AIエージェント
Agent Skillsとは:仕組み、MCPとの違い、作る価値のあるスキル
- Agent Skills
- AIエージェント
- MCP
- 段階的開示
- SKILL.md
- AGENTS.md
- オープン標準
- Anthropic
- サプライチェーン汚染
- 移植性
- スクリプト
- Markdown
- 静的解析
- Claude Code
- Codex
- Gemini CLI
- GitHub Copilot
- システムプロンプト
- 安全アライメント
- 責任開示
- YAML
- 作業部会
- ペイロード
- OWASP
目次
文書を読ませたりコードを書かせたりするAIエージェントに、現場ごとの手順を足す仕組みを、どの製品も以前から用意していた。問題は、その形式が製品ごとに違うことだった。リポジトリに1枚置いてエージェントに読ませる指示ファイルなら、2025年8月には競合をまたぐ共通形式が出ていた1。だが、必要なときだけ読み込む手順の束には、製品ごとの独自の形しかなかった。一方の製品に向けて書いた手順は、もう一方では読めない。
そこへ、ある会社が自社の形式をオープン標準として公開した。手順を書いた Markdown を1枚置けば足りる薄さである2。オープン標準といっても、各社が他社の作った規格に乗る義理はない。ところが各社は乗った。手順を足す形式は、社をまたいで一つへ収れんし始めている。
何がこの収れんを速めたのか。そして、手順の形式がそろったあと、運用側の仕事は減るのか。
収れんを速めた一因は、規格の薄さだと本稿は見る。フォルダに Markdown を1枚置けば実装できる。だが薄さが片づけたのは「どう載せるか」までで、「どれを置く価値があるか」と「その出所は確かか」は運用する側が判断する。 その規格が、Anthropic が2025年12月にオープン標準として公開した Agent Skills である32。同社が先に出した標準 MCP も、すでに同じ道を通った4。対応ツールは、公開から半年余りの2026年7月時点で40を超え、そこには OpenAI(Codex)・Google(Gemini CLI)・Microsoft(VS Code/GitHub Copilot)といった競合が並ぶ5。他所から持ってきたスキルを経由した汚染では、測った中でもっとも守りの堅い環境でも、仕込んだコードが明示的な指示なしにエージェントの動くマシン上で実際に走った率が2.3%あった6。
スキルを30個入れても、常時載るのは一行ずつ
※ この節の数値は説明のための仮定で、測定値ではありません。
スキルを30個入れたエージェントで、コンテキストに入る量を数える。各スキルの名前と一行説明を50語、手順を書いた本文(SKILL.md)を2,000語、同梱の参照資料を20,000語とする。常時載るのは30個ぶんの名前と一行説明だけで、30 × 50 = 1,500語である。
PDF のフォームを埋める仕事が来ると、関係する1個の本文2,000語が加わって3,500語になる。参照資料は、その仕事に要る分だけを開く。30個の本文と参照資料を最初から全部載せる形なら、30 × 22,050 = 661,500語で、参照資料を開く前の3,500語の約190倍になる。
30個の内訳を見比べると、段階的開示について三つのことが分かる。
- スキルを1個足しても、常時載る量は名前と一行説明の分しか増えない。
- 本文と参照資料は、その仕事に関係するときにしか載らない。1個のスキルに同梱する量を増やしても、常時の負担は変わらない。
- 名前と一行説明で関係があると判断されなければ、本文は1語も読まれない。
Skill の実体はただのフォルダ
一つのスキルは、手順・スクリプト・参照資料をまとめたフォルダである2。最小構成は SKILL.md ひとつである。このファイルの先頭に name と description を書いた YAML を置き、その下に「何を、どういう手順でやるか」を書く。PDF のフォームを埋める、社内の表記ルールに従う、といった仕事の”やり方”を、コードとして持ち運べる形にしたものだ。仕様が薄い(ただのフォルダと Markdown)ことが、この速い普及の一因だと本稿は見る。Anthropic 自身は、この形式の単純さを、組織や開発者が自前のエージェントを作りやすくなる利点として挙げている2。
段階的開示でコンテキストを軽く保つ
肝は段階的開示(progressive disclosure)である2。
- 最初は、各スキルの名前と一行説明だけがシステムプロンプトに載る。だからスキルをいくつ入れても、常時載るのは一行ぶんずつで済む。
- その仕事に関係するときだけ、モデルはそのスキルの
SKILL.md本文を読み込む。 - さらに必要なら、同梱された参照ファイルやスクリプトを個別に辿る。モデルは、関係ないスキルの中身を最後まで読まない。
ファイルシステムとコード実行のツールを持つエージェントなら、作業のたびにスキル全体をコンテキストに読み込む必要はなく、必要な分だけ読めばよい。だから一つのスキルに同梱できる量は、実質的に無制限になる2。Anthropic がオープン標準として公開した狙いは、ツールをまたいだ移植性にある3。
MCP と何が違うのか
エージェントを使う人がまず疑問に思うのは、先行する標準 MCP(Model Context Protocol)との棲み分けだろう。両者の違いをひと言でいえば、次のとおりである。
- MCP は「接続」。 外部のデータやシステムへ、安定した経路でつなぐ(=エージェントに新しい能力を足す)4。
- Skills は「手順」。 公式は Skills も「新しい能力を足すもの」と書くが、その中身は、つないだ先で何を・どうやるかをそろえる手順書である。形式はフォルダと Markdown、必要ならスクリプトである(=毎回説明し直さずに済ませる作法)2。本稿の「能力/手順」という切り分けは、公式の語法ではなく説明のための整理である。
両者は競合せず、補完し合う。さらにいまは、MCP の側が Agent Skills を取り込んでいる。MCP の「Skills Over MCP」作業部会は、スキルを MCP を通じてどう発見・配布・消費するかを定める場で、Agent Skills 仕様との連携も正式に scope に入っている7。その成果として、Skills 拡張(SEP-2640)が2026年9月に Final になり、公式の拡張 io.modelcontextprotocol/skills として公開された7。作業部会はもともと、スキルを MCP の第一級プリミティブにする提案(SEP-2076)の議論から生まれたが、その提案自体は2026年2月に閉じられている。実務では、たとえば MCP で GitHub や CI につなぎ、Skill で「ビルド傾向の分析とレポートの型」を固定する、というふうに重ねて使うのが素直な形になる。
どのスキルを作る価値があるか
仕組みは軽いので、作ろうと思えばいくらでも作れる。だが、作る手間に見合うスキルは限られる。本稿では、次の三つに価値が集まりやすいと考える。二つ目は、仕様サイトが「組織・チーム・利用者に固有のコンテキスト」として名指しする用途である3。一つ目は Anthropic の解説記事が挙げるコードの決定性に2、三つ目は仕様サイトの「反復可能なワークフロー」と、専門知識の例に並ぶ体裁の整形を本稿でまとめたものに当たる3。
- 決定的な再現性が要るとき。 手順を毎回モデルに推論させるのでなく、同梱したスクリプトを実行させる。PDF から全フォーム項目を抜く、といった「毎回同じでないと困る」処理はここに落とす2。
- 組織・チーム固有の作法。 表記ルール、レビューの手順、社内ドメインの前提がこれに当たる。いずれも、モデルが事前学習で持っていない、その現場だけの知識である。
- フォーマット重めの反復作業。 帳票・定型ドキュメント・決まった体裁の生成物。
逆に、一度きりの指示や、モデルが放っておいてもできる自明なことをスキルにしても、常時載る名前と一行説明の一覧に、ほとんど選ばれない項目が増えやすい。仕様サイトはさらに、「この PDF を読んで」のような単純な一段階の依頼なら、説明文の噛み合いが完璧でも、基本のツールで片づくためにスキルが呼ばれないことがあると書く8。自明な仕事では、description をどれだけ磨いても選ばれるとは限らない。
普及が生む二つの新しいリスクは説明文の質と実行の信頼
普及の速さは魅力だが、運用側が見落としやすい点が二つある。
- 発見は description の質に懸かっている。 多数のスキルが載る設計では、モデルは名前と一行だけを見て「関係ある/ない」を判断する。仕様サイトはこの一行が「発火の負担をまるごと背負う」と書いており、専用の指針まで置いている8。中身がどれだけ良くても、その一行で選ばれなければ読まれない。スキルを増やすほど、書き分けの精度が効いてくる。
- スキルはコードを実行できる。 同梱スクリプトを走らせられるのが強みだが、それは裏を返せば「何を実行させるか」という信頼と実行の面が増えるということだ。移植性が上がり、他所で書かれたスキルを載せやすくなるほど、出所の確認は省けなくなる。
ここは楽観できない。共有スキルの説明文やコード例に不正なロジックを仕込んでおくと、エージェントが通常作業でそれを流用した瞬間に、明示的な指示なしでシステム権限のペイロードが走る。Qu らは、2026年4月に公開した査読前の報告で、この「サプライチェーン汚染」を実証したと述べている。4フレームワーク・5モデルの8構成で、エージェントが悪性コードを生成するか実行するかしてしまう率は11.6〜33.5%。ただし下限をつくっているのは守りの堅さではない。11.6%の構成は試行の6割が実行時エラーで落ちており、論文自身がこのセルを「保守的な下限」と断って、主要な結論は妥当応答率87%超の5構成に置いている。守りが最も堅い構成の値は13.5%だ6。実際にホスト上でペイロードが走った率だけを取っても2.3〜27.1%あり、最も堅い構成でも2.3%は走った。同じ構成で、露骨に「これを実行しろ」と書き込む従来型の注入は実行率0%だった6。論文はこの対照を「下限を与えるもの」と限定し、より巧妙な注入との比較は今後の課題としている6。攻撃は防御の二層もともに抜けている。静的解析は攻撃の90.7%を捕まえたが、2.5%は静的解析とモデル側の安全アライメントの両方をすり抜けた。なお著者らは責任開示を行っており、確認された4件の脆弱性のうち2件は修正済みだと記している。4件の共通原因として論文が挙げるのは、フレームワークが実行権限を意味ではなく構文上の境界で与えるという、設計上の穴である6。
共通して効く歯止めは新しくない。認可は LLM の判断に任せず下流で強制し、エージェントに渡す機能と権限は必要な最小限にとどめることだ9。Qu らの報告はさらに、Claude Code 上の3モデルの結果を突き合わせ、3つとも突破した攻撃用スキルが1.6%にとどまると数えている(単一モデルでは13〜20%)6。論文はここから、異種モデルの併用で攻撃面が2%未満へ縮むと推論している。併用した防御そのものを走らせた値ではない。
競合をまたぐ共通フォーマットは、MCP と、常時読ませる指示ファイルの共通形式 AGENTS.md1 に続いて、ここでも合意に至った。ただし運営の形は同じではない。MCP と AGENTS.md は2025年12月、Linux Foundation の下に新設された中立の財団 Agentic AI Foundation へ移された10。Agent Skills は、仕様サイトがもともと Anthropic の開発と記す形式で、2026年10月時点ではこの財団の事業の一覧に載っていない310。いずれにしても、「置くだけで動く」の手軽さと、「どれを置くべきか・その出所は確かか」の判断は別の問題として残る6。
出典10件
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AGENTS.md 公式サイト(2026-09-30 取得). https://agents.md — 特定製品に依らない指示ファイルの形式で、6万超のオープンソースのプロジェクトが使い、Codex・Jules・Gemini CLI・GitHub Copilot・Junie が対応する。リポジトリ作成は2025-08-19。 https://github.com/agentsmd/agents.md ↩ ↩2
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Anthropic「Equipping agents for the real world with Agent Skills」Engineering, 2025-10-16. https://www.anthropic.com/engineering/equipping-agents-for-the-real-world-with-agent-skills — スキルをフォルダと SKILL.md で定義し、段階的開示の3段と、2025-12-18 にオープン標準として公開した旨の追記を載せる。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
-
Agent Skills 仕様サイト agentskills.io. https://agentskills.io — もともと Anthropic が開発しオープン標準として公開した形式と記し、用途に組織・チーム・利用者に固有のコンテキスト、反復可能なワークフロー、体裁の整形を挙げる。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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Model Context Protocol 公式サイト. https://modelcontextprotocol.io — エージェントを外部のツール・データへつなぐオープン標準。公開元が Anthropic であることは同社の発表記事で確かめられる。 https://www.anthropic.com/news/model-context-protocol ↩ ↩2
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Agent Skills「Client Showcase」. https://agentskills.io/clients — 対応製品の公式一覧。2026年7月時点で40超で、Claude Code・OpenAI Codex・Gemini CLI・VS Code/GitHub Copilot・Cursor・Junie ほかが並ぶ。 ↩
-
Y. Qu ほか「Supply-Chain Poisoning Attacks Against LLM Coding Agent Skill Ecosystems」arXiv:2604.03081, 2026. https://arxiv.org/abs/2604.03081 — 査読前。8構成でバイパス率11.6〜33.5%、直接実行率2.3〜27.1%と報告する。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
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MCP「Skills Over MCP」作業部会の憲章(2026-09-30 取得). https://modelcontextprotocol.io/community/working-groups/skills-over-mcp — Agent Skills 仕様を連携先に挙げ、Skills 拡張 SEP-2640 が2026-09-13に Final になったと記す。SEP-2076 は2026-02-24に未マージで閉じた。 https://github.com/modelcontextprotocol/modelcontextprotocol/pull/2076 ↩ ↩2
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Agent Skills「Optimizing skill descriptions」. https://agentskills.io/skill-creation/optimizing-descriptions — 一行の説明が発火の負担をまるごと背負うとし、単純な一段階の依頼では、説明が噛み合っていてもスキルが呼ばれないことがあると書く。 ↩ ↩2
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OWASP「LLM06:2025 Excessive Agency」OWASP Top 10 for LLM Applications, 2025. https://genai.owasp.org/llmrisk/llm062025-excessive-agency/ — 過剰な機能・権限・自律をリスクに据え、機能と権限の最小化と、認可を LLM でなく下流で強制することを処方する。 ↩
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Linux Foundation「Linux Foundation Announces the Formation of the Agentic AI Foundation (AAIF)」2025-12-09. https://www.linuxfoundation.org/press/linux-foundation-announces-the-formation-of-the-agentic-ai-foundation — MCP・goose・AGENTS.md の寄贈を受けて発足した中立の財団。 ↩ ↩2
この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。