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AIエージェント

AIのスキャフォールドとは?自動最適化の効果とプロンプト過適合

2026/8/2 (更新: 2026/10/11)

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目次
背景・問い・要点
背景

AIエージェントの性能を上げる、いちばん直感的な方法はモデルを替えることだ。より賢いモデルに切り替えるか、もっと考えさせるか、タスクに合わせてファインチューニングする。だが性能は、モデルを繰り返し呼び出して働かせる外側のプログラム(何を見せ、何を使わせ、どうつなぎ、何を残すか)でも変わる。

その外側を、人手でなく自動で磨く手法が出てきた。手法は、ある問題の集合で点数が上がるように外側を書き換えては測る。上がった点数が、その集合の外でも保たれるかは別の問いである。

本稿は、外側の自動最適化を報告した DSPy・GEPA・ACE などの研究と、プロンプト最適化の過適合を測った TextReg を例に取る。

問い

モデルの重みを変えずに、外側の設計を自動で最適化するレバーは、どこまで信頼できるのか。

要点

モデルの重みを変えずにスキャフォールド(足場)やプロンプトを自動で最適化するレバーは、実測に裏づけられた本物である。 そして、プロンプト最適化の側では「最適化に使ったサンプルへ過適合する」という見えにくい天井を実測した研究があり、最適化が向かう先を問わずに引けば、そのサンプルの外で壊れうる。 受け取るフィードバックが当てにならない場面での劣化と、反復を続けたときの頭打ちも報告されている。

モデル・例示

易しい問題で磨いたプロンプトを、難しい問題で測る

※ この節の数値は説明のための仮定で、測定値ではありません。

プロンプトを自動で磨く手順を一つ考える。易しい問題100問で正答率が上がるように、プロンプトを書き換えては測る、を10回繰り返す。磨く前のプロンプトは、易しい問題で70%、同じ種類の難しい問題で50%を出していたとする。

10回の書き換えの後、易しい問題の正答率は85%に上がった。プロンプトは長くなり、その100問に出てくる言い回しに合わせた細かい規則が積み上がっている。

この最適化を、二つの測り方で評価する。磨いた100問だけで測ると、+15ポイントの改善に見える。難しい問題でも測ると、正答率は45%で、磨く前の50%を5ポイント下回る。磨いた集合の上の伸びは、集合の外の伸びを保証しない。外で測らなければ、下がったことは見えない。

前提として、性能はモデルの外側でも決まる

モデルを替える方法のうち「もっと考えさせる」には、実測が正面から反例を突きつけている。

プリンストン主導の多機関チームが約4万ドルをかけ、9モデルと9ベンチマークにまたがる2万1730回のエージェントロールアウトを記録した研究 HAL1がある(81通りの全組み合わせを埋めたのではなく、比較として意味のある構成を優先したと原典は書く)。一つ目の実測: 推論に使う計算量を増やしても、36設定中21で精度は改善しなかった(同点を含む)。「モデルにもっと考えさせればいい」への反例だ。ただしこの36設定は推論設定の対を持つ4モデルに限られ、同論文は大半の評価を統計的検証のない単発ランで走らせたと自ら断っている。加えて、モデルの外側に大きな変数があることも同じ研究が量化している: スキャフォールドの選択は、精度とコストに劇的な差を生む。同じモデルでスキャフォールドだけを替えた比較では、課題専用のスキャフォールドが汎用のものを CORE-Bench Hard で12回中9回、SWE-bench Verified Mini で12回中11回上回った。ただし効き方は一様ではなく、同じスキャフォールドでもモデルとの相性で向きが変わる、と同論文は但し書きをつけ、モデルとスキャフォールドを慎重に組み合わせる設計を求めている1。

HALが示したとおり、性能を左右する変数はモデルの外側にもある。その外側の正体を、先に定義しておく。

スキャフォールドとは、モデルを働かせる外側の一式である

この外側を、引用する研究群はスキャフォールド(scaffold=建築の足場)と呼ぶ。モデルという部品そのものではなく、それを働かせるために周囲へ組む構造物、という比喩だ。実体は、モデルを繰り返し呼び出してエージェントとして動かす、モデルの外側のプログラム一式である。部品を並べると:

前節のHALが「スキャフォールドの選択」として比べたのは、この一式を丸ごと替える単位だ1。具体的には、同じモデルを差し替えて載せられる BrowserUse や SeeAct といったエージェントの枠組みを指す。エージェントが何を見て、どんな順序で動き、どう記憶を管理するかというこの設計全体を、ハーネスとも呼ぶ。本稿は、引用する研究の用語に合わせてスキャフォールドで通す。

プロンプトは、この一式の部品の一つだ。以降で見る手法は、プロンプトだけを磨くものから、部品どうしの接続構造ごと探索するものまで、どの部品をどこまで動かすかが違うだけで、同じ「外側の最適化」である。そこで問いはこうなる。この外側の設計を、人手でなく自動で最適化できるのか。

レバーが本物である根拠は、強化学習を上回る実測にある

この潮流の基点は DSPy(2023年、スタンフォード)だ。LMパイプラインを宣言的な「テキスト変換グラフ」としてコンパイルし、コンパイラがプロンプトや示例を指標に向けて最適化する2。一回の指示文を磨くのではなく、パイプライン全体のモジュールをまとめて最適化するという枠組みで、手書きのプロンプトテンプレートを置き換えた。骨格そのものは書き手が if や for で宣言するが、コンパイラの守備範囲は指示文・フィールド説明・示例から、必要なら重みのファインチューニング、さらにプログラムの制御フローを組み替える段にまで届く。その最も単純な形である多数決アンサンブルは同論文の事例研究でも使われている。ただし初版が実際に力を入れたのは示例を自動で集めるブートストラップで、指示文そのものを書き換える側を主役に据えるのは後続の仕事になる。

実測として最も強いのは、その後継にあたる二つだ。GEPAは、エージェントが自分の実行軌跡に対して自然言語で内省し、遺伝的・パレート的にプロンプトを進化させる3。6タスク平均で強化学習(GRPO)を6ポイント上回り、最大19ポイント差。しかも必要なロールアウト数は最大35分の1しか要らない。強化学習のコストを払わずに改善を得る、という主張だ。GRPO との比較は Qwen3-8B に限られ、フルパラメータの GRPO に対しても同程度の差が出ると同論文は報告している。ただし6タスクのうち AIME-2025 だけは逆で、GRPO の38.00に対しGEPAは32.00と6ポイント下回る。同論文も表のキャプションに on all benchmarks except AIME と明記している。勝てていないのが競技数学=実務家が最も強化学習に手を伸ばしたくなる場面である点は、割り引いて読む値打ちがある3。ACE(スタンフォード/SambaNova)は、エージェントのコンテキストを「進化するプレイブック」として扱い、Generator/Reflector/Curatorのループで磨く4。重みを一切更新せず、エージェント側の唯一のベンチである AppWorld で、選ばれたベースライン群に対して平均 +10.6%。ACE 論文が GPT-4.1 ベースの相手より「はるかに小さい」と呼ぶ 671B のオープンソースモデル(DeepSeek-V3.1)のまま、AppWorldリーダーボードで公開中の最上位プロダクション・エージェントと全体平均で並んだ。これは2025年9月時点・ACE 論文の自己報告という条件つきの数字で、同論文はこの比較を直接比較ではない大まかな目安だと断っている。

その AppWorld は、アプリ9種・457のAPIを横断するコードでタスク750問を解かせ、状態ベースのユニットテストで機械採点するベンチだ5。採点は、正しく終えたかに加えて、余計な副作用を出していないかを検査する。公開当時(2024年7月)は GPT-4o でも通常タスク約49%・challenge 分割約30%にとどまった難関で、「並んだ」の重みはこの採点方式の上で測るべきものになる。ただしこの約49%を現在の水準と読んではいけない。ACE 論文の同じ表で、最適化を何も当てていない素の ReAct(DeepSeek-V3.1-671B)が通常タスクのタスク単位達成率 63.7 を出しており、2024年の GPT-4o の同じ指標(48.8)を15ポイント上回っている。ACE 論文が並んだとする 59.4% のほうも通常/challenge × タスク単位/シナリオ単位の4値の平均で、GPT-4o の約49%(通常タスク・タスク単位の単独値)とは物差しが違う4。この challenge 分割は難易度で切ったものではなく、未見のアプリ(Amazon と Gmail)のAPIを要するタスクを集めた汎化分割で、原典はこちらを主標的に据えている。

同じ発想は独立に増殖している。MASS(Google/Cambridge)は多エージェントの設計空間を系統的に分析し、プロンプトと接続トポロジーが決定的な最適化因子だと結論づけた6。ただしこの結論は MASS を提案する論文自身のものなので、他と同じく割り引く。Training-Free GRPO(Tencent)は、強化学習が学んでいる「経験知」を重みでなくトークンの事前分布として蒸留し、重み更新なしで、RL訓練済みの32Bモデル(ReTool・AFM)を上回る成績を報告する7。ただしこの逆転の大半はモデル規模差である。手法を当てていない素の DeepSeek-V3.1-Terminus + ReAct が既に AIME24 80.0 / AIME25 67.9 で ReTool(67.0 / 49.3)を上回っており、Training-Free GRPO 自身の寄与は +2.7 / +5.4ポイントにとどまる。勝った側が凍結した671Bモデルである点も同じで、「訓練しない」ぶんのコストは大きなモデルを呼ぶ側へ移っている。これは ACE 側にも等しく当てはまる(どちらも DeepSeek-V3.1 系の671Bを凍結して使う)。

天井は、最適化に使ったデータの外で崩れる点にある

このレバーの見えにくい天井を、まず TextReg8が記述する。反復的なLLMベースのプロンプト最適化は「プロンプト分布過適合」を起こす。最適化を繰り返すほどプロンプトは長くなり、最適化に使ったサンプルに特化した細かいルールを積み重ね、訓練分布の外(OOD)では性能が崩れる。評価ベンチマークに向けて磨くほど、そのベンチマークの外では逆効果になりうる、という報告だ(本会議の査読は経ていない)。測定は、易しい変種と GSM8K の8件の訓練サンプルで Qwen2.5-7B を使ってプロンプトを磨き、残りのデータセット(難しい変種など)を別の4モデルで解かせる設定である。データとモデルの両方が、最適化のときと違う。同論文が提案する正則化を加えると、OOD評価で TextGrad 比・最大 +11.8ポイント、REVOLVE 比・最大 +16.5ポイント改善した。これは比較対象の違う、それぞれ単一の最良セルの値だ。原典自身も、比較手法は分布外の評価で、最適化前の Chain-of-Thought(CoT)プロンプトより精度を下げることが多いと書いている。決定打は、その数字が載る表の第1行にある。プロンプト最適化を一切していない素のChain-of-Thoughtが、24セル中14セルで TextGrad を上回っている(同点3・下回り7)。看板の +11.8 が出たセルでも、そのうち 10.9 ポイントは「最適化しない」だけで得られる分だった。最適化に使ったデータの外では、磨くこと自体が裏目に出うる。

ただし TextReg が主に測ったのは単発の推論プロンプト(Logical Deduction・Tracking Shuffled Objects・GSM8K 系の6データセット)である。2026年10月の改訂版は付録で知識問答(GPQA)と文生成(CommonGen)にも同じ手順を当て、文生成では TextGrad と REVOLVE が最適化前のプロンプトを下回ったという予備結果を足した。それでも同論文は結論節でエージェント指示と多ターンのプロンプトを明示的に射程外とし、future work へ送っている8。本稿の主題であるスキャフォールドまで一般化するのは、原典が自分で引いた線の外への外挿になる。

二つ目の天井は、最適化が受け取るフィードバックそのものの質だ。レバーの根拠として引いた ACE 自身が、信頼できる実行フィードバックや正解ラベルが無い場面では、誤った信号が蓄積中のコンテキストを汚染し、性能が劣化しうると報告している4。AppWorld のように状態ベースのユニットテストで機械採点できる環境は、この手法にとって最良の条件だった、ということでもある。

三つ目は、自己改良ループそのものの飽和だ。こちらはスキャフォールドではなく重みを更新するタイプの自己進化を測った研究9だが、ベースモデルからは改善するものの、計算を使いすぎると頭打ちになり、実世界の推論ベンチでの利得は「modest(小幅)」だったと報告する。10回反復すれば10回分伸び続けるわけではない。もっとも、頭打ちの高さのほうは固定ではない。その高さはモデル規模で割れる。同じ多ターンの critic-revision で比べると、Gemma 3 4B は 42.2% で、正解ラベルで選別する oracle の 46.6% に届かない。だが 12B では 52.8% で、oracle の 53.6% にほぼ並ぶ(そのぶん監督を作る計算コストは高い)。原典は、oracle との差が小さかったのはこの組だけだと書いている9。しかも同論文の題名自体が『自己進化における一般化ギャップ』である。その序論は、閉ループの自己進化は安定した利得を出すが、分布の外(易しい問題から難しい問題へ)への一般化を改善する力は限られたままで、下流の推論ベンチでは「かえって劣化することもある」とまとめている9。ただし序論は同じ箇所の直前で、反復訓練とカリキュラム学習によって難しい問題も解けるようになると書いており、分布の外へまったく伸びないという意味ではない。手法の系統は違うが、分布の外での伸びが限られるという向きは、プロンプト最適化と重み更新の両側から出ている。


出典9件
  1. Kapoor ほか「Holistic Agent Leaderboard: The Missing Infrastructure for AI Agent Evaluation」ICLR, 2026. https://arxiv.org/abs/2510.11977 — 9モデル×9ベンチで2万1730ロールアウト。推論設定の対を持つ4モデルの36設定中21で精度は同点か低下。単発ラン中心。 ↩ ↩2 ↩3

  2. Khattab ほか「DSPy: Compiling Declarative Language Model Calls into Self-Improving Pipelines」ICLR, 2024. https://arxiv.org/abs/2310.03714 — LMパイプラインをコンパイルして指標へ最適化。初版の重点は示例で、制御フローの書き換えと重みの微調整も扱う。 ↩

  3. Agrawal ほか「GEPA: Reflective Prompt Evolution Can Outperform Reinforcement Learning」ICLR, 2026. https://arxiv.org/abs/2507.19457 — Qwen3-8B で GRPO を平均約6・最大19ポイント上回り(AIME は下回る)、ロールアウトは最大35分の1。 ↩ ↩2

  4. Zhang ほか「Agentic Context Engineering: Evolving Contexts for Self-Improving Language Models」ICLR, 2026. https://arxiv.org/abs/2510.04618 — AppWorld 平均59.4%で首位と並ぶ(2025-09時点・直接比較でないと注記)。信号が無いと劣化しうる。 ↩ ↩2 ↩3

  5. Trivedi ほか「AppWorld: A Controllable World of Apps and People for Benchmarking Interactive Coding Agents」ACL, 2024. https://arxiv.org/abs/2407.18901 — 750タスクを状態ベースのテストで採点する。Test-C は未見アプリを要する分割。 ↩

  6. Zhou ほか「Multi-Agent Design: Optimizing Agents with Better Prompts and Topologies」ICLR, 2026. https://arxiv.org/abs/2502.02533 — プロンプトとトポロジーを三段で最適化し、既存の代替を上回ると報告する。 ↩

  7. Cai ほか「Training-Free Group Relative Policy Optimization」arXiv, 2025. https://arxiv.org/abs/2510.08191 — 凍結した DeepSeek-V3.1-Terminus に経験知を注入し、AIME24 82.7%・AIME25 73.3%(素の ReAct は80.0%・67.9%)。 ↩

  8. Fu ほか「TextReg: Mitigating Prompt Distributional Overfitting via Regularized Text-Space Optimization」arXiv, 2026. https://arxiv.org/abs/2605.21318v2 — 最適化したプロンプトは OOD で崩れうる。測ったのは主に単発の推論。採録はワークショップのみ。 ↩ ↩2

  9. Qi ほか「On the Generalization Gap in Self-Evolving Language Model Reasoning」ICML, 2026. https://arxiv.org/abs/2606.01075 — 自己進化は過剰な計算で頭打ちになり、分布外への一般化の改善は限られる。12B は oracle にほぼ並ぶ。 ↩ ↩2 ↩3

この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。