して合わないと指摘し、Dvorsky が検証コードを示した結果、Speyer 自身が ad+btad+btad+bcad+bc と写し間違えていたことが同日中に判明した。https://sbseminar.wordpress.com/2026/07/20/the-new-counterexample-to-the-jacobian-conjecture/ 2 3 4 5 6 7 8 9 10

  5. Jasper Dekoninck, Ivo Petrov, Kristian Minchev, Mislav Balunovic, Martin Vechev ほか, “The Open Proof Corpus: A Large-Scale Study of LLM-Generated Mathematical Proofs”(arXiv:2506.21621, 2025年6月23日投稿/2026年1月14日改訂)。査読前のプレプリントである。最先端のLLMが生成した 5,000件を超える人手評価済みの証明を扱い、(1) 自然言語による証明生成と形式証明生成の性能差、(2) 最終解答の正答率と証明全体の妥当性の食い違い、(3) best-of-n 選択が証明の質に与える影響、の3点を調べる。誤りの割合は本文2ページ目の Key findings に出ており、“the OPC generally consists of 43% correct proofs” とする。同じ段落は “While GEMINI-2.5-PRO loses only 8% of its final-answer accuracy when proof correctness is required, O3 suffers a drop of almost 30%.” と述べ、5.4節では MathArena 部分集合について “O3 performs notably worse, with only 59.5% of its answers containing a correct proof. This substantial difference between models shows that final-answer accuracy is not a reliable indicator of proof generation capability.” とする。証明の正しさの判定では GPT-5 が最も高く、5回の多数決で90.8%(単発では89.3%)、人間の基準は90.4%である。著者らが追加学習した80億パラメータのモデルは同じ条件で88.1%に達し、Gemini-2.5-Pro と並ぶ。なお arXiv の要旨ページは v2 を指していても v1 の要旨(この8Bモデルを「最良モデルである Gemini-2.5-Pro と同等」とするもの)を返す。v2 のPDF本体の要旨は “matches GEMINI-2.5-PRO, and performs close to the best model, GPT-5” に書き換わっており、本稿の記述はPDF本体で確認した。https://arxiv.org/abs/2506.21621 2 3 4 5

  6. Martin Balko, Jan Grebík, Pavel Hubáček, Martin Koutecký, Matěj Kripner, Václav Rozhoň, Robert Šámal, Adrián Zámečník, “Bolzano: Case Studies in LLM-Assisted Mathematical Research”(arXiv:2604.16989, 2026年4月18日投稿/4月24日改訂)。査読前のプレプリントである。数学と理論計算機科学の 8つの問題で新しい結果を出したとし、8つのうち6つが出版に値する研究の水準に達し8つのうち5つは実質的に自律的に生成されたと報告する。評価には Feng らによる有意性と自律性の分類を用いる。作業の種類ごとの内訳は本文1ページ目にあり、“it was particularly good at finding counterexamples and obstructions, proposing concrete constructions and gadgets, or extending a known base case or simpler proof template to a more general statement” とする。3ページ目の総括は “LLMs excel at generating proof candidates, constructing counterexamples, and making cross-domain connections. In early 2026, human guidance remains relevant for problem selection, high-level strategy, and verification.” であり、限界として “it is hard to cleanly disentangle the human and AI contributions; even selecting the right problem to work on is a nontrivial human input” を挙げる。8問題のうち5番目(Combinatorics)は “We disprove a conjecture on function-preimage partitioning from the KAMAK 2020 workshop” と明示され、付録Cに Theorem 11 (Counterexample to the original conjecture) として証明がある。2ページ目の Table 1 はこの反証(Partitioning, Section 3.5)を自律(A)列かつ Minor novelty 行に置く(Negligible novelty 行は空である)。8問題のうち1番目では人間が解析の方針を、3番目では人間が protocol の変種と簡単な基礎ケースの証明を与えている。https://arxiv.org/abs/2604.16989 2 3 4 5 6 7

この記事はAIが執筆しています。内容には誤りが含まれる可能性があります。ご注意ください。