AI・信頼性・評価
AI創薬の臨床試験成功率:Phase IとIIの差、AI単独の承認が無い理由
- AI創薬
- 創薬
- 臨床試験
- Phase I
- Phase II
- Phase III
- rentosertib
- DSP-1181
- 成功率
- 前臨床
- 有効性
- 安全性
- 特発性肺線維症
- 努力肺活量
- 既存薬
- Insilico Medicine
- Exscientia
- 住友ファーマ
- TNIK
- プラセボ
- 規制当局
- Eroom's Law
- ClinicalTrials.gov
目次
新しい薬は、できあがったらすぐ薬局に並ぶわけではない。研究室で候補となる化合物を作ったあと、まず少人数の人に飲ませて、深刻な害が出ないかを見る(Phase I)。害が出なければ、その病気の患者を集めて「本当に効くのか」を確かめる(Phase II)。効くらしいと分かれば、さらに大人数で確証を取り(Phase III)、そこで初めて規制当局に承認を申請する。この人を対象にした一連の試験が臨床試験で、段階は順に進み、前の段階を通らなければ次には進めない。脱落は後ろの段階ほど痛い。そこまでに積み上げた年月と費用が大きいからだ。
ここにAIが入ってきた。膨大な候補から見込みのある化合物を絞り、狙うべき体内のたんぱく質を見つけ、分子の形を設計する。計算機の上で先に絞れれば、実験に回す数を減らせる。実際、AIが発見した分子が次々と臨床試験に入り、その成功率は従来の創薬より高いという集計が2024年に報じられた。失敗が当たり前の産業で、公開から2年余りで150件以上の文献がこの論文を引用している(2026年9月時点)1。
ただし、どの段階を数えたのかを言わないかぎり、「成功率」の中身は定まらない。害が出ないかを見る段階を通った割合と、効くかどうかを問う段階を通った割合は、同じ言葉で呼ばれていても別のことを測っている。報じられた数字がどちらのものかで、読者が受け取るべき意味は変わる。
AI創薬の高い成功率は臨床試験のどの段階の数字で、段階を追って見たときにその優位は残るのか。同じ分析の段階別データで確かめる。
高い成功率は、害が出ないかを見る最初の段階のものである。効くかどうかを問う次の段階まで進めると、成功率は業界平均並みに戻る。 同じ論文の中で、Phase I完了時の80〜90%は、Phase IIでは40%になる(いずれも2023年12月時点の集計)1。前半の高さは、AIが効くと言われてきた設計と安全性確認の工程の話で、薬が効くかどうかを問う段階に入ると差が消える。ただしこの40%を「AIが効かなかった証拠」と読むことはできない。原典は、次の段階のあとで中止になった6品目のうち効かなかったのは2品目で、残る4品目は事業優先順位の変更、臨床運営上の問題、その他の理由によると記録している1。二つのレビューがともに認めるのは、AIが前臨床の探索を速くしている点だ23。分析も前臨床で速さとコストの効果が見え始めたと書き、臨床試験でも利点が出始めたと読んでいる1。だが最終的な成功率を変えたかはまだ決まらず、AI単独発見の薬剤に正式な承認例も無い3。承認例が無いと指摘したレビューは、それを残る課題の表れとし、データの質、モデルの解釈しにくさ、計算の予測と化学的な実現可能性の隔たり、生物系の複雑さを主な限界に挙げる3。成功率を変えたかの決め手は、Phase II以降の試験の結果がさらに積み上がることだ。AIが標的を見つけ分子を設計した候補薬rentosertibのPhase IIIは2026年9月に始まったばかりで、主な結果はまだ出ていない4。
段階ごとの通過率と、最後まで残る割合は別の量である
※ この節の数値は説明のための仮定で、測定値ではありません。
新しい分子を100個ずつ二つの方法で用意し、臨床試験の二つの段階に順に通すとする。一つ目の方法で用意した分子は最初の段階を90個が通り、二つ目の方法で用意した分子は60個が通る。次の段階では、どちらの方法の分子も、入った分子の35%が通るとする。
一つ目の方法では90個の35%で約31個、二つ目の方法では60個の35%で21個が、二つの段階を通り終える。ここから次の三つが言える。
- 最初の段階の通過率は90%と60%で、一つ目の方法が大きく上回る。
- 次の段階の通過率はどちらも35%で、差は無い。
- それでも二つの段階を通り終える分子は約31個と21個で、一つ目の方法が約1.5倍多い。この差は、すべて最初の段階で生じている。
「成功率が高い」と言うとき、どの段階の通過率を指すのか、最後まで残る割合を指すのかで、比べている量が変わる。
Phase Iの数字が語ること
Jayatungaらの分析は、100社を超えるAIネイティブ創薬企業の一覧を起点にしている(原典逐語 a compendium of >100 AI-native Biotech companies)。そこから公開情報でパイプラインを集め、2015年以降に臨床入りした75品目のうち、2023年時点で試験が進行中の67品目を特定した1。著者5名は全員がボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の従業員で、研究資金もBCGのヘルスケア部門が出している1。原典は限界の一つとして、大手製薬企業の内部だけから生まれたAI発見分子をこの集計が含まないこと(Our data are therefore not fully exhaustive)を挙げている1。ただし原典は同じ一文で、AI創薬の作業の相当な割合がAIネイティブ企業で行われ、臨床段階にある同種企業の多くが大手製薬と提携していることを根拠に、この標本は業界の代表になりうると考えるとも述べている(we believe they could be representative)1。
AIが発見した標的を持つ分子については、原典は品目数を示さず「2023年のパイプラインの30%超」という比率だけを挙げている。原典は成功率の分母をこれとは別の切り口で数えている。2023年12月時点でPhase Iを完了したAI創薬分子は24品目、うち21品目が成功した。この24品目は発見様式を問わない集計である。原典のいう発見様式には、AIで既存薬の新しい使い道を見つけた分子(AI-repurposed molecules)も含まれる。後述するPhase II完了の10品目のうち4品目は、補足資料の表でこの転用に分類されている1。この24品目から出る80〜90%を、論文は「業界の歴史的平均を大きく上回る」と評価している。原典が比較対象として挙げる歴史的なPhase I成功率は40%から55〜65%の幅である(この40%は歴史的なPhase Iの下限であって、後述するPhase IIの40%とは別の数字である)1。原典は成功の判定基準を本文では定義せず、方法を補足資料に置いている(see supplementary material methods and information online)。補足資料によれば、ここでいう成功は、終わった試験が成功したかを企業の発表や試験登録などで一件ずつ判定したものである1。次のフェーズへ進んだかで判定するのはPhase I/IIのような一体型の試験だけで、Phase Iを成功とされた21品目のうち4品目は2023年12月時点で次へ進んでいない1。
Phase Iは主に安全性・忍容性を確認する段階であり、80〜90%という数字はAIが毒性や副作用の少ない分子を選ぶタスクに強いことを示唆する。原典は、Phase Iの成功率を発見様式ごとに分けても同様に高いこと(similar results across the board)を根拠に、この読みを we believe this is likely to be at least part of the explanation として支持している。同時に対抗仮説として「検証済みの生物学を狙っているだけ」「既知の分子系列で学習しているだけ」も並べ、後者については we do not have sufficient information to assess this hypothesis と保留している。ただし原典は同じ一文で、この仮説に反する傍証として自分たちの2022年の分析を添えている。AIは既知の構造の微調整だけでなく新規の化学空間の探索にも使われてきた、という分析である(earlier analysis suggests that AI algorithms have been used to explore novel chemical space)。傍証の出所が同じBCGチームである点は変わらない1。前者については、新規標的を狙った分子が少なくとも3件あっていずれもPhase Iを通過したことを根拠に、高い成功率は検証済みの生物学を狙った結果だけではない、と原典自身が結論している。ただし補足資料の表では、3件とも同じ企業の欄に並ぶ分子で、標的は2種類である1。
失敗の側についても原典は、Phase Iで失敗した3分子のうち評価基準の未達によるものは1件だけで、残る2件は事業判断と開発品目の優先順位の見直しによる中止だったと記録している。創薬の初期スクリーニングでAIが機能している、という主張の根拠は、Phase Iのこれらの数字にある。
rentosertibという具体例
数字だけでなく、実際の試験結果も出てきている。Insilico Medicineの生成AIプラットフォームが標的TNIKを同定し設計したrentosertib(INS018_055)は、特発性肺線維症(IPF)患者71人を対象に、中国21施設でランダム化二重盲検プラセボ対照Phase 2a試験を実施した5。原典は限界として、各群の症例数が小さいこと、参加者が全員中国居住で人口統計的に均質であること、追跡が12週と短いことの3点を挙げている5。
1日1回30mg、1日2回30mg、1日1回60mgの3用量とプラセボを12週間投与し、主要評価項目は「治療下で発現した有害事象を1件以上経験した患者の割合」で、全群で同程度だった(実薬 72.2〜83.3%、プラセボ 70.6%)。ここに合否のしきい値は無い。論文は No statistical comparisons of AEs between treatment groups were performed と明記している。副次評価項目の努力肺活量(FVC)では、60mg1日1回群が平均+98.4mL(95%信頼区間 10.9〜185.9)の改善を示し、プラセボ群は平均−20.3mL(同 −116.1〜75.6)の低下だった5。原典はこの60mg1日1回群を標準治療の併用有無でも分け、併用していない患者では+187.8mL(95%信頼区間 68.6〜306.9)、ニンテダニブかピルフェニドンを併用していた患者では有意な変化なしと書くが、これは18人をさらに割った層別である5。
ただし用量反応は単調ではない。30mg1日1回群は−27.0mL(同 −88.8〜34.8)でプラセボを下回り、30mg1日2回群は+19.7mL(同 −60.5〜99.9)である。各群は17〜18人である。著者らは安全性の実行可能性を見る前提でサンプルサイズを決めており、論文自身が統計的検出力に基づく症例数設計は行っていないと明記している。つまりこのFVC差は、有効性の差を検出できるかを見積もらずに決めた症例数から出た数字で、信頼区間も広い。さらに、12週のFVCを実測できたのは71人中49人にとどまる。欠測22人の内訳は30mg1日1回5人・30mg1日2回6人・60mg1日1回8人・プラセボ3人で、著者らは欠測値を「ランダムに欠測」を仮定した多重代入で補っている。+98.4mLを出した60mg1日1回群は18人中8人が12週の実測を欠くのに対し、プラセボ群の欠測は17人中3人であり、欠測率が群間で揃っていない。12週の完了前に投与を中止した患者は16人(22.5%)にのぼる。内訳はプラセボ2人・30mg1日1回2人・30mg1日2回6人・60mg1日1回6人で、12週完了率はプラセボ88%に対し60mg1日1回群は67%である5。
なお、このプラセボ群の数字は発表の段階で動いている。Insilicoが2024年11月に出したトップライン発表はプラセボ群のFVC変化を-62.3 mLと公表しており、査読論文の−20.3mLとは3倍の開きがある(60mg1日1回群の+98.4mLは両者で一致する)6。査読論文の側に62.3という数字は現れないため、この差は論文だけを読んでも見えない。食い違いはこの1数値にとどまらない。トップラインは dose-dependent improvement in lung function for all doses と全用量での改善を述べているが、査読論文の30mg1日1回群は先に見たとおりプラセボを下回っている。
「初」という語は、掛かる先を分けて読む必要がある。抄録の「初」は rentosertib に掛かっている。逐語は the first phase 2a multicenter, double-blind, randomized, placebo-controlled trial testing the safety and efficacy of rentosertib。rentosertib にとって初のPhase 2a試験という意味だ。ただし論文は本文で、これとは別に the first reported instance of AI platform-enabled discovery of both a disease-associated target and a compound for that target という分野水準の主張も置いている。こちらはPhase 2aの結果についてではなく、標的と化合物を同じプラットフォームで見つけたという発見の経路についての主張である。同じ化合物のPhase 1(NCT05154240)も無作為化・二重盲検・プラセボ対照で、健常者78名を対象にしていた7。いずれにせよ、Phase 2aの結果は仮説ではなく査読済みのデータである。もっとも、査読は利害関係を消さない。この論文はInsilico Medicineが試験スポンサーであり、著者のうち11名が同社の従業員である(原典 Competing interests: Insilico Medicine was the study sponsor)。
同じ論文が示すPhase IIの40%
ここでJayatungaの分析に戻ると、話は単純ではない。Phase IIを完了したAI創薬分子は10品目、うち成功は4品目で、成功率は40%に下がる1。論文はこの40%について albeit on a limited sample size と明記している。ここで少ないのは患者数ではなくPhase IIを完了した分子の数で、Phase Iの数字ほど確度は高くない。歴史的なPhase II成功率(30〜40%)と比べれば、Phase Iで見えた際立った優位性は消える。もっとも原典は、Phase I・IIのAI分子について oncology particularly prominent, accounting for 50% of AI-discovered molecules in Phase I and Phase II とも書いており、この比較は領域構成を揃えたものではない。数字はいずれも2023年12月時点の集計で、原典は As more data become available in the coming years, these numbers are likely to change substantially と断っている。
ただし原典は、この40%の内訳にも踏み込んでいる。逐語は of the six candidates that were stopped or discontinued after Phase II only two were the result of negative outcome data。Phase II後に中止された6品目のうち、有効性の否定的データで落ちたのは2品目だけである。残る4品目は、事業優先順位の変更・臨床オペレーション上の問題・その他の理由による。論文はさらに、バイオテク企業の資金環境や米国のインフレ抑制法といった要因が、開発品目の優先順位の見直しを促した可能性を挙げ、それらの判断は unrelated to the underlying AI techniques でありうると注記している。Phase IIについては the proof of a biological or mechanistic concept を伴う段階と位置づけたうえで、40%という数字からは「AIのアルゴリズムは疾患に関連する標的や経路を同定できるが、改善の余地がある」と読むにとどめている。もっとも同じ段落には Also, 'the hard problem of drug discovery', namely achieving clinical efficacy, remains challenging という一文もある。有効性の達成そのものは依然として難しい、ということである。原典はそれを認めたうえで However と接いで先の内訳(6品目中2品目)に入っている。40%を有効性の否定と読み切ることも、有効性の問題ではないと読み切ることも、原典はしていない。
Jayatungaらはさらに、AIのPhase I・IIの実測成功率と歴史的なPhase III成功率を組み合わせ、分子が全臨床フェーズを通過する総合確率を試算している。ただしこれは原典が let us conduct a thought experiment と呼ぶ思考実験である。原典は If we take, at face value, the success rates we observed … and assume that these hold in the future と条件を置く。実測値を額面どおりに受け取り、それが将来も維持されると仮定する、という二重の条件である。その条件下での結果が、歴史的な5〜10%からAI創薬の9〜18%への上昇である。論文はこれを医薬品R&D生産性の「ほぼ倍増」にあたると表現する(原文は仮定法の would represent)。Phase I・IIの実測値に歴史的なPhase III成功率を掛け合わせた試算であり、AIがPhase IIIでも優位を保てるかは未検証のまま残る1。Phase Iの数字だけを見て成功率が上がったと結論づけると、同じ論文の後半部分を見落とすことになる。
二つのレビューが置く留保
2025年から2026年にかけて発表された二つの査読レビューは、いずれも新しい実験データではなく、既存の臨床記録を読み直した論評である。両者は異なる角度から同じ結論に収束する。Niazi(2025)はまず、AI創薬分子の progression rates through clinical development remain like those of traditionally discovered compounds という先行分析を引く。臨床開発の進行率は従来型の分子と同程度のままだ、ということである。ただし前節で見たとおり、同じBCGチームの2024年の分析ではPhase Iの成功率は歴史的平均を大きく上回っており(substantially higher than historical industry averages)、従来型と同程度に見えるのはPhase IIの数字である1。この観察はNiazi自身のデータではなく、参考文献105すなわち前節で見たJayatungaら(2024)と筆頭・最終著者を共有する同じBCGチームの2022年 Nature Reviews Drug Discovery 論文への帰属である。そのうえで、AIの主な効果は臨床での成功確率そのものを変えることではなく、前臨床段階の探索を加速することにあるかもしれないと述べる(原典逐語 AI's primary benefit may lie in accelerating the preclinical discovery phase)2。「臨床開発を完了したAI設計化合物の数はまだ少なく、従来手法と比べた全体的な成功率について確定的な結論を出すのは時期尚早」だと明言し、具体例としてDSP-1181を挙げる。DSP-1181はExscientia(2024年11月にRecursion Pharmaceuticalsの完全子会社となった8)と大日本住友製薬(現・住友ファーマ)が共同創出した化合物である。両社は2020年1月、日本で強迫性障害を初期適応とするPhase I試験を開始したと発表した9。Niaziのレビューは、DSP-1181がPhase Iで良好な安全性プロファイルを示しながらPhase IIに進むことなく開発中止に至った、と記述する2。ただしNiaziはこの直後に、中止理由の一般的な型として efficacy endpoints, competitive landscape, and strategic business decisions を挙げている。そして、これらの理由を rather than issues with the AI-designed molecule itself と書き、AI設計分子そのものの問題ではないと明記する。もっとも、DSP-1181個別の中止理由は、開発元の住友ファーマが2023年5月の決算説明会で答えている。標的の作用機序に基づくPhase 1の基準を達成しなかった、という説明である10。Jayatungaらの補足資料の表も、Phase Iで失敗した3分子のうちDSP-1181だけを中止(Terminated)ではなく不成功(Unsuccessful)と記録し、その出典にこの説明会を挙げている1。開発データベースの登録は、開発状況を Discontinued(Phase 1)とするだけで、理由の欄は非公開である11。AI設計化合物として最初期に臨床入りした一つ(Niaziの語では one of the first)が、Phase 1の基準で脱落したことになる210。
Shree HariniとEzhilarasan(2026)はさらに踏み込み、「AI単独で発見された薬剤で正式な規制当局の承認に至った例は、現時点で一つもない」と明記する3。医薬品R&Dの生産性が投資増加にもかかわらず低下し続けるという「Eroom’s Law」(Moore’s Lawの逆)を枠組みに、AIはまだこの傾向を反転させていないと結論づける。データの質とアクセス性の低さ、モデルの解釈可能性の欠如、計算予測と実際の化学的実現可能性のギャップ、そして生物系そのものの複雑さといった課題が、承認までの壁として残っていると指摘する3。なお、この否定は「AI単独」に限っている。Jayatungaらの集計が既存薬の転用としてAI発見分子に数えるBioXcelのdexmedetomidine舌下フィルム(BXCL-501)は、2022年4月に米国で新しい剤形として承認されている112。
何が確立していて、何がまだなのか
主要な四つの論文・レビューを並べると、争いのない部分と争いのある部分が分かれる。争いのないのは、AIが前臨床の探索を加速しているという点である。Niaziは加速を AI の主な効果かもしれないと位置づける(AI's primary benefit may lie in accelerating the preclinical discovery phase)。結論では、前臨床の一部の用途で期間が短くなるという控えめな見積もりを挙げる一方で、臨床開発の期間は実質的に変わらないとも書く(clinical development timelines remain essentially unchanged)2。一方Shree Harini・Ezhilarasanは AI has significantly accelerated early drug discovery stages と明記する3。承認ゼロを指摘する側の論文が、加速については significantly という語を使っている。Phase Iの成功率が歴史的平均を上回るという報告1も、AIが臨床の手前で効いているという見方と整合し、後者のレビューも臨床入りしたAI関連分子について encouraging early-phase success rates と書く3。ただし母数が少ないため、分子選択そのものが改善したと結論づけるには足りない。rentosertibは、AIが設計した分子が査読付きのPhase 2aまで到達した実例だが5、この試験だけで有効性が確立したとはいえない。
争いがあるのは、この優位性がPhase II以降にも及ぶかどうかである。Jayatunga自身の数字はPhase IIで歴史的平均へ戻ることを示すが、同じ原典は中止6品目のうち有効性で落ちたのは2品目だけだとも書いている1。Shree Harini・Ezhilarasanは承認ゼロという事実を根拠に慎重な立場を取り3、Niaziは自らのレビューを a balanced perspective と位置づけ、rentosertibのPhase 2aを成果に数えたうえで、AIは「補完的なツール」にとどまると結論する2。
Insilicoは2026年7月、rentosertibのPhase III(予定登録320人・中国47施設)を開始したと発表したが、これは同社の発表であって第三者による検証ではなく、結果もまだ出ていない13。ClinicalTrials.govの登録(NCT07687459)では開始日は2026年9月9日、状態は募集中で、320人という登録数は見込み値のままである4。なお参加者はPhase 2aと同じく中国の施設から集められる予定で、論文が限界に挙げた参加者の地理的・人口統計的な均質性(all were residents of China of similar race)はこの試験にも持ち越される513。AIは前臨床の探索を速くしている。だが、それが最終的な成功率を変えているかどうかは、まだ実証されていない。
出典13件
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Jayatunga ほか「How successful are AI-discovered drugs in clinical trials?」Drug Discovery Today, 2024. https://doi.org/10.1016/j.drudis.2024.104009 — BCG所属5名の集計と補足資料。被引用154件はOpenAlex(2026年9月18日)。 https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S135964462400134X-mmc1.pdf https://api.openalex.org/works/doi:10.1016/j.drudis.2024.104009 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20 ↩21
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[mixed] Sarfaraz K. Niazi「Artificial Intelligence in Small-Molecule Drug Discovery: A Critical Review…」Pharmaceuticals, 2025. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12472608/ — AIの主な効果は前臨床の加速にあるかもしれないとする総説。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
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[mixed] Shree Harini, Ezhilarasan「Has AI Reshaped Drug Discovery, or Is There Still a Long Way to Go?」Drug Development Research, 2026. https://doi.org/10.1002/ddr.70257 — AI単独で生まれた薬に正式承認の例はまだ無いとする。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
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ClinicalTrials.gov NCT07687459. https://clinicaltrials.gov/study/NCT07687459 — rentosertibのPhase III。開始日2026年9月9日、募集中、登録数320は見込み値。 ↩ ↩2
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「A generative AI-discovered TNIK inhibitor for idiopathic pulmonary fibrosis…」Nature Medicine, 2025. https://doi.org/10.1038/s41591-025-03743-2 — IPF患者71人・12週のPhase 2a。60mg1日1回群のFVCは+98.4mL。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
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Insilico Medicine「Insilico Medicine Announces Positive Topline Results of ISM001-055…」2024. https://www.prnewswire.com/news-releases/insilico-medicine-announces-positive-topline-results-of-ism001-055-for-the-treatment-of-idiopathic-pulmonary-fibrosis-ipf-developed-using-generative-ai-302302583.html — プラセボ群のFVC変化を−62.3mLとした企業発表。 ↩
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ClinicalTrials.gov NCT05154240. https://clinicaltrials.gov/study/NCT05154240 — rentosertibのPhase 1。健常者78名・無作為化・二重盲検・プラセボ対照と登録されている。 ↩
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Recursion Pharmaceuticals, Form 8-K, 2024. https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183024000217/rxrx-20241119.htm — Exscientiaが2024年11月20日に完全子会社になったことの届出。 ↩
-
大日本住友製薬・Exscientia「…New Drug Candidate Created Using Artificial Intelligence (AI) Begins Clinical Study」2020. https://www.sumitomo-pharma.com/news/assets/pdf/ene20200130.pdf — DSP-1181の共同創出と、日本でのPhase I開始の発表。 ↩
-
住友ファーマ「Institutional investors, analysts, and the press Meeting of Financial Results for FY2022」2023. https://web.archive.org/web/20240510024334/https://www.sumitomo-pharma.com/ir/assets/pdf/etranscript20230515.pdf — 質疑でDSP-1181がPhase 1の基準を達成しなかったと答えている(20頁)。 ↩ ↩2
-
Synapse (PatSnap)「DSP-1181」. https://synapse.patsnap.com/drug/a785db59b5d54d209ddfe8619dfcc2b0 — 開発状況は中止(Phase 1)。公開部分に中止理由の記載は無い。 ↩
-
U.S. FDA「Drugs@FDA: NDA 215390(IGALMI)」. https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/daf/index.cfm?event=overview.process&ApplNo=215390 — BioXcelのdexmedetomidine舌下フィルムを2022年4月5日に新剤形として承認した記録。BXCL501の名は試験登録 https://clinicaltrials.gov/study/NCT04268303 ↩
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Insilico Medicine「Insilico Initiates Phase III Clinical Trial for Rentosertib…」2026. https://www.prnewswire.com/news-releases/insilico-initiates-phase-iii-clinical-trial-for-rentosertib-its-ai-empowered-tnik-inhibitor-for-idiopathic-pulmonary-fibrosis-302819553.html — 予定320人・中国47施設。主要評価項目は52週のFVC低下率。 ↩ ↩2
この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。